アンダーソンの入口「ワインズバーグ・オハイオ」
シャーウッド・アンダーソンは、世代的にはトウエインとヘミングウェイの間に位置する小説家です。
彼の代表作である短編集「ワインズバーグ・オハイオ」(1919年)は、地味ではありますが、独特な味わいを持った作品です。
舞台は中西部オハイオ州にある架空の田舎町です。時代は十九世紀の終わりから二十世紀初頭にかけての近代工業の黎明期、鉄道は通っているものの、田舎なのでまだ自動車が普及しておらず、馬車が使われています。
主人公はウィラード、町の新聞の駆け出し記者です。
作品は、町の住人をそれぞれ扱った22の「掌編」で構成されています。
作品の冒頭に、プロローグ的な「グロテスクな物についての書」があります。ここで本作品を貫く著者の考えが述べられています。
この小説には、奇妙な人ばかり紹介されるものの、殺人鬼が登場するわけではありません。
例えば「手」の元教師は、ある誤解から生徒の親たちに変質者扱いされ、つるし上げられてしまいます。それがトラウマとなって、自分の手と指が始終せわしなく動く癖を止めることができなくなってしまいます。
「着想家」の青年は、普段は物静かなのですが、急に突飛なことを思いつくと、誰彼構わず捕まえてその妄想を狂ったように語ります。「目に見えないだけで、この世にある全ての物は実は燃えているのだ」等々。
どの人物も奇妙な偏りを持っており、その不可解な挙動によって変人扱いされています。
しかし、程度の差こそあれ、誰しもが何らかの歪みを抱えて生きているのだということが、この小説ではユニークな視点から描かれています。
アンダーソン、シャーウッド(1876-1941)~アメリカ・作家~
次世代のヘミングウェイらに大きな影響を与え、「我々の世代のあらゆる作家の父親」(フォークナー)と称された。代表作は、架空の小さな田舎町を舞台にした短編集「ワインズバーグ・オハイオ」。
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