極悪人
私が働く職場の近くに、市立の保育園がある。
いつも子供達の元気な声が聞こえてきて、
自然に笑顔になってしまう。
行事の練習の時などは、
特に大きい声が聞こえてきて、
「 頑張れ〜 」と応援したくなる。
時々、
園児が大声で泣いていることもある。
その声が聞こえてくるたびに、
「 ん、どうしたんやろ〜 」
とか、少し気になってしまうが、
ふと、
その大きな泣き声で、
私自身が、
勝手に思い出してしまうことがある。
昔、子供達が小さい頃、
法事の後に、
親戚一同でファミリーレストランに行ったことがある。
その時の出来事である。
大人と子供を合わせて14、5人いたと思う。
その中に子供は5人いて、
みんなまだ小さくて可愛かった。
一生懸命に大きなメニューを覗き込んで、
何を食べようか考えている。
時々、周りの人を見渡したりして、
自分で決めきれない様子でいるのを見ていると、
「 かわいいな〜 」
なんて思いながら、
子供達の注文が決まるのを待っていた。
結局、
子供達全員がお子様プレートにすることが決まったようで、
私が子供達に問いかけた。
「 みんな、決まったか〜? 」
子供達は全員が答える。
「 う〜〜ん!!」。
なんてかわいらしい。
私が続けて言う。
「 よっしゃ〜、ほんなら頼むで〜 」
と言って、
店員の呼び出しベルを押した。
すると次の瞬間。
「 わ〜〜〜〜〜ん 」
「 え〜〜〜〜〜ん 」
「 うぎゃ〜〜〜〜 」
『 おえっ〜〜 」
「 な〜〜〜んで〜〜〜も〜〜」
と、
子供達全員が突然、
大声で泣き出した。
私が驚いて言う。
「 えっ、えっ、どうしたん??」
子供の親が気づいて言う。
「 ベル、押したかったんやんな〜 」
「 ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン Σ(゚д゚lll) 」
そこから、
子供達は目を合わせてくれない。
「 ごめんな、ごめんな 」
私は気を回したつもりだったが、
どうやら子供達にとって最悪のことをしてしまったようだ。
泣き続ける子供達。
周りのお客さん達も、
チラッ、チラッと、
私達のテーブルを見る。
親戚内の大人達も、
私に向かって笑いながら言う。
「 このおじちゃん、極悪人やな〜〜 」。
「 押したかったのに〜〜 (笑) 」
「 おっちゃんきら〜〜い (笑) 」
そこから20分くらいは、
おしぼりを渡したり、
ドリンクバーのジュースを追加したりして、
汚名返上を試みたが、
結局、
注文したお子様プレートが、
テーブルの上に運ばれてきて、
子供達を泣き止ませてくれた。
保育園から聴こえてくる子供達の声には癒される。
それと同時に、
親戚の子供達5人を一気に泣かせてしまった、
あの悪夢の日のことを思い出す。
極悪人になった、あの日のことを。
「 良かれと思ってしたことが、
相手にとって良くないこと
もあるのだ 」
自分に問いかけて、
今日も仕事に向かっていく。