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地方民間病院の戦略
首都圏では多くの公的病院・民間病院が乱立し、膨大な人口に対し、差別化・棲み分けなどを行いつつ日々しのぎを削っている状況です。
首都圏では、民間病院とはいえ大手の医療法人グループや創立30年を超える老舗の病院なども多く、一つの病院の規模が大きく、またグループ病院などの連携に優れていて大きな優位性を持っていることもしばしばあります。
一方地方の民間病院は、それこそ規模が大きく歴史が長い病院でもない限りは厳しい状況を強いられているのではないでしょうか。
特に100床前後で急性期病棟を主軸にしている民間病院は、明らかに優劣の差が生まれているのではないかと思います。
ここに私のようなコンサルティングが介入する必要性があると考えております。
なぜこのような小規模の地方民間病院にコンサルティングが必要なのか?
まず、『なぜ100床前後の地方民間病院が苦戦しているのだと皆さんは考えますか??』
周りの大規模病院に患者を取られているからでしょうか。
昨今の人件費増加、物価高、水道光熱費の高騰が原因でしょうか。
コロナウイルス蔓延の影響でしょうか。
はたまたコロナ関連の補助金が減少したせいでしょうか。
(公的病院がこぞって赤字の理由に記載しているから笑えます笑)
それとも、小規模だから悪いのでしょうか。
では質問を変えます。
『なぜ100床前後の地方民間病院にコンサルティングが必要だと“私が”考えていると思いますか?』
地方だからでしょうか。
民間病院だからでしょうか。
逆に公的病院には入れないからでしょうか。
皆さんはどのように思いますか?
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正解は、『戦い方を知らない民間病院が多いから!』です。
地方民間病院がジリ貧になっていく、また閉院に追い込まれていく理由を順にご説明していきます。
人員不足の問題
言うまでもないですが病院は国家資格者の集合体です。従事する方が誰でも良いわけではありません。また人口も減少傾向にある自治体が非常に多いこともネックで、必要な資格の種類も多く、まず人員不足で悩む傾向にあります。(事務のように色々な部署に割り振ることができない)
そのため人材確保をしたいが、その方法を理解していない病院が多いと感じます。
人材確保の方法にはいくつか方法があります。
私は大手医療法人グループに所属していた時期がありますが、そこでは当たり前のようにやっていたことが、地方病院ではほとんどやられていなかったことが実感としてありました。
「大手だからできるんでしょ?」
そんな声が聞こえてきそうですが、逆に私は声を大にして訴えたいと思います。
『やれることを“全部”やってから、人材確保ができないって言ってもらえますか!!』
単純に私が感じるのは、「やり方を知らない」「やろうと思う人がいない」「どうしたら人を採用できるのかを考える人が少ない」「地方だから、田舎だから人がいなくても仕方ない」です。
そうなると“人が少ないから”を冠にした発言が多くなります。
「加算を取りたくても取れない」
「患者を多く受け入れたいけど無理だ」
「誰かが休むと更に負担が出てくる」「有休も取れない」
「有休どころか休憩もままならない」
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仕方ない、仕方ない、仕方ない……
それで病院が続けられますか?経営できますか?
そもそも、そんな病院で働きたいですか?
私なら辞めますよね。公的病院で税金に守られます笑
私が言いたいのは『そうならない正しい努力をしましょうよ!』って事です。
と言ってもやり方がわかりませんという病院がほとんどです。
わからない事を、わからない人間が、わからないままにしておくことが良くないのだと私は考えます。
そのまま、寿命を全うするように静かに閉院していくという意図が医療法人の理事長のお考えであれば、そのまま時間が経つのを待てば良いのではないかと思います。
でもそうではないでしょう!?
医療を志すものとして、地域住民に頼られる、お役に立てる病院を目指して今まで志高く運営されてきたと思います。
仮に病院経営がしんどいと思っても、他の経営者にバトンタッチすると言う選択肢もあると思います。そうすることで地域医療は確実に未来に繋がっていきます。
しかし赤字病院を引き継ごうと思う方はほぼいません。
事業承継を希望する医療法人でも、黒字化は必要なのです。
そのため、このような病院には「病院経営コンサルティング」が必要なのです!
地域医療構想への対応
次に、昨今大きく審議され続けている問題に「地域医療構想」と言うものがあります。
二次医療圏ごとに人口変遷などを元に医療機能や必要な病床数などが都道府県ならびに厚労省で吟味され、その将来の方向性が見える化されており、それに向けて各病院が機能転換などを行うよう導かれています。
二次医療圏まで行かずとも、自病院の地域の立ち位置が何となくではなく明確に示される機会ともなっています。
それを元に自病院の方向性や機能等の検討が行われ、経営軸を決める機会になったはずですが、それができていない病院も多いのだと思います。
そのため以前から変わらずの運営をしている病院もあり、公的病院の割合の高い地方では、その大多数の病院が地域医療構想に対応すべく動いている中で取り残されてしまいます。
ちなみに公的病院は、国や県からその役割についてある程度指示があり動く医療機関ですので、例えば急性期から回復期に変更をする際にも、それに係る莫大な費用については各種補助金や多くの税金で賄われることが多く、一度決まれば迅速にその体制に向かっていくことが容易です。
国や県からすれば、民間病院の意向などを待って本来の医療を守ることができなくなることは一番避けたいことです。
また民間病院が右へならえで言うことを聞いてくれるとも思っていません。
そのため、民間病院のことは考慮するが、最悪公的病院だけの地域になっても医療が継続して地域住民に提供できるように動いています。
一方、民間病院は迅速にはなかなか動けません。
医療法人の規模にもよりますが、経営責任者が理事長のみであった場合や事務長が行う場合でも上記でお話をした内容を理解していない場合は、どうしても判断が難しく、将来に関わる決定を行えない、もしくは判断できないケースが多々あると思います。
そして何よりも資金的に余裕が無いことがほとんどだと思います。
例えば、急性期病棟で戦ってきた病院が地域医療構想によって地域包括ケア病棟に変換をしようとする時、昔の施設基準と比較すると1床あたりの㎡数を大きくとらないと基準を満たしません。
そうなると現在の病床編成と同数のベッドを置くことはできなく、同病床数を維持するために病棟自体を拡大するなど改築する必要が出てきます。
多少補助金をもらえるにしても、まず費用の捻出から始まり、工事期間に入院患者を制限しなくてはならず医業収入にダメージを与えます。
この経営判断で良いか、将来性に迷い、資金繰りで迷い、収入減少で悩む。
この三重苦を突破できるかどうかで明暗が分かれます。
ここに“客観的判断”として、「病院経営コンサルティング」が必要なのでは無いかと考えます。
地方における中小民間病院の戦いかたとは?
ではどのように地方の中小民間病院は戦えば良いのでしょうか?
戦いかたはいくつかあります。
診療科に特化した小規模急性期病院(専門性が高く差別化できる診療科に絞る)になる
回復期に転換し、大規模病院の下請けの位置を確立する(どこの医療圏も回復期が不足している傾向にある)
地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟で、救急・手術をある程度維持しつつ、一つステージを下げる(急性期機能を残したい場合)
地域包括ケア病棟+医療療養病棟のケアミックス病院となる(より安定志向へ)
完全に慢性期病院となる(急性期機能から離脱し、医療療養病床のみで運営する)
ある程度病院業界に携わったり、関連した企業にお勤めであればこれらの手段は「誰でもよくわかる選択肢」かもしれません。
しかし“言うは易く行うは難し”です。
では、何を選択すべきなのでしょうか?これ以外の選択肢はないのでしょうか?
当該病院の二次医療圏の状況や競合病院、人口、医療機能の偏りなど多くの要因を検証しなくては、その病院の将来性を検討することはできません。
常に他院の動向も確認し、自院の立ち位置を確立することが大切です。
一つの例を挙げます。
私が実際に対応した『地方100床未満の病院』についてお話をします。
この病院は一つの診療科が30年前から地域に浸透していましたが、医療過疎地のため近隣に公的な300床超の高度急性期病院が建設された影響で、その診療科の患者は救急車では運ばれてこなくなり、普段自院に通っている患者の中で病気が見つかった場合にのみ対処するレベルまでに落ちました。
当然収入は右肩下がりで、急性期と慢性期のケアミックス病院でしたが、稼働率が70%台と低迷の真っ只中でした。
私が赴任した際は診療報酬改定の年で、医事課責任者が届出を間違えて年間1000万以上の返還が半年後に起こり資金繰りが危なくなったりしましたが、
職員の誰一人として収入を何とかしようと一生懸命に動く人物がいませんでした。どちらかというと諦めモードでした。
何より職員の意識改革が必要でしたが、まずはリーダーとなる私自身が誰よりも動いて、そして実績を上げることが大切だと考えました。
詳細はまた別の機会にしようと思いますが、簡単には以下の通りです。
慢性期病棟に人を回し、医療区分の高い患者を集め、安定収入の柱とした。
↓
急性期病棟の人員不足を解消し、ベッド稼働を上げた(70%⇨95%)
↓
患者の併診を推進し、非常勤医師にて外来で受診できる診療科を増加。
↓
医業収支、損益をはじめとした数字を各部署の管理者に開示し、共有した。
↓
数字が改善していること、取り組みが経営改善に繋がる意識を持たせた。
↓
みんなで稼いだ利益で働く環境を改善するため使用し、やる気へ繋げた。
この流れで、1年目△3000万、2年目△3000万、3年目+1億円とV字回復を達成させ、その後も4桁単位での黒字収益を何年も上げています。
そして小規模病院が今後10年、20年と将来的に存続していくために、人口が減少しても生き残っていくための施策を考え実行しました。
その施策とはズバリ『介護事業』です!
正直、介護事業は儲かりません。(一部訪問系は別)
では何のために「介護事業」へ手を出すのか?
将来的に人口が減る地域の中で生き残るためには、患者が継続的に一定数確保できていれば良いと考えることは容易です。その手段として、差別化や固定客(患者)の獲得などの戦略は当然どこもとっていくこととなります。
しかし周囲には、赤字でも税金で何度でも復活してくるゾンビのような公的病院ばかりで、且つ、規模も自病院より大きければ競争で勝つことは非常に困難です。
そうなれば、先述のように同じ土俵で相撲をとることは望ましくありませんので、病院機能の変更を考えます。
変更したとして上流からの一方向だけの患者の流れを待っているのでは、餌を待つ鯉のように口をパクパク開けて、餌をくれる人の気分次第でもらえるかどうかになってしまいます。そのため、かかりつけとして自院を頼ってくれる患者の数を増やすことが大切です。
具体的には、ベッドのある介護施設(特養、看多機)、訪問系介護(訪問看護・リハビリ)等を開設または事業承継をして、医療以外の分野から患者を引っ張ってきます。訪問診療も合わせられたら強いですね。
自病院にきた患者を外来・手術・入院等で受け入れ、その後自宅退院・介護施設入所等へ繋げ、そこに自介護事業を提供する。
さらにそこで何かあればまた自院に受診する流れを作る。このループが「患者確保」に非常に有効な手段であると考えています。
病院・介護・在宅が同一グループであれば、事前に情報共有をして患者・利用者の拒否をしない体制を作れます。(他施設からの紹介だと面倒な患者は断りやすいので)
この体制は、患者・利用者本人とその家族には多大な安心を与えます。
何かあっても病院(医療)がバックについていて、その後も介護施設や在宅医療・介護まで一直線で面倒を見てくれる。
これって凄く安心しませんか?
そうなるとこのネットワーク内にいる患者・家族は、ずっとこの中で回り続けます。医療が健全経営をして存続していくために必要な患者を担保し続けられるのです。
公的病院は簡単に介護まで手を出せません。全て予算で動いているので。
だから民間病院のフットワークの軽さでそのネットワークを作り上げやすいのです。
実際に私は、グループホームを事業承継し、看護小規模多機能型居宅介護施設を新規開設し訪問看護ステーションも併設しました。
さらに居宅介護支援事業所も病院内に新規開設し、退院患者からのケアマネ経由で自施設の介護事業へ誘導ができる体制を作りました。
結果、『医療と介護の連携』を完成することができました。
私はここまででこの民間病院から離れることとなりました。
次の課題は40年経過して老朽化した建物の建て替えになるようです。
人もたくさん採用しました(3年で40人超)し、若者を登用し、管理職も教育してきました。
私が離れた後も自分たちでこれからの難局を乗り切ってくれると信じております。
このように状況に応じて二手三手と事業展開していき、その病院が永続的に地域に信頼される組織づくりをしていくことが大切です。
地方中小民間病院は弱者の理論で戦わなければなりません。
税金という無限とも思える血液を通わせる公的病院(強者)と正面から向き合ってはいけません。自分たちに相応しいステージが必ずあるのです。
自分たちが招いている現状をきちんと客観視し、わからない中で無理やり頑張ろうとしてはいけません。小さいところでどれだけ考えても、それ以上の名案が浮かんでくることはほとんどありませんので。
「餅は餅屋」という諺があるように、専門家や経験者に意見を聞いたり、委託することも検討してみてはいかがでしょうか?
(但し、その専門家はきちんと選ばなくてはなりません。データではなく、実際の行動で改革を示してくれる専門家をお選びください。)
長々とお付き合い頂き、ありがとうございました!
真剣に現状をなんとか打開したいと考えている民間病院の経営者の方がおりましたら、いつでもご相談ください。
私の今まで培った経験を活用してサポートさせていただきます。
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