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「#国旗王<こっきんぐ>ができるまで」と「できたあと」①

これは発売8ヶ月で2500個売った同人ゲーム
国旗王<こっきんぐ> 国旗カードゲーム 🇯🇵日本とドイツ🇩🇪どっちが広い?』の足跡であるーーーー  (13800字)
(この記事は https://adventar.org/calendars/10512 ボードゲームアドベントカレンダー用の記事です)

はじまり

始まりは2024年3月のボドゲエキスポ(BGBEJapan)への企業出展だった……。

「東京への4人分の2泊3日交通費と旅費だけで20万円近くになるんだよね。なら地元大阪で開催されるBGBEに、22万円払って企業出展した方がいいよね」

……と「HEY!」のリーダーであるカドタが申し込んだのである。ボドゲエキスポはゲームマーケット大阪が3年連続で中止になったため、代わりにと立ち上げられたイベントで2024今回が初開催である。
私「海のものとも山のものとも知れない、成功するかどうかもわからないイベントに22万円BETするとはカドタさん、大胆ですなあ」👈出展費用は自分の金ではないので呑気なものだ。
しかし、この時点で22年12月中旬。BGBEの3月までもうあと3ヶ月しかない。いや年末年始10日間を考えると実質3ヶ月を切っている。

私「……で、ボドゲエキスポ新作は?」
10月のゲムマ2022秋『ミュルマミウスの虜』の製作と出展でHEY!は疲弊していた。というか何の新作の予定もなかった。
私「新作ないと流石にまずいですよ、カドタさん……」
カドタ「そうかなあ」
私「新作がないと旧作動かない(=売れない)ですよ」
カドタ「そうだなあ」
過去の旧作のみで出展したゲムマ2023春で「新作を出してこそ旧作も動く」ということはわかっていた。

「3ヶ月(※)で間に合いそうなの"アレ"しかないですよ」
 ※印刷と箱製造、アッセンブルで実際のところ2ヶ月である
「アレ」とは『国旗ゲーム』のことであった。

『国旗ゲーム』を説明するには、HEY!の成り立ちから軽く説明せねばならないだろうーー

HEY! とは(その発足から)

 HEY!とは大阪で11人(2023年12月当時。2024年12月現在は13人)で活動するボードゲーム制作チームである。
主宰のカドタ・トシが2021年12月ごろにネットで「ボードゲームを制作したい人」と募集したら13人も集まってしまったことで発足したボードゲーム制作集団である。かく言う私ウナムもその13人のうちの一人である(笑)。
カドタは前身となるSangenyaという3人のサークルで、2019年大阪ゲームマーケットで発売した『富士山地下99階』を累計1000個以上販売した、という実績があった。同人ゲームで1000個販売はゲムマの中でトップ1%に入る。コロナ禍で他の2人が集まれなくなったのでSangenyaを休眠させ、新メンバー募集したのであった。……のだが、13人も集まるとはカドタは予想外だったそうな(笑)

HEY! 最初のゲーム『どうぶつの村(仮)』

その発足したばかりのHEY! が手がけた初ゲームは『どうぶつの村(仮)』だった。

全没を食らった「どうぶつの村(仮)」


ボードゲーム制作経験者は、主宰カドタとナオ(池本七音)の二人だけだったので、「まずみんなでアイデアを出しやすいミニゲーム集を出そう」という話になったのだ。
『どうぶつの村』のコンポーネントは「6種のどうぶつ(スート)と1~4の数字が描かれたカード60枚」と「サイコロ6色×3=18個」というもので、我々はそれらを活用したミニゲームを40種以上考え出し、30以上テストプレイし、ルールブックも10個書いた挙句にポシャったのである(笑)。
(ポシャった理由はまたの機会に)

私「あの『どうぶつの村』の「国を早く言うゲーム」、イケると思うんですよね〜」
そう、丸ごと没った『どうぶつの村』には結構面白いゲームがあったのだ。もちろんそのままでは単品として出せる完成度ではないので、リメイクしたらいいのではないか? という発想である。

『国を早く言うゲーム』

どうぶつの村(仮)のカードはたまたま「青・赤・黄・緑・黒・白」の6色スートであった。これは偶然にも(ホント偶然!)国旗に使われる色である(不思議なことに紫が使われた国旗は存在しない)。
山からカードを2枚オープンし「赤・緑」だったならその2色を含む国旗名を「イタリア!🇮🇹」「バングラデシュ🇧🇩」と早い者勝ちで叫ぶ! というゲームで、チームメンバーの特にリンゴとヒウラの両名から好評だったのである。

……が、メンバーの一人であるジョナがテストプレイしたとき、

「はよ終われ」

と思った、という感想が飛び出した。
要するに「あまりにわからなくて、手も足も出ない」という地蔵化問題である。
原因は明白で「完全な知識ゲーだから」」である。こればかりはプレイヤーの知識に依存するため、いかんともし難い。あと、答え合わせが「スマホで国名を検索する」という点も問題だった。ミニゲーム集という専用コンポーネントを入れられないがゆえの苦肉の策であるが>スマホ検索

いずれにせよ、『どうぶつの村』ごと国旗ゲームもお蔵入りである。これが2022年夏頃のこと。

国旗カード197買ったよ〜

この「完全知識ゲー」をどうにか遊べる形にするため、ためしに国旗カードを購入したのが2023年9月。1800円也。こういうのは既製品を買って流用する方が、1から国旗&データカードを50枚以上作るより買った方が遥かに楽だ。時短になる。タイム・イズ・マネー。
国名が書いてある面を表にしてカルタのようにテーブルにばら撒く。
「読み札」の代わりに山札から「青」「黄色」「黒」「赤」「緑」「白」のカードがランダムで2枚引かれる。国名の書かれたカードをいち早く獲得する!
……ってコレ結局知識ゲーやんけ! アカン。

テスト二、三回やっただけで凍結である。
第一ラウンドは国旗の方の面を向けてカルタやって、5枚取ったところで「みんな覚えたよね?」と残りを裏返して国旗面のみに。第二ラウンド開始だ! みたいなルールにしてみたけど、これまた全然覚えられない! ハイ解散!(ちなみにこの「国旗カルタ」は『国旗王』のおまけルールの原型となる。何事も無駄にはならないのです)

で、せっかく買った国旗カードがもったいないので
「これで何かできんかな…?」と私(ウナム)が、ぼんやり国旗カードを眺めていたときのことであったーー
「ん? これ面積・人口のデータあるな……?」

国旗カード197のデータ面


そうなのである。国旗カード197には「国名」「国旗の由来」のほかに「面積」「人口」「国コード(3文字アルファベット)」などのデータが書いてあったのである。

⚡️ここでウナムに電撃が走るーー!!
「あ!!💡 これで『タイムライン』やれるじゃん!?!?」

説明しよう! 『タイムライン』とは表面に「フォークの発明」「自動車の発明」「活版印刷の発明」「ピラミッドの建設」などと書かれたカードを自分の手札から出し、それが正しい順番で並んでいたら出すことができるが、間違っていたら山札からドロー(手札枚数変わらない)、手札を出し切ったら勝ち。という名作である。恐竜や動物の重量・体長でやる『カードライン』なんてのもある。

つまり、「国旗カードを人口や面積順に並べるゲーム」である! これは絶対に面白い! と考えついた瞬間に確信!(なお私の確信はまあまあ外れる)。

ちなみにこの国旗カードに、「国旗面に国名が書いてない」ことが国旗王のオリジナリティーに大きく貢献することになるのだ。

「でもなあ、タイムラインまんまやるわけにもいかんしな……」
流石にそのままではパクリすぎる。「ゲームのアイデアに著作権はない」ため、ぶっちゃけ「国旗版タイムライン」を個人的に作って発売しても法的に問題は一切ないので、同人なら出すこともあり得るのだが。まあそこは倫理的・プライドの問題である。

「じゃあ、トリテにするか」

「トリテ」とは「トリック・テイキング」の略で、『コントラクトブリッジ』『ハーツ』など欧州の伝統ゲームである。日本だと『ナポレオン(ゴニンカン)』が有名だがいずれにしても日本だとマイナーだ。日本だとマイナージャンルなのになぜかゲムマではやたら多くの新作が発売されるジャンルでもある。
トランプのカードを用いて、各プレイヤーが手札から1枚ずつ時計回り順にプレイして数値の大きい方が勝つ、というすこぶる簡単なゲームである(マストフォローとかややこしいルールもあるがここでは割愛)。

「もうこれでいいじゃん」


最初から完成されていた国旗王のシステム。


①国旗カードを配布して、国旗面を表に手札とする。データ面は見てはいけない。
②これでお題カード「人口が少ない」「面積が大きい」がラウンドごとにランダム決定。お題に従ってトリテするゲーム!

↑思い付きでこれをカドタと二人テストプレイしたのが12月のHEY! 会議。

俺「もうこれでいいのでは?」
カドタ「なんか(わからんけど)おもろい」
俺「BGBEはこれを出すしかないのでは??」

とんとん拍子で話がまとまる。「本当に大丈夫か?」という一抹の不安はあるにはあったがなにぶん時間がないし、他に選択肢もない。

余談だが、私はトリテが苦手……というか「何が面白いのかよくわからない、ハンドマネジメントなら大富豪の方が面白いじゃん」派の人間で、勉強を重ねた結果、最近ようやく「あーなるほどね、トリテ完全に理解した(←わかってない)」という状態まで到達した。「大富豪の方がトリテより面白いやん」という考えは今でも変わっていない……。
逆にトリテ好きじゃないことが国旗王では、いい方に転がったような気がする。自分がトリテ好きだったら「国旗の色によるマストフォロー」とか採用してたかもしれん(一回だけ試したが複雑になるだけで面白くなかった)

「本当にいいのかと思って見に来た」

HEY!内で『国旗王』をテストプレイした結果、評判は上々であった……と言いたいところだが、そこまで全員が両手を挙げて大絶賛というわけではなかった。
ナオ「何が面白いのかわからない……と最初思ったが、複数回プレイしたら面白さがわかった」

ジョナ「本当にカドタさんがこれ(国旗王)でいいと思ってるのか? と思って確認しに来た」と言われたときは噴いた。信用がない! プレイしたら納得はしてくれた。

余談だが、HEY!で遊んだゲームはBGG評価基準で10点満点で点数をつけることになっている。基本的に自分たちで制作したゲームに採点することなどないのだが、国旗王の発売前の2月3日に
「国旗王は何点? 参考までに過去のHEY!のゲームは何点?」とメンバーたちに聞いたところ、カドタ・ナオ・ヒウラ・マツシタ・ウナムの評価は
 国旗王 6/5.5/4/5
 ミュルマミウスの虜 6/6.5/4/5.5/7
 魔王様のお引越し 6.5/7.5/5/4.5
という評点で、『国旗王』は過去作より点が低めだった。私の表情は少し曇った(笑)。

イエサブなんば・桂ゲイセン テストプレイ会

一応外部でもテストしなきゃと宮野華也氏・こっち屋氏が毎月主催している大阪のイエローサブマリンなんば店様でのテストプレイ会に持っていく。
反応は悪くないが、ただ「類似ゲーがすでに出てそう」との意見が出る。
『世界でイチバンの国』(国内版はアークライト販売)『都道府県の形を使ったゲームがエグいほどにムズかしい県』『ファウナ』『トリテジャパン』などなど……ほぼ全部買って確認したが、表面的に似てはいるものの根本の部分で別物だったので私は安堵した。その時点でBGBE発売は確定していたのでもし類似ゲームが出てたら発売中止!BGBE新作なし!の憂き目に遭っていただろうから。

ちなみに阪急桂駅(京都)のボードゲームスペース ゲイセンさんでも、国旗王をテストプレイしたのだが、そのとき初対面の大学生オインクイブインク君はのちに
「国旗王がすごく面白かったので、国旗王のあとに自分のゲームを出すのが嫌でしたよ(笑)」と述懐していた、という余談もあったりする。彼はBGBEで国旗王を買ってくれた。

カードデータどうしよう?


国旗王の「日本国」データ面。情報量が多い。

で、いちばんの懸案事項である国旗カードデータである。何しろ国連承認国+日本が国家承認している国だけで197もあるのである。もちろんすでに入稿締め切りまで2ヶ月を切っている。

私「とりあえず100国でいいんじゃない?」
グラフィックデザインとDTPを一手に引き受けるカドタ「作業量的にもその方がいい」
そう! HEY! メンバーでIllustratorを扱える人間はカドタ一人しかいないため、デザインからDTP、入稿までその全部の作業が負荷としてかかるのである!

私「ゲームバランス的に見ても100国より多いと全然知らない上に、見たこともない国旗だらけになるからよろしくない。初プレイした人の手札が🇲🇿🇹🇲🇱🇾🇪🇨🇺🇬とかだったら第一印象が最悪だ。100でも知らない国旗が5割なのに」
実際カドタとウナムの二人だけで作っていたら100国でリリースされていただろう。

ところがここにきて会議でメンバーからこんな意見が出る👇
フラット「絶対に197国にすべき」
トオル「100と197国なら1000円高くても多い方を買う」
私「100国版を1500円で出して、197国版を2500円とかは?」
 「混乱を招くだけだし、販売する側も大変」
私「ほな200カ国にするかあ…」

チームで制作するメリットはこんなところにもある。一人では気付けないところを気付けて、修正できる。そこがHEY!の強みである。もちろんその代わり一人でやるよりフットワークは多少重くなるし、ゲーム内容や販売方針をを決める会議が5時間にも及んだりもする。

私「……じゃ、カドタさん! カードのデータまとめ&レイアウト作成、よろしく!」
いいゲームを作ること=終盤の追い込みは苦行である。ここで手を抜くとつまらなくなるからね、仕方ないね。

「もうこの辺でええでしょう」でリリースしたら凡庸なゲームになる。
「もうこの辺でええやろ(疲れた)」となってから二、三回さらに追い込むとグッと良いゲームになるのである。👈HEY!のゲームはこうやって作られています。ただし心と体は疲弊する。

データなんかナンボあってもいいですからね

私「パラメータは多ければ多いほどいい。面積・人口・国名・正式国名・首都・緯度・経度はマストとして、GDP・領海・軍事費・その国の在日外国人数とかも入れたいよね〜」と軽率に言ったばかりに四苦八苦する羽目になる(そりゃそう)。

「外務省のデータ、バラバラで使いにくい……国連のデータ取ってくるにしてもPDFだったりする、どうしようか」

と困っていたところに私が発見した救世主がGLOBAL NOTEというサイトだった。
なんと面積や人口、GDPなどをExcelデータで吐き出してくれるというもの。すばら! やったぜ俺! よくぞ見つけた! しかも商用利用可!

あと「海抜高度(標高)や平均寿命、面白いかあ……?」と思ったけど、社会(地理・世界史)に興味がない人はGDPや一人当たりGDP、排他的経済水域よりその方が面白く感じるらしい。「GDPの割りに軍事費多いな、この国。隣国との関係悪そう」とかで察せるものがあって面白いのに……(笑)。と思いつつ、「まあ山の高さとか寿命とかほうが誰でもわかりやすいかな」と思って上級お題に入れ込んだ。

しかし、カードにデータ詰め込んだせいで上級お題はフォントサイズ5ptとかになってしまい、老眼に辛いゲームになりました(笑)でもデータなるべく入れたいもんね〜ボンビ〜♪

国旗データは海外の有料素材集でいいのをカドタが見つけてくれました。
「色とかがなるべく忠実だと思われる素材がこれだった。国連とかで使われる4:3版じゃなくてオリジナルの国旗の比率のデータだけど」
「その方が忠実ならそっちでいいんじゃない?」
しかしその国旗画像も一部「🇻🇳ベトナムの星、小さくない?」など誤っていることが発売後に判明するわけですが……

カードのレイアウトはデータをExcelで流し込んだら自動的に文字間調整とかしてくれるツールを、カドタがプログラムで作ったおかげで随分と自動化されました。手作業で200国分作業してたら間に合いませんでしたね。

200カ国分のカードデータ1ヶ月半で作ったよ


国旗王のExcelデータの一部。

というわけで国旗王のデータはカドタ&ウナムの実質二人でほぼ制作しました。
特にデータのExcel人力コピペ入力はウナムが作業したらグチャグチャになって収拾がつかなくなったのでカドタに一任することにw
国旗カードに関してはプログラムによる自動化も含めてカドタの功績である面が大きい。

いやー私一人だと半年経っても終わらないどころか諦めて投げ出してましたね(そもそもDTPできないし)。もしくは上級お題あきらめたか。いずれにせよ今よりクオリティは落ちていただろう。

タイトルは『国盗リック帝キング」(くにとりっく・ていきんぐ)で

タイトル候補は毎回ウナムが30以上出して他のメンバーが2,3個出す感じなのですが(もっと出してくれよ! と毎回思う)
個人的に「国を取る」「トリックテイキング」「キング=KING」「帝王(テイキング」と3重4重のトリプルミーニングになっている
『国盗り帝王(くにとりテイキング)』『国盗リック帝KING』あたりが面白い(ひとりで受けてた)と思ったのですが、HEY!会議でのメンバーの反応がだいぶ微妙でしてね……。

理由としては
「トリックテイキングという言葉で喜ぶ人間はマニア・ゲムマくらいのもの。このゲームはもっと幅広い層に売れるから自ら客を絞り込んでどうするのか」
俺「国盗りだと戦国時代っぽい?」
俺「ちょっとこねくり回しすぎててピンと来にくいな?」

じゃあ 『日本とドイツどっちが広い?』 はどうだ?

個人的に推していたタイトルはコレ!>『日本とドイツどっちが広い?』

日本は資源のない島国の小国だという自認をしがちな日本人に、
「ヨーロッパの国で日本より面積が大きな国はフランス🇫🇷スペイン🇪🇸スウェーデン🇸🇪ロシア🇷🇺ウクライナ🇺🇦のたった5カ国しかないんですね〜」という認識を揺さぶる問題ですよ!(オランダ海外領土のグリーンランド🇬🇱とかは除いた欧州のみの領土での計算)
これですよ!お兄さん!!

と割りと個人的にはノリノリだったけど、これまた思ったほどメンバーの反応が良くない。なんだよ! 俺以外のメンバーもタイトル案もっと出してくれよ!!

じゃあ「国盗り帝キング」のキングを残して
「国旗+キング」で「コッキング」はどうか? と「国旗王」とホワイトボードに書いたら
みんなが「あ、それいいじゃん」というすこぶる良い反応で。
脳直で思いつきを書いただけの私「え、これが?? マジで??」

私「えー……国旗王(コッキング)、ダサくない??」
私「ダサいからあんまり……」

私「コッキングだと"cock"(英語スラングでちんこの意味)で下ネタにならないかなあ?」という懸念(案の定、発売後2、3人から同じ指摘をされたが)。まあでもコッキングは普通、拳銃用語だよね。
カドタ「じゃあコッキングじゃなくて、ひらがなで『こっきんぐ』にしますか」
私(そんなんでええんか?)

など少し戸惑うも、ほぼメンバー全会一致で「国旗王<こっきんぐ>」に決定。村なあ……(まあ私も内心、これだけ言われるからにはコッキング一択だろうなとは思っていた)。
加えて
・Amazon検索対策で「国旗カード」をタイトルに入れよう
・個人的なお気に入りの「🇯🇵日本とドイツ🇩🇪どっちが広い」は絵文字を加えてサブタイトルに。
という処理に。

『国旗王<こっきんぐ> 国旗カードゲーム
 🇯🇵日本とドイツ🇩🇪どっちが広い?』
というクソ長タイトルの爆誕である。

タイトルはゲームの顔であり、最大の広告ですからね。
『マラケシュ』『カルカソンヌ』みたいな日本人は馴染みのない・意味のわからないカタカナ語のタイトルをつける向きがありますが、個人的には賛成できません。原題がそうなら仕方ないですが、日本人向けには日本語で、可能なら「名は体を表す」系のネーミングをすべきだ、というのが私の考えです。

何百部印刷する?

HEY!は過去に3作リリースしており
『ここで装備していくかい? 〜地下99階の商人たち〜』300部完売(ゲムマ2022秋200部完売)
『魔王様のお引越し』400部(ゲムマ2023春100部販売)・ゲームデザイン:ウナム
『ミュルマミウスの虜』300部(ゲムマ2023秋150部販売)
参考:
『富士山地下99階』ゲムマ2019大阪190部完売・追加で1000部生産・合計1200部・2024年に完売
という実績だった。
私・カドタ「なら無難に300部かなあ」
フラット・トオル「いやこれ売れますって。もっと行きましょう1000部とか」
私「ええ……?(困惑)」

実はこのときのウナムは処女作『魔王様のお引越し』(2000円)で
「ゲムマ特価3000円(小売価格3750円)だった『ここで装備していくかい?』が200個ゲムマで売れたんだから、2000円の魔王様のお引越しはゲムマで300個売れるはず」という理論で
「300+通販100=400部作りましょ!」と主張し、300個余るという小規模な失敗をしていたので1000部作ることに及び腰になっていたのだ! カワイイね!

まさしく「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」である。

しかし計算をしてみると化粧箱は300個生産でも1000個でもコストが変わらないどころか1000個生産した方が1個当たりのコストが上がってしまう(発注先の生産の都合でそうなるという)。
が、カードは300部から1000部生産で大きく印刷費が変わることが判明。
試算すると600部販売できれば400部のカード(9万枚分)を全破棄してもトントンどころかむしろお得だドン❗️ ということに気づいたので
私「じゃあカードだけ1000部印刷で……(箱はまとめて発注しても安くならないので300個ずつ発注しよう)」とおっかなびっくり決断する(笑)
結果的にこの判断は非常に正しかった(笑)ぐっじょぶトオルさん、フラットさん!

「国旗王はゲーマーにはそんなに売れんでしょ」

ゲーム機能のないフラッシュカード「国旗カード197」という商品が1ヶ月間100〜200個以上、カードを半分に減らした「国旗カード100」が50〜100個以上売れていることは、Amazonで確認済みだった。
もしその1/10でも売れたら毎月20個以上売れる計算である。ゲーム機能あるんだし流石に10個は売れるでしょ(雑な算段)(捕らぬ狸の皮算用である)。
万が一、ゲムマで100個しか売れず在庫を200抱えたとしても10ヶ月あれば売り切れる計算である。ゲムマで200個売れたゲームでも、ゲムマでの発売から半年以上経つとAmazonで半年で2,3個売れたらいい方である。毎月20個売れるのは相当ロングセラーである。素晴らしい!(繰り返すが、取らぬ狸の皮算用である)。

3月のボドゲエキスポ(BGBEJapan2024)以前はHEY!内の評価は
「ゲーマーにはそんなに売れないだろうけど、知育玩具的に売れる(確信)」という予想であった。

私「国旗王は中継ぎピッチャーだから(笑)」

ゲームデザイン担当した前作『魔王様のお引越し』が予想以上に売れなかった&国旗王はあくまで突貫の間に合わせで作ったものであり、時間稼ぎの繋ぎである。

ということをBGBEの前、私は何度も繰り返し言っていた。
今思うと的外れなことを言っていたわけであるが、しかしヒットとは得てして、そんなものである(思いもよらぬところからヒットが出る)、ということも理解はしている。

箱デザインの入稿〆切は?

2月15日のウナム「箱の入稿っていつですっけ?」とカドタさん、に聞こうとして二週間聞きそびれてたな……」
ウナム「箱の入稿っていつまでですか?」
カドタ「あ! 5日もない!」
ウナム「うぉい1? 今からロゴ制作と箱アートワークのグラフィックデザイン間に合いますか?!?」
カドタ「間に合わせます」
ウナム「国旗が舞い散る感じのアートでよろしく!」(以前渡していたラフデザイン)

国旗王 箱

カドタ「……国旗舞い散らせたかったけど時間的に無理だった」と突貫で出来上がったものがこちらになります。ものの三日程度で作ったデザインなのに(笑)かなり評判が良く、売り上げにかなり貢献した、と私見ですが思っています。私的にも気に入っています。

デザインおポイントは「教材でもおかしくないデザイン」ですね。「ボードゲームらしさ」は捨てました。
私の案では「王様が玉座に座っているイラストの周りに国旗が舞っている」というものだったが、「キャラクターっぽいものじゃ親が子に安心して買い与えないだろう」という点で、会議で却下されました🙄

富士山地下99階』がカドタさんの最初のゲームなのですが、当時同人ボードゲーム界で「すごいデザイン良いのが出てきた」と衝撃を持って受け止められた、とボードゲームパブリッシャーの代表の方が言っていました。
HEY!のグラフィックデザイン・DTPは『富士山地下99階』から『ABCダンジョン』『魔王様のお引越し』『ミュルマミウスの虜』とイラスト以外全てカドタがやっている。別にデザインを学んだわけではなく、WEBサイトの構築などをしているうちに身についたものだそうです。
いやーパッケージってホントに大事なんですね。ゲムマだけでも売れ行きが数十単位で増減すると思います。「ターゲットに訴求するデザインを心がける」、コレ。

国旗王 第一版 箱裏

プロモカードをつくろう!

私「やっぱり購入を迷っている人に最後の一押しできる会場特典が欲しいよね」
と「プロモーションカードを作るべき!」と強く主張。
私「というかソ連いいよね!」

国旗王 プロモカード 第1弾

ということで、ソビエト連邦・東ドイツ・大日本帝國・満洲國・プエルトリコ🇵🇷・香港🇭🇰・グリーンランド🇬🇱・沖縄の8カ国地域をプロモーションカードとして作成することを決定。その数2400枚だ!
少々きな臭い国が多いのは作者の茶目っ気である(笑)

キャッチコピーは「ソ連もらえる!!」
これがお客さんの結構ウケが良い(笑)
「ソ連は欲しい!」と買っていかれる・予約するお客様が十数人おられました。狙い通りw やったぜ

さらに会場限定でおまけの追加ルールもつけちゃう!(WEBから印刷できます

価格はイベント特別価格2000円

国旗カード200枚、お題カード24枚、世界地図、説明書がついてきてこの価格は破格である。Amazon価格は国旗カード197の実売価格1800円に対抗できるように2000円を予定していた。が、これは完全に見積もりミスであり、のちに思わぬ誤算を生む(②の「工場での生産コスト、予想外に膨らむ」の巻)。

ボドゲエキスポで予約とってるサークル無いわ(開催一週間前)

ボドゲエキスポ3/23(土)24(日)開催まで10日を切った3月13日ごろにWEB予約を開始した。
個人的に同人ゲームを買うのは楽しみで23年以降はゲムマのたびに30個は買っているのですが、Twitterを検索しても全然予約を受け付けているサークルがない! それどころかボドゲエキスポで新作を発売するサークルは赤瀬よぐさんくらいしか見つけられず(当時)、結局新作をボドゲエキスポ合わせしてきたのはHEY!を合わせてもどうやら3サークル程度でした。
第一回開催でみんな様子見だったんでしょうね(HEY! ほど前のめりだった団体はたぶん、他にない)。

ボドゲエキスポ2024、全然予約入らないね……(開催5日前)

ボドゲエキスポ3/23,24開催の一週間前
3/17にまで入った予約、なんと2。

「これはもうダメかもわからんね」
せっかく突貫作業でBGBEに頑張って間に合わせたのに……ショボーン(´・ω・`)

「ゲムマで売れるのはだいたい予約の3倍」の法則があるが、予約2では話にならぬ。企業出展ブーストを考慮しても「こりゃ50売れたら御の字か」と少々落ち込んでいたところ、予約に異変が。

3/19(火)予約1
20(水)5
21(木)8
22(金)12…開催前日
23(土)4…開催当日に予約!?
24(日)4…当日に予約

予約2だったものが、ものの4日間で予約29!?!?!?!? ウッソやろ!?

何か異変のようなものを感じていた。
「これはもしかすると……?」

迎えた ボドゲエキスポ当日の朝

カドタ「これはひょっとすると、ひょっとするかもしれない」

ボドゲエキスポまでに用意できた『国旗王』は在庫200。
「1日目は100持ち込めば十分」でしょう、という手筈であったが、持ち込む量を土壇場で国旗王120個に変更。これが結果的にファインプレー。

蓋を開けてみると、なんと土曜日だけで120個を完売してしまう有様(忙しすぎて目を白黒させる私)。

いくら企業ブースで動線的にも恵まれていたとはいえ、売り切れとは。
誰だ……? 「国旗王は、即売会では売れないだろう」とか言ってたのは??(HEY!の全員です)

翌、日曜は2時間程度残して、残りの80個全部売れてしまいました。
「商品さえあれば、あと50個は売れたな……」とカドタが言っていたが、流石にこれは予想できない。

ボドゲエキスポ2024来客数は5100名程度という話だったが、実際はもう数百名多かったらしく(?)サークル参加者はカウントしていないとか?
来場者2万5000人のゲームマーケット2023秋でも『ミュルマミウスの虜』は150個、
2023春『魔王様のお引越し』は100個、
2022秋『ここで装備していくかい?』は200個完売だったわけで……。
まさかその5分の1の来場者のボドゲエキスポで200個売れるなんてお釈迦様でも思うまいよ。

おそらくBGBEで、企業含めても最もボードゲームを売った団体の一つだったと思われます✌️

ボドゲエキスポの勝因

自分なりに色々分析してみたのだが……様々な幸運が重なったというのが真相だろう。個別に分析すると

①ライバル不在…みんな様子見で新作を作っているサークルが片手で数えられる程度。

②企業出展ブース
『国旗王』はボードゲーマー層ではなく、普段ボードゲームをあまりしない層へのリーチが強い。これは通常のサークル出展だと埋もれていた危険性が高いことを表している。
しかし、企業出展22万円に申し込んだとき、国旗王は影も形もなかったし、BGBEがなければ国旗王は作られたなかったので完全に結果オーライ。嬉しい誤算。奇跡的に歯車が噛み合った結果である。

②「ビジネスエキスポ」ということでBGBEは、「商談をする場」であることが強調されていた。そのため、隣の企業ブースのホビージャパンさんが「海外や同人ゲームの持ち込み」という面接対応しかしておらず、ゲームを販売してなかった。「ゲーム持ち込み看板も出してないもんだから、事情を知らない一般客は「ホビージャパン、何してるの?」と訝しんでいた。しかし、隣のHEY! は相対的に目立っていた。本来ホビージャパンブースに流れたであろうお客さんが相当数うちに流れたはずである。これまたラッキーとしか言いようがない

③デザインの普遍性
知育・教育も睨んだ箱デザインが良かった。カドタが5日で突貫で作ったとは思えない(褒め言葉)。時間がないからできることだけに絞り込んだのが逆に良かったのかもしれない。
「国旗カード200以上収録!」という帯風煽り文句も「普通ならダサいからやらない」とカドタは言っていた。
「売れるもののデザインは洗練させすぎるとダメで多少ダサいくらいがちょうどいい」(本当にダサいものはダメだが)とは言われるが、ちょうど良いところを狙ったらピッタリハマったと言える

④ 200カ国に増やしたお得感。世界地図もついて2000円!
とあるベテラン同人ボードゲーム制作者は「200枚で2000円、一体どんなマジックを……?🧐」と言っていたのが印象的だった。実際2000円は安くしすぎた。
カドタ「2500円でも売れたね…」

⑤試遊をひたすらぶん回した当日のみんなの頑張り。挨拶回り営業活動で私が抜けまくったのに最大6人でよく回せたね……。5人試遊してくれたら1人は買うくらいのペースで売れるのである。
BGBEやゲムマの試遊を見ていると普段ゲームをあまりやらなそうな人たちが、素直に盛り上がってくれることが多く、善いゲームであることが実感できて、我々にとっても良かった。
このゲームを作って良かった、と心から思います。


BGBEでの宣伝カット。2200円でイケると思っていた名残。


⑥そして何より国旗王の商品力
1回目からわかるおもしろさ。1分でインストがわかるルールの簡単さ。
普段ゲームをやらない作者の母75歳でも、6歳児でも理解できるシンプルなゲームシステム。
それでいて「しゃがみ」や計画性が求められるゲーム性、駆け引き(ここはトリテ由来だろう)。
何より、国旗の華やかさ。
そして国旗に対する国名の推測+国がわかったとしても人口面積GDPといった推定が必要になる、「二重の推測」が求められる独特のゲーム性。

このゲームの魅力は作った本人(ウナム&カドタ)でも当初すべては気づけていなかった。作者でも理解に時間がかかるほど奥が深いゲームと言えるだろう。


ーーと全ての歯車が偶然にもうまく噛み合った結果、
国旗王は【200個完売】し、ボドゲエキスポ(BGBE Japan)は大成功に終わったのであった!!!!!

しかしここから本当の困難が始まるとは誰も知る由もなかったーー

つづきは

 「#国旗王<こっきんぐ>ができるまで」と「できたあと」②

でお会いしましょう〜!🙋‍♀️


 国旗王 Amazon通販(毎月150個以上売れています‼️)

 あとがき
13800文字を超える長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
1つに収まりませんでした。そもそも長すぎるのでこの記事すらも分割すべきでしたね。反省。
情報を取捨選択せず、羅列気味・詰め込みすぎなのはわかっていますが、なにぶん書きたいことが多すぎて、全部詰め込んだらこうなりました(笑)。次回からは構成に気をつけます。

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