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せつなときずな

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母子家庭に育った主人公の少女が、紆余曲折の末息子を持った後、思わぬ苦難に人生が変貌していく。 その中で互いが苦悩する母娘のリレーションシップを描いた連載小説です。 ラストで物語が…
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2021年12月の記事一覧

「せつなときずな」第46話

「せつなときずな」第46話

「…うちのような認可外の新興保育園は、この保育士不足の時代に求人したって誰もこんのだよ。
新卒や有資格者は、地元の老舗保育園や大手チェーンに行っちまうんだ。わかるか?

だから、人材採用企業から資格を持った登録者を斡旋してもらうしかない。
こちらが採用を決めたら、成約報酬を幾ら払うかわかるか?

70万だぞ!
しかも採用者が就業している限り、給料の一定割合をその企業に払うシステムになっている。

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「せつなときずな」第47話

「せつなときずな」第47話

「絆」

刹那は転居した2LDKのマンションの居間で、絆を呼んだ。
引っ越し費用と初期経費は全てハニーぶれっど、要は杉山からの支援だ。
敢えて無理をして、まだ必要でもない間取りにしたのには理由がある。

「お母さん話があるから、こっちに来なさい」
絆はいつものようにブロックで遊んでいたが、刹那に呼ばれて遊びを止めた。

「今からね、大事な話をするからよく聞いてね。

お父さんから、予定が延びちゃっ

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「せつなときずな」第48話

「せつなときずな」第48話

刹那は、できれば黙って転居したかったが、ハートスタッフの管理物件を間借りしていながら勝手に退去は出来ないため、仕方なしにサキに説明に行った。
既に一時託児所のハニーぶれっどで契約社員として従事していたし、特別なことではない、そう考えはするのだが、サキにとってはそうではないことはわかっているのだ。

刹那は絆を連れて、サキが田辺と同居する実家の離れに向かった。
田辺が自分の住まいを引き払い、新築中の

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「せつなときずな」第49話

「せつなときずな」第49話

サキと裕道の新居が竣工した。
一宮インターを北西に流れる166号線沿いに土地を購入し、在来工法の平屋建てながら、外壁面はカラーモルタルのかき落とし、内壁は全て漆喰、サッシュは国産メーカーの木製サッシュと、こだわりが一際人目をひく美しい住宅だった。
刹那に再婚を話してから、既に2年以上経っていた。

サキは正式に、有限会社福原興業の代表取締役となり、会社を株式会社ハートスタッフに改変した。
田辺は自

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「せつなときずな」第50話

「せつなときずな」第50話

刹那は注意深く、自分の人生を謀り続けた。

「子どもは好きじゃないでしょ」と看過された杉山とは、ある意味公私共のパートナーであった。
刹那にとって子どもとは、身勝手で頭が悪く、脆弱で依存を求める非論理的な存在だったが、仕事において、それはサービス業と割りきるだけの度量は持ち合わせていた。
杉山と一緒だ。

「好きか嫌いかではなく、そこにニーズがあるかないかだ」
行為の最中はいつも、理屈を耳元で囁き

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「せつなときずな」第51話

「せつなときずな」第51話

刹那の思惑通り、絆は刹那に支配された。

刹那は家のことは厳しく躾け、自分の洗濯物は自分で洗い、食事の配膳と片付けもきちんとやるように強要した。
風呂に独りで入らせたのは、身体に穿ったピアスを見られないためだが、絆に女性の裸体に耐性を持たせないことの方が重要だった。
朝のゴミ出しを二人で行い、休みの日は手作りのデザートで絆を餌付けした。

勉強を教える。
隣に座り、根気よくやさしく、それは普段の厳

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