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「せつなときずな」第47話


「絆」

刹那は転居した2LDKのマンションの居間で、絆を呼んだ。
引っ越し費用と初期経費は全てハニーぶれっど、要は杉山からの支援だ。
敢えて無理をして、まだ必要でもない間取りにしたのには理由がある。

「お母さん話があるから、こっちに来なさい」
絆はいつものようにブロックで遊んでいたが、刹那に呼ばれて遊びを止めた。

「今からね、大事な話をするからよく聞いてね。

お父さんから、予定が延びちゃって当分日本に帰ってこれないって連絡があったの」

刹那は性的暴行の末に実刑となり離婚した公彦のことを、絆には隠している。
海外に仕事に行くことになったとうそぶいていたのだ。
そんな嘘は直にバレるだろうと思いながら、その事について考えるのが億劫で、とりあえずそのままにしている。

そしてもう一つの理由は、絆が中学に上がる時、全てを明かして自分の血筋を思い知らせてやると決めているからだ。

「お父さん、あとどのくらい外国にいるの?」
「まだわからないけど、絆が小学校に入るまでには帰ってこれないって」

絆は悲しげに刹那を見た。

「それでね、これからは、絆がお母さんにとってお父さんの代わりになって欲しいの。
お父さんの代わりに、お母さんを守って欲しいの。

絆、お母さんを守ってくれる?」
そう言うと、絆をやさしく抱き締めた。

「ぼくが、お母さんを守るの?」
絆は不安げに刹那に聞いた。

「そう。大丈夫。絆ならお母さんを守れるから」

絆が頷くのを見定めると、刹那は本題に入った。

「それじゃあ、明日から絆も大人の準備をしないとね。

明日から、お風呂は一人で入るの。
そして、お母さんが畳んだら服は自分で箪笥にしまって、朝保育園に行く時は自分で服を出して一人で着替えるのよ。
お母さんがご飯を作ったら、テーブルに運んで、食べ終わったら台所に運んでね。
これからは、寝る時も一人よ。

大人にならないと、強くなれないからね」

絆の瞳には、明らかに当惑する感情の昂りから涙が浮かんできたが、刹那は容赦しなかった。
「ね、お母さんと約束ね。絆が一人でできるように、明日からお母さんと練習しようね」

涙を堪えながら頷く絆を抱き締め、刹那は杉山の願いを叶えるもくろみが成就したことに満足感を覚えていた。



「ピアスをして欲しいんだ。

乳首と、臍と、陰核の包皮とラビアに。
本当は舌にもして欲しいが、仕事があるからそれは諦めよう」

「陰核の包皮とラビアって何?」

「ここだよ」

そう言うと杉山は、刹那の陰部を拡げて指で撫でた。
「なぁ、いいだろう?」

いい訳がなかったが、この男に言われたらしたくなる。
どうせ自分の身体を観ることができるのが絆とこの男しかいないなら、それも有りかもしれない。

「あんた、変態じゃん」
刹那は杉山をなじりながら口を吸ったが、美尾さゆりの舌にピアスが穿ってあったことを思い出しながら、言葉にならない感情が自分を蹂躙していくのを自覚した。

「あんた、私の紹介者とこんな風に楽しんでんるでしょ?」

杉山はいやらしい笑みを浮かべるだけで、何も言わず刹那を弄び続けた。

私はこの男から烙印を押されるんじゃない。
私が自分に烙印を穿つのだ。

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