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高校数学IA 仮説検定 会話形式でわかりやすく

こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。

本記事では、高校数学IA データの分析における"仮説検定"について解説していきます。

仮説検定は、2025年度入試から登場するいわゆる"新課程"の内容です。解説がまだ十分に世の中に出回っていないこと、対立仮説・帰無仮説・有意水準というお堅いワードの登場、それらの影響で「よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

ポイントは、まずは何となく全体の流れを理解すること、最初から用語すべてを完璧に理解しようとは考えないことです。

全体の流れが把握できると、部分的な話、例えば「有意水準をなぜ設定する必要があるのか」などがくっきりと見えてきます。

そのため、本記事ではその"全体の流れ"が理解しやすくなるよう、会話形式で綴っていきます。講師の私が、宿題の量を賭けて、生徒のあなたとコイントスのゲームをするところから話を始めます。

初学の方、あるいは一度勉強したけど何だかよくわからないという方、ぜひお読みください。



■「こんなこと起こるのはおかしくない?!」と疑わしく思ったらそれが仮説検定の始まり

Ura「では、この辺で授業を終わりにしましょう。今日は"反復試行の確率"、"期待値"、"背理法"について学びましたね。よく頑張りました、お疲れ様」

あなた「ありがとうございました!」

Ura「さて、じゃあ宿題を決めようか。いつもは僕が考えた量をやってもらっているけど、今日は少し別のやり方で決めようと思う」

あなた「別のやり方?」

Ura「このコインを君が10回投げて、2回以上表が出たら今日の宿題はいつもの半分にしよう。その代わり、表が1回以下なら今日の宿題はいつもの倍。コインを投げるも投げないも自由だけど、どうする、やる?」

あなた「(・・・買ったばかりのゲームをしたくてたまらないから、宿題が半分になるのは魅力的。倍になると最悪だけど、今日学んだ「期待値」を考えると、10回コインを投げたとき、表の出る回数の期待値は5回。2回以上なんて余裕で出そう!)」

あなた「やる!」

期待値もこれまた新課程の内容ですね

賭けに勝てると踏んでコイントスに挑んだ結果、表が出たのは1回。つまり、裏が9回出ました。


■対立仮説と帰無仮説

この結果にあなたは納得がいきません。

あなた「Ura先生、裏が出やすくなるようにコインに細工しましたよね?」

Ura「いやいや、細工なんて何もしていないよ。このコインは、表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$だ

さあ、あなたとUraとで意見が真っ向から対立しました。

あなたが正しいと主張したいことを"対立仮説"といいます
上の会話の場合、「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」というのが対立仮説です。

それに対してUraの反論を、つまりあなたにしてみると「無に帰してやりたい」主張を"帰無仮説"といいます
上の会話の場合、「コインに細工はなく、表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」というのが帰無仮説です。

正しいと主張したいことが"対立"仮説なのが最高にややこしいですが、これは帰無仮説に対して"対立"していると考えてください


■帰無仮説を論破せよ!

あなたは「裏が出やすくなるようにコインに細工がしてあった」ことを証明したいですが、コインの隅々までじっくり調べても細工の様子が見当たりません。さてどうしましょう。

そこで、今日習った「背理法」のような議論の仕方を考えます。

あなたの通したい「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」という主張の正しさを直接的に示すのが難しいから、Uraの反論である「コインに細工はなく、表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」が正しいと仮定して話を進め、矛盾を突きつけてやりましょう!

実際に出た裏の数は10回中9回。「コインに細工はなく、表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」のもとでこれが起こる確率は約0.977%。

仮説検定では、"反復試行の確率"を求めていく場合が多いです。
不安な方はお手持ちの問題集などで確認しておきましょう。

ここであなたは少し考えます。

私の主張(対立仮説)は「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」というもので、その根拠は「裏が10回中9回も出るのはおかしい」というもの。

私は「裏が10回中9回も出るのはおかしい」と思っているのだから、「(それ以上に起こりにくい)裏が10回中10回出るのもおかしい」と思っているはず。

であるならば、私の根拠を正確に言うと「裏が10回中9回"以上"出るのはおかしい」だ!

改めて、「コインに細工はなく、表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」のもとで、コイントスを10回行って裏が9回"以上"出る確率を求めると約1.07%。

帰無仮説について、確率を用いて議論していくとき、実際に起こったこと単体(裏が10回中9回出る)ではなく、範囲で考える(裏が10回中9回以上出る)ことになります。

正直、ここが数学IAの仮説検定を勉強する上で最大の難所だと思っています。

しかし、範囲で考える理由をしっかり理解するには数学IIBの「統計的な推測」を学ぶ必要がありまして、IAの仮説検定を学んでいる段階でここが腑に落ちないのは極めて自然な反応です。
あまり深く考えず、「へえーよくわからないけどそうなんだ」でOKです。


■有意水準

あなた「ところでUra先生、発生確率が何%未満の出来事が実際に起こったらおかしいと思う?」

Ura「うーん、そうだなあ。発生確率5%未満の出来事が起きたら何か細工とかを疑っちゃうね」

あなた「表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$のもとでコイントスを10回して裏が9回以上出る確率、1.07%なんだけど」

あなた「これは表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$のもとで、という仮定、つまりUra先生の主張が間違っているってことだよね?」

Ura「ぐぬぬ…」

あなた「表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$、ではない!よって、コインには裏が出やすくなるように細工がしてあったという私の主張のは正しい!宿題は半分だ!」



・・・ここで、小狡いUraは細工がバレたくないので時間を巻き戻すことにしました。



あなた「ところでUra先生、発生確率が何%未満の出来事が実際に起こったらおかしいと思う?」

Ura「うーん、そうだなあ。(さっき5%未満って答えたら論破されちゃったから…)発生確率"1%"未満の出来事が起きたら何か細工とかを疑っちゃうね」

あなた「・・・表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$のもとでコイントスを10回して裏が9回以上出る確率、1.07%なんだけど」

Ura「1%以上なら、それくらいの確率の出来事が起こっても何らおかしくないよね?極めて自然な出来事だ。つまり、僕の『表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$』という反論を君は否定することができていないね。したがって、君の『裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった』という主張が正しいとは証明できていない。約束通り、宿題は倍にしましょう」

あなた「・・・(クソ講師め)」

「発生確率が〇〇%未満の出来事が実際に起こったらおかしいと考える」の〇〇に入る数値を"有意水準"といいます

この有意水準は目的に応じて好きな値(大体1%か5%)を設定することができますが、仮説検定を行う"前"に決定しておくのが一般的です。

"後"にしてしまうと、上のUraみたいに「結論を自分にとって都合のいいものにしたいから」という理由で有意水準を設定できてしまうからです。
これでは仮説検定を行う意味がありません。


■導かれる結論

(1)帰無仮説を完全論破した場合

「表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」というUraの反論(帰無仮説)を完全に論破した
→Uraの反論(帰無仮説)は間違っている
→「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」というあなたの主張(対立仮説)は正しい

以上は仮説検定の考え方として正しいものです。この流れは自然だと感じられると思うのですが、気をつけたいのは次の場合です。

(2)帰無仮説を否定できなかった場合<要注意!!!>

「表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」というUraの反論(帰無仮説)を否定できなかった
→Uraの反論(帰無仮説)は正しい
→「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」というあなたの主張(対立仮説)は間違っている
→コインには細工がしてなかった

・・・とはならないことに要注意です!!

正確には、

「表が出る確率も裏が出る確率も$${\frac{1}{2}}$$」というUraの反論(帰無仮説)を否定できなかった
→Uraの反論(帰無仮説)が正しいのか間違っているのか、わからない
→「裏が出やすくなるようにコインには細工がしてあった」というあなたの主張(対立仮説)が正しいとは言い切れない
→コインに細工がしてあったのかなかったのか、わからない

となります。結論は「わからないことだらけ」ということになるのです。

証拠が不十分で犯人と断定できないからといって、その人が100%犯人でないとは言い切れませんよね。要は、証拠が不十分であることから導かれるのは「何も確定できない」という事実です。

したがって、Uraの反論(帰無仮説)を否定できなかった(証拠不十分)のであれば、何も確定できないだけです

もしかしたら細工がしてあったのかもしれないし、細工はなかったのかもしれない。真相は闇の中、何もわかりません。

■まとめ

「こんなこと起こるのはおかしくない?!」と疑わしく思ったらそれが仮説検定の出発点

"対立仮説"とは、あなたが正しいと主張したいこと

"帰無仮説"とは、あなたが正しいと主張したいこと(対立仮説)に対する反論、つまりあなたにしてみると「無に帰してやりたい」主張のこと

仮説検定は、背理法のように、帰無仮説が正しいと仮定して議論を進めて矛盾を突きつけていく

その仮定のもと、実際に起きたこと(に幅を持たせたもの)の発生確率を求め、その確率($${p}$$)と有意水準との大小関係を確認する

"有意水準"とは、「発生確率が〇〇%未満の出来事が実際に起こったらおかしいと考える」の〇〇に入る数値のこと

$${p}$$が有意水準より小さい場合、実際に起きたことは"珍しすぎる"、それが起きるのは"おかしい"ということ。
したがって、正しいと仮定としていた帰無仮説が間違っている。
すなわち、対立仮説が正しい。

$${p}$$が有意水準以上の場合、実際に起きたことは"特に珍しくない"、それが起きるのは"普通"ということ。
したがって、正しいと仮定としていた帰無仮説が間違っているかどうか、わからない。
すなわち、対立仮説も正しいのかどうか、わからない。

仮説検定について、概要が掴めたでしょうか。冒頭でもお伝えしましたが、仮説検定を理解する上で大事なのは"全体の流れ"です。

用語の説明、例えば「対立仮説とは何か」「帰無仮説とは何か」から入ると生徒の反応が非常に悪いというのが、色々なパターンの指導を通してわかったので、本記事では全体の流れが掴みやすいように会話形式で説明してきました。

仮説検定の全体像が見えてきていたら嬉しく思います。

私は、特に生徒にとって初学のことを教える際、イメージを掴んでもらうことを徹底しています。細かい話は概要を掴んだ後に学ぶとすんなり入っていくからです。

私の指導にご興味を持っていただいた方、下の記事からぜひご連絡ください。オンラインの体験授業は完全無料ですので、お気軽にお試しいただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!それでは!

Ura

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