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『獣の奏者』ダミヤは本当に「権勢欲の強い」人物なのか。

『獣の奏者』ダミヤは本当に「権勢欲の強い」人物なのか。

宇宮7号です。普段は絵を描いたり、世界史の解説動画を作ったりしています。上橋菜穂子ファンです。

今日は『獣の奏者』に出てくる王族ダミヤの話をします。
ダミヤは真王ハルミヤの甥です。30近いのに妻帯せず、たくさんの女性と浮き名を流す、女好きの王族として描かれます。

冒頭からネタバレしますが、
『闘蛇編』『王獣編』で国を揺るがす事件の多くは彼が画策したものであり、真王謀殺の黒幕でもあります。それに

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守り人シリーズ外伝短編「浮き籾」という言葉の鋭利さについて

守り人シリーズ外伝短編「浮き籾」という言葉の鋭利さについて

宇宮7号です。普段は絵を描いたり、世界史の解説動画を作ったりしています。上橋菜穂子ファンです。

今回は、短編集『流れ行く者』収録の「浮き籾」の話をします。
「浮き籾」は、幼少期のタンダ視点で描かれた物語です。
文中の端々に、タンダの生きづらさみたいなものが垣間見えて、何度読んでも苦しくなります。折にふれ色々思うところをSNSに叫んだりしていたのですが、ちょっとそれでは我慢ならなくなったので、ここ

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『獣の奏者』外伝「秘め事」:子を残さない命を肯定すること

『獣の奏者』外伝「秘め事」:子を残さない命を肯定すること

宇宮7号です。普段は絵を描いたり世界史の解説動画を作ったりしています。上橋菜穂子ファンです。

今回は『獣の奏者外伝 刹那』の話です。

『獣の奏者』は4冊完結ですので、そこまでは皆さん読まれるのですが、その後『外伝 刹那』までは手を出さずにやめられる方が多いようで、なんと勿体無いことかと衝撃を受けたので、ここにて魅力を力説しようと思います。

特に今回は「秘め事」という中編を語ります。
なぜかと

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『精霊の守り人』〜『夢の守り人』のテーマ考察

『精霊の守り人』〜『夢の守り人』のテーマ考察

宇宮7号と言います。普段は世界史の絵や動画を作っています。上橋菜穂子ファンです。

最近『守り人』シリーズが次々audible化しているので、繰り返し聴いているのですが、『精霊の守り人』『闇の守り人』『夢の守り人』まで聴いて、幼少期には気づかなかったテーマの流れがあるのに気付いたので記録します。

結論というか言いたいことを先に言います。
「いや、『夢の守り人』は読むべきだわ」

※以下
『精霊の

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ラフラ〈賭事師〉のアズノについて考える

ラフラ〈賭事師〉のアズノについて考える

こんにちは。宇宮7号といいます。

絵を描いたり世界史の動画を作ったりしている人間です。上橋菜穂子ファンです。

私は上橋菜穂子(敬称略)が書く世界や人間は総じて好きなのですが、誰が印象に残ってますかと言われると間違いなくラフラ〈賭事師〉のアズノという老女をあげます。同じ人は多いと思います(偏見)。

番外短編での一回きりの登場(存在は本編にて示唆)にも関わらず、その立場の頼りなさを象徴するような

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