2円の交点を通る直線や円の方程式──束の考え方をわかりやすく解説します【高校数学 図形と方程式】
こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として活動している者です。
今回の記事では高校数学の図形と方程式における「束の考え方(束の原理)」を学んでいきます。
「束の考え方」という言葉にはあまり馴染みがないかもしれませんが、次のような問題はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
$${(1)}$$と$${(2)}$$とを連立して点Aと点Bの座標を求め、そこから直線ABの方程式を導く──もちろん正しい解法ですが、計算量が多くなってしまう(特に点Aと点Bの座標を求めるのが面倒)がネックです。
本問では点Aと点Bの座標を求める必要がないのがポイントで、直線ABの方程式を出すだけなら「束の考え方」を用いて簡単に済ませることができます。
しかし、解説があまり詳しくない問題集だと、「$${(1)-(2)}$$をして・・・」や「$${(1)+(2)×k}$$で$${k=-1}$$として・・・」などで済ませていると思います。私は自分が高校生だった当時、「その$${k}$$は一体何?!そしてなぜ$${k=-1}$$?!」ととても疑問に思っていました。
本記事は当時の私と同じような疑問をお持ちの方、そして上の問題やその類題をしっかりと解けるようになりたい方に向けて綴ります。わかりやすく詳しくお伝えしていきますので、本記事をお読みいただければこの類の問題で困ることはもうなくなるはずです。
それでは参りましょう。
■簡単な例で考えてみる
突然ですが、次の2直線の交点の座標を求めろと言われたらあなたはどうしますか?
$${(1)-(2)×2}$$($${x}$$を消去)
あるいは$${(1)×3+(2)}$$($${y}$$を消去)という操作をして求めていくかなと思います。連立方程式を解いていく要領で、交点の座標が$${(1,1)}$$と出てきます(これを交点Zとしておきます)
ここで、私のちょっとした気まぐれにお付き合いください。
先ほど交点を求めるために$${(1)}$$と$${(2)}$$を使って操作をしましたが、それと似たようなことをもう3回してみます。
$${(1)}$$と$${(2)}$$を使って新しい3つの式が生まれました。いずれも直線の方程式であることがわかります。図示してみましょう。
$${(1)}$$と$${(2)}$$から新しく生まれた3つの直線が、いずれも交点Z($${(1)}$$と$${(2)}$$の交点)を通っていることがわかります。
これは偶然なのか必然なのか、少し一般化しておきましょう。
$${(1)}$$の左辺$${2x-y-1}$$を$${f(x,y)}$$、$${(2)}$$の左辺$${x+3y-4}$$を$${g(x,y)}$$とすると、$${(1)}$$も$${(2)}$$も交点Z$${(1,1)}$$を通りますから
を満たします。ここで、$${(1)}$$と$${(2)}$$を好き勝手に足し合わせる、つまり$${(1)×s+(2)×t}$$($${s}$$と$${t}$$は実数)とすると、
$${f(1,1)=0}$$、$${g(1,1)=0}$$ですから、
(6)に$${(x,y)=(1,1)}$$を代入しても式は成立します。すなわち、(6)は$${(1,1)}$$を通る"何か"であることがわかります。
この"何か"についてですが、(6)に$${f(x,y)=2x-y-1}$$、$${g(x,y)=x+3y-4}$$を戻してみると
$${(s,t)=(0,0)}$$以外では$${x}$$と$${y}$$の「両方が1次」あるいは「片方が消え残りが1次」になるので(6)は"直線"を表していることがわかります。
■束の考え方まとめ
ここまでの話をまとめておきます。
なお、$${(s,t)=(0,0)}$$とすると$${(3)}$$が$${0=0}$$という何も意味を持たない式になりますので、$${s}$$と$${t}$$は少なくとも一方は$${0}$$でない実数とします。片方が$${0}$$の場合、$${(3)}$$は$${(1)}$$か$${(2)}$$そのものを示します。
また、当たり前のことではありますが、この考え方は$${(1)}$$と$${(2)}$$が交点を持つことが前提です。
■(1)+(2)×kの正体
大学受験用の多くの参考書では
$${(1)×s+(2)×t}$$ではなく
$${(1)+(2)×k}$$としている印象ですが、言っていることは実はほぼ同じです。混乱しないように整理しておきます。
$${s≠0}$$として
$${sf(x,y)+tg(x,y)=0・・・(3)}$$
の両辺を$${s}$$で割ると、
$${f(x,y)+\frac{t}{s}g(x,y)=0}$$
となりますが、これはつまり$${(1)+(2)×\frac{t}{s}}$$で得られる式ということです。よって、$${\frac{t}{s}=k}$$と一文字で置き直すと次のようになります。
厳密には、$${(3)}$$においては$${s=0}$$とすることで表せる$${(2)}$$そのものを$${(4)}$$は表すことができない($${(4)}$$は$${s≠0}$$を前提としているので)ですが、実践上はこれでほぼ問題ありません。
■練習問題1
さて、それではいよいよ冒頭の問題に取り組んでいきましょう。
$${(1)}$$と$${(2)}$$の"交点を通る"直線の話をしているので束の原理を使います。
$${(1)+(2)×k}$$で得られる
$${(x^2+y^2-1)+k\{(x-1)^2+(y-1)^2-1\}=0・・・(3)}$$
は$${(1)}$$と$${(2)}$$の交点を通る"何か"である。
$${(3)}$$を整理すると
$${(1+k)x^2+(1+k)y^2-2kx-2ky+k-1=0・・・(4)}$$
$${(4)}$$はもちろんこのままでは答えとすることができません。$${k}$$の値を特定する必要があります。
ポイントは、本問で求めるのは"直線"であるということです。$${(4)}$$において、例えば$${k=2}$$とすると
$${3x^2+3y^2-6x-6y+1=0}$$
となりますが、これは円を表していて直線ではありません。
このように適当に実験していくと、$${(4)}$$が直線を示すためには$${k}$$の値が$${x}$$と$${y}$$の2次の項を消すようなものであるべきということにたどり着きます。すなわち$${(4)}$$で$${k=-1}$$として
$${2x+2y-2=0}$$
両辺を2で割って
$${x+y-1=0}$$・・・(答)
これが解答となります。
■練習問題2
それでは最後にもう一題。ここまでお読みいただいたあなたならもう解けるはずです、実際に手を動かして解いてみてください。
問題1と同様に$${(1)}$$と$${(2)}$$の"交点を通る"円の話をしているので束の原理を使います。
$${(1)+(2)×k}$$で得られる
$${(x^2+y^2-1)+k\{(x-1)^2+(y-1)^2-1\}=0・・・(3)}$$
は$${(1)}$$と$${(2)}$$の交点を通る"何か"である。
ここから$${k}$$の値を特定していきます。しかし、"直線"であれば$${k=-1}$$しか考えられずすぐに特定できますが、"円"となると候補は無限大です。さてどうするか。問題文を読み直してみると、まだ使っていない条件があることに気がつきます。
$${(3)}$$が点E$${(3,4)}$$を通ると言っているので$${(3)}$$に$${(x,y)=(3,4)}$$を代入します。
$${(3^2+4^2-1)+k\{(3-1)^2+(4-1)^2-1\}=0}$$
$${24+12k=0}$$
$${k=-2}$$
$${k}$$の値が出ました。よって、求める円の方程式は$${(3)}$$に$${k=-2}$$を代入して
$${(x^2+y^2-1)-2\{(x-1)^2+(y-1)^2-1\}=0}$$
$${x^2-4x+y^2-4y+3=0}$$・・・(答)
■まとめ
束の考え方についてまとめてきましたがいかがでしたでしょうか。
問題集の解説でいきなり「$${(1)+(2)×k}$$として・・・」と言い出されると何のことやらという感じだと思いますが、上でお伝えした通り具体的に実験してみるとそのイメージが湧いてくるのではないでしょうか。
「交点を通る◯◯の方程式を求めよ」という問題でぜひ活用してみてください。
束の考え方に限らず数学や物理などで何か気になる疑問がある方、下の記事から体験授業(オンラインであれば無料)も受け付けておりますのでぜひご連絡ください。ご相談だけでも大歓迎です。
あなたの日々の学習がより良いものになることを心から祈っております。それでは!
Ura