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#すっぱいチェリー🍒「初恋のマキちゃん」

「ここはさすがにダメやで!」

保育園で盛男に伝えたのは、同じ年長組の
マキちゃんだった。マキちゃんは幼いなが
らも、少し清楚な感じが漂う笑顔が可愛い
女の子だった。盛男はまきちゃんに対して、
ほのかに恋心を抱いていた。

幼い盛男のマキちゃんへの恋心の表現方法
は、マキちゃんのそばにできるだけいるこ
とだった。決まったルールで座る時以外は、
必ずまきちゃんの隣に座っていた。休み時
間も無意識でマキちゃんのそばで遊ぶこと
を続けていた。

保育園の運動会。盛男は年長組の中ではま
だ足が速かったので、リレーのアンカーに
選ばれるなど目立つ存在になっていた。
マキちゃんもそんな盛男に「リレーのアン
カーがんばってね」と優しく声をかけてく
れた。盛男はたまらなく嬉しくなった。

運動会の最後に保護者の方達がカメラを
持って写真を撮って回る時間があった。
思い思いに写真が撮られている中、マキ
ちゃんのお母さんがマキちゃんとその周
りにいるお友達に声をかけ、写真を撮ろ
うとしていた。それに気づいた盛男はす
かさず、マキちゃんの隣に並ぶために、
マキちゃんの横へと駆け寄った。しかし
タイミングが遅く、他の男の子に横のポ
ジションを取られてしまった。どうして
いいのかわからなくなり、固まってしま
った盛男は、能面のような表情で写真に
写ることとなった。

写真を撮った後、悲しくなった盛男は
トイレで1人、シクシクと泣いていた。

次の日、マキちゃんの姿を見ると、昨日
の写真の時に横に居られなかったことを
思い出し、とても悲しい気持ちになった。
その日はできるだけ、盛男はマキちゃん
の隣にいようと強く思った。おもちゃの
片付けの時も、外での遊具で遊ぶ時間も、
昼休みの休憩時間もずっと隣にいた。

マキちゃんが休憩時間の終わり頃に、1人
で廊下へ出て行った時も、そっと後ろを
ついていった。マキちゃんの後ろ姿を眺
めながら一定の距離を保って一緒に歩い
た。マキちゃんもそれに気づいて、振り
向いたりしながらニコッと笑顔をくれた。
たまらなく嬉しくなった。そしてマキち
ゃんが廊下を曲がる時、すっと立ち止ま
って盛男に言った。

「盛男くん、女の子のトイレに入ったら
ダメやで。ついてこられると困るし‥」

盛男はトイレ内に入っていくマキちゃん
を見送りながら、赤面した顔をうつむき
加減で隠しながら、教室へと急いでもど
っていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大人になった盛男が持つ小さい頃のアル
バムの中には、必ずマキちゃんの横で映
る保育園時代の盛男の写真がたくさんあ
る。部屋に遊びに来た友達にアルバムを
見せる機会があると、必ず見た人が、

「なんちゅう顔しとんねんっ!」
と見た人が必ずツッコミを入れる箇所がある。

その度に盛男はチクチクと思い出すのだ。
自分が能面のような顔になった時の、
あの切ない気持ちを。

その頃のエピソードを話すと更に友達は言う。
「お前、今で言うストーカーやんっ!」

昭和の時代で良かったと、
笑って誤魔化す盛男であった。


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