見出し画像

2025年2月2日「漫画 百鬼夜行抄」感想


懐かしい漫画の宣伝を見かけ、
数巻分、無料で読めると知って、ついつい読んでしまいました。
今市子さんの「百鬼夜行抄」という漫画です。

その先が気になって、
結局Kindleで6巻まで課金して、
読み耽ってしまいました。
登録したら〇〇話無料とあったのですが、
もう新しく登録をしたくなくて、Kindleにしました。


とにかく懐かしい


学生の頃、漫画に詳しい友達から貸してもらって、
絵の美しさとあまりの面白さに驚いた作品です。
あの頃は、SNSで面白い漫画を知るということはなく、
友達に面白い漫画を教えてもらうことがとても多かったのでした。
当時、学生の身では、美麗で大判の漫画を買うことはできず、
この本のような本は主に友達から借りていたのです。
貸してくれた友達は、
お姉さんがいたとかで家にこの本があったのではなかったか…と思います。
今考えると、よく貸してくれた、と思います。
いつも表紙の絵が美しい、と感動していたことを思い出します。

怖さと明るさの絶妙なバランス


この作品、
ジャンルとしてはホラーなのですが、
民俗学的な要素もありますし、
謎解きがメインなミステリっぽい回もあったりします。
そして、何より、怖過ぎない!
ホラーなので怖い描写も沢山あるのですが、
コメディタッチな日常部分や
必ず助けに来てくれるキャラクターたちの存在もあり、
寝られなくなるほどに怖くはありません。
でも、改めて読んでみると、
この作品、
「主人公だから」とか「主人公の血縁だから」助かっているわけで、
いわゆる普通の人たちは、沢山、たたられて死んでいますね…。
学生の頃は、
「自分も主人公側」という思いがどこかにあって、勝手に安心して読んでいたのかもしれません。
大人になって読んでみると、
理不尽な不幸や死が普通の弱い人々に襲いかかるエピソードが割とたくさんありました。
でも、
文鳥をモチーフにした式神の尾白(おじろ)と尾黒(おぐろ)などの、
コミカルさが恐ろしさを中和してくれます。
と言っても尾白と尾黒も妖魔で、気軽に人を祟り殺したりしてしまうのですが…、
作者の類稀なるキャラクター造形で、
とっても可愛い烏天狗になっているので、
心和むのです。
著者が文鳥を飼われているのは有名な話であり、
文鳥を飼われてるからこそ描けたのであろう、
仕草が盛りだくさんです。
お昼は小鳥、夜は烏天狗化する、擬人化の配分も絶妙で、
個人的には、
尾白と尾黒がワイワイ喋ったり、
お酒を飲んだりしている様子がとても好きです。
性格は、
健気で、わがままで、実は残酷で、
それもまた良いのです。

主人公・律の距離感


主人公の律は初登場時、高校生なのですが、
わりと、落ち着いた男子です。
漫画の男性主人公としては、
異例のキャラクターかもしれません。
熱血でなければ、無関心でもない、
善人かと言われると完全な善人ではないし、
皮肉屋かと言われるとそうでもない、
不思議に透明感のある存在です。
死んだ父の体に式神「青嵐」が入り込んでいることも、
淡々と受け入れてしまっている様子です。
情も、気持ちの葛藤もあるキャラクターなのですが、
ぐじぐじ悩むとか、
引っ張られてしまうタイプではありません。
その絶妙な距離感が、
この漫画がホラーで、
後味の悪い結末があるにも関わらず、
読みやすい理由でしょう。
律くんは、きっと(肉体的にも、精神的にも)
大丈夫と思えるのが、
読者としては安心なのです。
律以上に、
人間ならざるものと関わり合っていた作家の祖父、
蝸牛の若い頃のエピソードは、
もう少し人間的葛藤がある気がします。
時代の影響でしょうか。
それともすでに、律はちょっと妖魔側なのかもしれません。

民俗学的な要素を楽しめる


民俗学がお好きな方なら
おお!と興味を持つようなエピソードが沢山出てきます。
著者は、民俗学にお詳しい方なのかもしれません。
きっと沢山、資料を読み込まれているのでしょうね。
著者は人外キャラクターの設定や描き方がとても上手ですが、
あの緻密な描きっぷりは、
資料を読み込んだ上でのものでしょう。
江戸の絵巻ものなども参考になさっているのでは。
さて、この作品の中では
定番の「妖は招かれない限り、人家には入れない」は繰り返される基本ルールですし、
狐や魚、植物、人形の妖も出てきます。
どこかで聞いたことのあるような民俗学的要素や妖を、
うまくエピソードに盛り込み、
読者の興味をひいた上で、
はらはらさせ、
最後にはすっきりした結末にまとめ上げるの手腕が、
素晴らしいです。

今後も少しずつ購入していくつもり


百鬼夜行抄は、一冊につき、
読み切りが3〜4編入っている形式です。
連載漫画はもちろん面白いですが、
この形式、思いついたときに、読みたい分だけ読めて、いいですね。
お休みの時に、数冊じっくり読めます。
私は漫画を読むのが下手です。
小説よりも漫画の読み取りが苦手で
特に書き込みがしっかりある漫画は
一回読んだだけでは、
正しく内容がわかっていないこともあります。
これに気がついたのは「ゴールデンカムイ」を読んだ時です。
画面にぎっちり情報が埋め込まれていると、
何周もして読まないと、絵で表現されているものを取りこぼしてしまうのです。
これは多分、視覚が他の感覚より弱いからでしょう。
だからこそ、じっくり読んでいきたいのです。
現在、31巻まで出ていて、
連載も続いてますから、
先のある楽しみです。
ちょっと怖くて面白い漫画を読みたい時はぜひ!





いいなと思ったら応援しよう!

千歳緑/code
気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。