ジブリのマジカルな世界を再現、ロンドンの「となりのトトロ」舞台公演
イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)と言えば、数々の著名な俳優を輩出している劇団。その名の通りシェイクスピアの作品が主ですが、2022年に「となりのトトロ」の舞台公演をロンドンで開始し、現在の2023-2024シーズンは2シーズン目。ずっと見たいと思っていて、今回のイギリス滞在でやっと叶いました。(ネタバレになるので公演の内容あまり詳細には書いていませんが、確実に見に行くという人は読まないほうがいいかもしれません。)
「となりのトトロ」のチケット入手
2022年のシーズン開始前に「となりのトトロ」の公演のことを聞いていていました。パートナーのお兄さんがRSCの会員なので先行チケットが買えるとのことでしたが、人気の舞台ですぐチケットがなくなってしまうことから、随分前に旅行を計画しておかないと難しく、シーズン1年目は諦めました。
そして今回のイギリス旅行を決めたときは出発の1ヶ月ほど前で、滞在中のチケットはもう売り切れていました。
ところが大晦日の日に、お兄さんから「1月2日のチケットがリリースされたから買ったよ」と神の声!
チケットを購入しても、ある一定期間まではキャンセルが可能で、キャンセルしたチケットがまた売れれば、支払った金額が戻ってくるようになっているそう。
急遽、パートナーと「となりのトトロ」を見に行ってきました。チケットを見てびっくり、ブロードウェイの人気ミュージカル並みの1枚160ポンド(3万円超)でした…
ブルータリズム建築のバービカン・センターへ
RSCといえば、シェークスピアの生まれた町であるストラットフォード・アポン・エイボンが拠点で、そちらは学生時代にシェークスピアの「夏の夜の夢」を見に行ったことがあります。
今回の「となりのトトロ」はRSCのロンドンの拠点のバービカン・センターで公演が行われています。バービカン・センターは1960年代に建設計画が立てられ、1982年に完成。エリア一帯は、バービカン・エステート(住宅)やバービカン・センター、病院、教会などからなる複合施設で、コンクリートむき出しのブルータリズム建築。
暗かったので外観の写真は撮れませんでしたが、バービカン・センターの内部はいかにも1960年代のブルータリズムのデザイン。
通ったアメリカの大学の図書館の一つがブルータリズム建築だったので、ちょっと懐かしく感じましたが、お世辞でもキレイとは建築。
図書館などもあり、文化や芸術の複合施設といった面持ちで、カフェやレストランもいくつか。WIFIが無料のせいもあり、ロビーのテーブルやソファにはラップトップを広げた人々が陣取っていました。
トトロづくしのバービカン・センター
まだ開園まで時間があったのでぐるっと周ってみると、トトロのショップがありました。
大きなギフトショップもトトロが一面!
そしてトトロのぬいぐるみが!しかもここに写っている一山の他にもう一山!
実は去年日本でジブリショップに行ったところ、ぬいぐるみが一切売っていおらず、お店の人に聞いたら、たまに入荷するけれど人気ですぐ売り切れてしまうとのこと。日本に住んでいたときはそんなことはなかったので、びっくり。まさかこんなところに大量に売られているとは…お値段は中トトロでびっくりの75ポンド(1万4千5百円)でした。
トトロが現れるバス停も。
結局プログラムだけ入手しました。
会場の前には「となりのトトロ」の巨大ポスターがありました。
ついに「となりのトトロ」を鑑賞!
開場時間になったのでシアターへ。現地に住んでいると見られる日本人もちらほら。アメリカに住んでいたときは舞台を良く見ていたのですが、かなり久しぶりで胸が高鳴ります。
3階席まであり舞台の割には大きめのシアター。やはりステージ正面の良い席でした。イギリス人の意外と年配のお客さんが多かったです。
トトロの映画の出だしのタイトル画面と同じものが正面に。
公演中は撮影禁止なので、このタイトルと公演後のセットの写真のみです。
ブログラムを見て分かったのは全員アジア人キャスト。中華系の俳優が多いですが、日系の俳優も何人か。
実際見てみると、トトロやマックロクロスケなどを操るパペティアも含めて全てアジア系でした。メインのキャスト以外は、舞台装置の移動、パペディア、近隣の農民や学校の生徒と一人数役行っているようでした。
今シーズンのトレーラーはこちら。
俳優も結構演技力が高く、お父さん、お母さん役も、メイも映画のイメージと大体同じでした。唯一、さつきがちょっとヒステリックな子になっていてちょっと残念。
また、さすが久石譲がエグゼクティブ・プロデューサーだけあって、舞台後方の高いところにバンドがいて、全て生演奏。日本人の女性のシンガーの声がとても綺麗で正に適役でした。お馴染みの曲が日本語と英語で楽しめます。
舞台装置を移動させる動きまでもが計算されていて、とってもアーティスティック。舞台監督はイギリス人ですが、神秘的なところは動きの一つ一つが丁寧で、日本人のような丁寧さを感じました。そして、コメディータッチのところも多く、観客もかなり笑っていました。とにかく演出が素晴らしくて、ネコバスのシーンもいろいろ工夫がしてあり、凄い!楽しい!マジカル!の連続。
そしてトトロ!いくつかのトトロが出現しますが、トトロが登場すると観客がみんな「Ohhhh!」と声を上げ、とにかくそのスケールに圧巻。トトロは「セサミストリート」で知られるJim Hensons Creature Shopで制作されたそう。トトロだけは写真も映像も公開されないという徹底ぶりで、実際にシアターでしか目にすることはできません。
最後はスタンディング・オベーション!とりあえずやるというスタンディング・オベーションも多いですが、このトトロはとにかく観客の興奮が感じられました。
日本の映画をイギリスの舞台で英語で行うということで、どんな出来なのか、そしてどんなトトロが出てくるのか正直不安でしたが、そんな不安を一気に払拭してくれた作品でした。新年は頭の中は完全に「トトロ」でいっぱい。
この「となりのトトロ」は、演劇・オペラ、ダンス、ミュージカルに与えられるイギリスで最も権威のある賞、オリヴィエ賞で去年、最優秀作品賞(エンターテイメント・コメディー部門)、演出賞、衣装デザイン賞、舞台美術賞、照明デザイン賞、音響デザイン賞の6部門を受賞。最も多くを受賞した作品だったそう。
BBCの短いビデオで久石譲のインタビューやトトロの作成シーンなどを紹介しています。