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読書に2つのアラベスクを

最近、読書ブームが来ている。私自身の話だ。

ひとつのことに夢中になると他のことが疎かになる不器用人間なので、読書ブームがきてからというものnoteの更新は更にパタリと止まり、noteを読む量も減って大好きなテレビもゴールデンタイムだというのにテレビに目を向けることもなく本を読む事がある。

この読書ブームは稀に訪れる。

私の場合、常に読書はしているつもりだが何せ読むスピードが亀よりノロマなので1ヶ月かけて1冊を読むのが常だった。恥ずかしい話である。それが最近は1週間に1冊のペースになった。それでも遅いのだが私にとってはブームなのだ。

ブームが来る時というのは立て続けに面白い作品を読んだ時に起こる。辻村深月さんや、原田マハさんといった好きな作家さんの本を読み、面白くて先が気になったりさて次は何を読もうと新たな面白い作品の出会いに飢えている時だ。

今まで私の読書時間は、夜ベッドに入って寝落ちするまでの数分だったのが、会社の昼休み、通勤電車、家に帰ってからの自由時間、そして夜寝る前と格段に増えた。

けれど、あまり性に合わない作品を読むとこのブームもパタっと止まる時がある。実際、途中で読むのをやめた本はいくつかあるし、たぶん残念だけどもうその本を開く事はないのかもしれないとも思う。

そして、最近は読書のお供ができた。

音楽だ。

やはり無音の方が集中できるので静かな部屋で読むのが1番である。けれど、家の中で読む際はテレビを消して静かな状態にしたつもりでもリビングで本を読んでいると、家の外の物音だったり話し声が意外にも聞こえてくる。読書に支障はないくらいの音なのだが、我が家には外から聞こえる謎の音に敏感な子たちが2人いて盛大に吠える。そうなればもはや読書どころではない。

そこで私は謎の音をかき消す為に音楽をかけることにした。

「アレクサ、クラシックかけて」

クラシックにはあまり詳しくはないが、読書にはクラシックがお似合いなんじゃないかと淡々と喋る機械に話しかけた。

アレクサが流したのは千と千尋の神隠しの「いのちの名前」という曲のピアノバージョンだった。
これはクラシックになるのかと思いながらも、まぁ好きな曲だからいいかと読書を進める。しかし歌詞が頭に出てきて本の文字と頭に出てくる歌詞がぶつかり合って驚くほどに集中ができない。

「アレクサ、止めて」

私は音楽を止めて考えた。読書に合ったクラシック音楽は無いものか。


小学生の頃読書の時間というものがあった。朝学校に登校してから朝の会が始まるまでの10分か15分かの時間。皆が自席に座って家から持ってきた本を黙って読む。もちろん漫画は許されず活字の本を読む。全校生徒がだ。

その時間が始まる時に「読書の時間です、本を読みましょう」といった内容の放送がされる。そしてしばらくして音楽が流れていのだ。

そういえばあの音楽はなんだったのだろうかと、ふと気になってインターネットで調べてみた。曲のタイトルもわからないし、メロディーをありありと思い出すことも出来ず仕方なく様々なクラッシック音楽を聴いてみることにした。

聴けばきっとこの曲だとピンとくるはずだと思いながら聴くも、どこでも耳にするような有名なクラシック音楽ばかりが流れて、なかなか求めている曲に辿り着かない。もしかして私の記憶が朧げなだけで今聴いた中にあったのだろうかと少々不安にまでなってきた。

それでも根気良く聴き続けたところ奇跡的に遂に辿り着いた。その音楽を聴いた時「これだ!これだ!」と1人叫んだ。

ドビュッシーの「2つのアラベスク」という曲だった。(YouTubeか何かを貼ろうと思ったが権利とかよくわからないのでやめておく)

この曲を聴いていると不思議と当時読んでいた宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が思い出された。理解力乏しい小学生の私にはちゃんと理解するのも難しかった銀河鉄道の夜。そんな事まで思い出した。音の記憶というのはなかなか深い。

私にとってこの「2つのアラベスク」という曲は、幼い頃に読書用の音楽として刷り込まれているようだ。今では家のリビングでテレビを消して読書をする時はこの「2つのアラベスク」という曲を流している。この曲で幼い時をほんのり思い出しながら、読書をするのはまたなんとも不思議な気持ちだ。


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