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百花-Book

川村元気という作家は、多才な方だ
私が言うまでもなく、誰もがそのエンターテイメントぶりを知っている

これまで興味を持って読んだのはこの3冊

①「億男」
ある日3億円を手にした男の生き様・葛藤

②「世界から猫が消えたなら」
余命一週間の延命と引き換えに、世の中のあらゆるものを消してしまえたら

③「四月になれば彼女は」
結婚を決めた主人公の元に、はじめて付き合った彼女から手紙がとどく


川村元気とは何者!?

小説より先に
電車男をはじめ数々のヒット映画のほうを知っている方が多いのでは

そうテレビを見ず、名作の英才教育を経てデビューした才能は
プロデューサーとして見事に開花した
その川村だが、作家としても非凡な才能を持っている

現代では本音を出さず、感情をコントロールして生きるほうが容易い
川村は小説という手法で、
この根底に潜む掴みどころのないものをあぶり出す

百花 / 川村元気

百花の中身


↓以下ネタバレご用心

ピアノ教師を生業とし、母親として一人で、主人公であるを育てた百合子

物語では、一輪挿しの花が季節感の色を与え、過去の回想とのモチーフにもなっている

シングルマザーとして気張って生きてきた百合子

個としての自分の存在をどこかで問うてきたからこその突然のランナウェイ

24年公開された「山逢いのホテルで」と同様の葛藤がここに描かれる

その空白の時をなかったことにして生きてきた二人
どこか冷めた、でも切実に愛を求め合う関係性は歪で、もどかしく愛おしい

誰にでもある邂逅「半分の花火」を見つけられたら
その人の生に、穏やかな光があたるのではないでしょうか

生きる上で、真に大切なものって何か
過去読んだ川村の作品に通底するテーマだと感じます

それがあるから、川村は多くの読者の共感を得るのでしょう

認知症、歪んだ愛情、生きる意味を問うような出来事
現代を取り巻く題材が随所に散りばめられています

私の描くものに、その核となる何かがあるのか
読後のいま、ゆっくり考えてみることにします

海光哲でした

俳号:酒上乃不埒
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海光 哲 / tetsu kaiko
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