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まるい友だち
はくちょう丸を見た。
むかし動いた、大きな大きな湖に浮かぶ、大きな大きな乗り物。
はくちょう丸は人気なので、ちいさいわたしはかめ丸に乗った。
そこには"家族"の思い出があって、やんわりだけど辿る記憶もあって、しあわせだった。
観光客が減り、動かされることがなくなって、去年、ついに取り壊されることがきまったはくちょう丸。と、かめ丸。
なんでかなしいんだろう。
錆びたり汚れたりしているけど、大きな大きなわたしの舟だった。
約10年ぶりに大きい湖を訪れて見たはくちょう丸は、さみしかった。頭の上の冠が、余計にかなしかった。
そしてそこには、白鳥がいた。
2羽だけ。
1羽はつばさを怪我していて、もう飛べないようだった。もう1羽は湖に浮かびながら、砂の上の怪我した白鳥を見ていた。
飛べなくなった白鳥は、人が来てもゆっくり歩いて逃げるだけ。
小さな白鳥のあたま、湖から陸に向ける小さな眼は、運命を見ているみたいに見えて、わたしはさみしかった。
これからどうするのかなぁふたりは。
もう動かないはくちょう丸に
その前を泳ぐ白鳥に
はくちょう丸を見つめるかめ丸に
飛べなくなった白鳥に
どうか一緒にいて
ひとりになりませんように。
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