死にたくなったら読んでほしい本
「なんかもう死にたいな」と思うことがある。
うつの急性期は抜けて、比較的安定しているけれども、そういう時は突然やってくる。仕事がうまくいかなくて不甲斐ない思いをした日だったり、うっかり砂糖を床にぶちまけてしまったなど、至極くだらない理由であったりする。
もう頑張んなくていいじゃん?
そりゃ、生きてりゃいいこともあるだろうけれど、同じくらい嫌なこともあるし、もう、やめてよくない?
あたしひとり死んだって、別に何も変わらないんだから。
でも結局死ぬのも怖くて生き続けてしまう。
ここには救いなんてひとつもない
私は死にたくなっても人にはなるべく言わないようにしている。「死なないで」って言われるだけだから。
私が死にたいって気持ちに、他人のエゴなんて必要ないし、言うだけ他人を困らせてしまう。
「生きていてほしい」とか、「死んでいい命なんてない」とか綺麗事もいらない。私の人生は綺麗じゃなかったから。
「死にたいと思うほど頑張った」とか、労いの言葉もいらない。生きていくにはこれからもずっと絶えず頑張り続けないといけないから。
最初から私なんていなかったことにしてほしい。
そう思うのは私だけじゃないと思う。
だから、死にたくなった時、この本を読んでほしい。
『ルポ池袋 アンダーワールド』 中村淳彦、花房観音著
ここには救いなんてかけらもない。
ただ誰かの人生が転がっている。
日の当たらない社会が淡々と書かれている。
同情なんてしてくれないし、慰めもない。光も希望もないし、生きる勇気を見出すこともできない。
ただ、死に対する気持ちを代弁してくれる。
私は人の気持ちはわからなくて当然だと思っている。だって違う人間だから。だからと言って他人を思いやらないのは違うけれど、共感という行為には今まで意味を見出せなかった。
でも私はこの本を読んで共感した。
共感なんて人との会話の潤滑油でしかないと思っていたけれど、ちゃんと意味があった。今まで言葉にできずにいた気持ちを代弁してくれたことで、腑に落ちた。
安心した。
私以外の誰かも、似たような気持ちを持っていることに。
命の終わりは一瞬である
もう1カ月も前になる。安倍元首相が凶弾に倒れた。
仕事中に第一報を聞いてから、何とか助かってほしい一心でニュースを追っていたが、無念にも亡くなった。
報道によって人の命が亡くなる瞬間を何度も浴びた。さっきまで生き生きとしていた人が、一瞬で亡き者になってしまうことに恐れ、憔悴した。
この本の一部には、人が亡くなるまでと、残された人の心情が淡々と記されている。
喪失感がそこに溢れている。
死にたい私さえ見失ってしまうほどの喪失感が。
死ぬ必要のない人が死んで、死にたい私たちが生きながらえる世界。
私たちの死にたい今日が、誰かの生きたかった1日なんて心に響かない。
けれど、失っていい命なんてどこにもないんだと思う。
他人事でしか捉えられないけれど、それをわかっておかなければならない。私たちが自ら死んでしまわないように。
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鞍馬欄子(くらまらんこ)
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