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【Impression】病院にマネジメント教育が不足しているのではないか?

病院には国家資格を持つ多くの職種が存在しています。
それぞれ担当する専門が分かれており、その専門性を活かしながら患者さんの診療にあたっています。

多くの病院の課題として上がってくることが、そんな“職種間の調整”です。
それぞれの立場から意見を主張すると、職種間・部署間で衝突が起きることがあり、患者さんの為にを考えながら、その基本軸がブレてしまうこともよくあることです。

結果、「あの医者は看護師の苦労がわからない」「こっちは忙しいから、患者の迎えは検査技師がやってよ」「リハビリの時間に迎えに行ったら、勝手にレントゲン室に連れてかれてた」などと、専門性の前にルールや部署間の事前連絡・調整で済むような話でトラブルになっていたりします。

他方では、部署内においても「あの師長の進め方はおかしい。」「このシフトはありえない」「あの人だけ贔屓(ひいき)してない?」「あの人、新しく入った人に厳しいよね」「もっとちゃんと仕事してほしい」など、不平不満の嵐になっていることもしばしば。

こんな話がよく聞こえてきませんか?
どこの病院でも聞く内容なのに、具体的に対応しているように思えないのはなぜですかね??


「専門職」というセグメントが邪魔をしている

病院の勤務者はほぼ国家資格者で専門職と言われる部類です。
そのため研修と名のつくものは基本、専門性に関する「知識」か「技術」に関するものがほとんどです。
変化としては、ここ5年10年で様々な職種においても「経営」について一部取り上げていることも散見されますが、マネジメントについてはほぼありません。

上記のケースであれば、患者の立場を中心にして、各部署の管理者が話し合って解決すれば良いし、部署内の問題においても同様の歴史は繰り返されているのだから対処法を自分の上司に相談して一つ一つ対応していけば良いのです。
ここに専門性は必要なく、単純に「調整すること」「相談して解決」していくことだけです。それを大きい部類で呼ぶと『マネジメント(管理)』の一種であると思います。

医療従事者の中で、組織立って行われていると私が感じているのは看護協会だと思います。教育ラダーやファースト・セカンドなどの段階的な研修があるということも他の職種と比較して、教育体制が構築されていると思います。
ですが、そんな看護協会にもマネジメントに関してはほぼ無く、知識・技術に関するものがほとんどのようです。

専門職という立ち位置が、その専門を最大限に活かす役割を担うことを重要視していて、当然ながらそれを果たすことが最優先となっているのだと感じます。
しかし、看護の世界にもマネジメントは無くてなならない技術だと私は考えます。

上司からの教育が不足していませんか?

看護師を例に挙げます。
患者管理のための実務的な医療・薬学などの知識、採血や喀痰吸引のような技術をまずは習得しなければ、看護師としてそもそも活躍することができなくなってしまうため、まずは新人からきっちり教育を受けていきますよね。

その中で、様々な診療科の知識、外来、入院、手術、救急などの実務をOJTで覚えていき、患者対応から患者家族対応、他職種との連携、診療報酬のルールなどを徐々に覚えて成長し、その現場での戦力となっていきます。

ある一定の年次もしくは経験を積むと、各部署でリーダーなるものを担うこととなり、業務を円滑に進めていくことになります。
それに加えて、医療安全・感染・医療機器管理・新人教育など様々な委員会にも所属していき、知識を深めながら部署の代表として役割を担います。

その後も役職などが上がることに伴いファーストやセカンド研修に行き、部署の責任者(師長)への階段を登っていきます。
このように段階を踏んで徐々にステップアップしていく流れを看護協会は作り上げ、一番の大所帯である看護師のサポート体制を築いています。
他の職種と比べて、優れている特徴の一つだと思います。

しかし、冒頭の部署内外の調整ができない師長が多いというのが事実です。

誤解されないように申し上げますが、決して看護師が何かの能力が不足しているとか、その人次第であるとか、そんな乱暴な話をしたいのではありません。私自身、優秀な看護師を何人も見てきています。

ではなぜこのような状況が起こるのかに対する答えは、

簡単です! 誰にも教わっていないからです。

「おいおい、そんな話か。ふざけてるんじゃないよ」と言われそうですが、事実そうなんです。
皆さんもよく考えてみてください。知らないことをやれと言われてできますか?専門性が無くても、経験したことないものを今すぐ実行することは誰しも腰が引けてしまうのではないでしょうか。

全ての病院に適用している話ではありませんが、役職が上がる、もしくは師長(代行含む)に昇格するにあたり、病院の看護部の中で「管理職とは」「部下との接し方とは」「シフトのルール、作り方」「緊急時の指示命令の出し方」など、丁寧に必ず研修しているでしょうか?

この人物をいずれ昇格させるつもりだから、今のうちから師長としての考え方を教えて、部署管理・部下との面談・医者との交渉・シフトの作り方・他部署との調整などをしっかり教えることができていますか?

任命するときは「あなたしかいない!」「あなたならできる!」「私たちも全力でサポートするから!」と言って昇格させて、その後はどの程度までその管理職を教育できていますか?

『OJT』という名の、「何か起きたら相談してね」ってなっていませんか??

この対応では、“困らないと相談できないんです!”
『相談して! = 放置 』となっていることに気付けていますか?

自分で考えたり、調べたりすることは大事です。今までの上司の動きを見ていたでしょっていう話もよくわかります。

ただ、“習っていないことはできない”んですよ!

これくらいできるでしょ、これも自分で調べられないの?という話を耳にすることも多いですし、何も自分で考えられないの?と若手に話をする人も多いと思いますが、「できないものはできない」「知らないものは知らない」という考え方を上司となる方は理解していないといけません。
何でも自分で考えて!は教育でも何でもありません。導くことが教育であり、管理です。


全てはマネジメント(管理)に通ず

ある程度の役職者や管理職になった際には、その方法について指導・教育をしていくべきだと思います。
各専門職の知識や技術の研修は、その専門性から、ある程度は経験を積んで対応ができるようになっていきます。(できなければ専門職ではないですから笑)
そして、様々な委員会に所属してその役割を全うするにしても、知識を深めればマニュアル作成なども問題なく行えます。

でも、マネジメントは誰も教えてくれません。
突然役割が降ってきます。給与は上がっても「所属長なんだからさ」がついて回るようになります。

“マネジメント(管理)教育は必修科目”とするべきです。

各部署、各委員会などのマネジメントの方法がきちんと受け継がれていれば、担当した人間のポテンシャルありきでクオリティが上下するようなギャンブル運営にはならなくなります。
その現場での動き方、まとめ方、コントロールの仕方などのマネジメント自体の教育がされていれば、中身は違えどもどこの場所でも活躍ができるのではないかと思います。

医療現場では、歴代の先輩方がつまづいてきた課題がこれまでにも積み上げられてきたはずです。これをなぜ引き継がないのか?なぜ継続課題として学習する機会を設けないのか?と感じます。
新人の管理職ほど無防備なものはないと思います。(準備してきている人もいることは否めません。その人はすごいです!)
期待をかけて昇格させて、その後の病院の未来を背負わせたいのであれば、今までの蓄積してきたものをきっちり受け継がせて、その先にポテンシャルを発揮した付加価値を乗せて、また次の世代に引き継いでいく…。
この流れが病院業界の発展に必要なことだと思います。

他方面では、初めての管理職で運営方法が手探り状態のため、様々な部分で小さい判断ミスが起きます。それを見ている部下が管理職に反発することも多いケースだと思います。
シフトの作り方がおかしく誰かにしわ寄せがいっていたり、部下たちの揉め事の対処方法を間違えて総スカンをくらってしまったり。
そしてそのようなことが原因で、病休・退職・異動願に繋がることも往々にしてありますよね。

マネジメント(管理)教育はどの部署でも行うべきであり、職種の垣根を飛び越えて共通した知識・内容で研修を行うことができると思います。
是非病院の経営者の方々は、各部署の責任者に「専門性」の他に『マネジメント(管理)』を積極的に学ばせる意識をお持ちいただきたいと思います。

そして各部署におけるマネジメントの経験・実績を後任に引き継いでいくというシステムを、是非作り上げていただきたいと思います。

直接病院の収入につながらないと感じるかもしれませんが、そんなことはありません!
強固な組織づくりができてきますし、そのことで医療の質、リクルートなどには確実に影響を及ぼします。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
お読みいただいた医療従事者の方が、この記事の内容に共感し、現場で実践していただけることを願ってやみません。

厳しい病院業界ではございますが、チーム力・組織力を高めて、‘患者さんのために最良最適な医療を提供する’という大きな役割を共に果たしていければと思っております。




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