本書は2016年に出版されピューリッツア賞をはじめ数々の賞を受賞した。原題は「強制退去:アメリカ都市における貧困と利益」。著者はプリンストン大学の社会学者で、アメリカの貧困層の住環境を調査するために、自ら貧困層のトレーラーハウスパークで生活して、家主と犯罪や様々なトラブルを恒常的に引き起こしている貧困層の借家人たち(ほどんどは有色人種)たちと交友を結びそれを記録したノンフィクション。借家人たちは常にお金がなくトラブルを起こしているために、頻繁に家主から強制退去をさせられ生活が全く安定せず負の循環に陥っていく様が描かれている。エピローグでは著者が収集したデータを基に強制退去を回避させるための様々な提言を行っている。アメリカ社会の暴力的とも言える格差と貧困の現実をよく理解出来る一冊。
(2024年2月10日)