永田豊隆「妻はサバイバー」を読みました。

永田豊隆/妻はサバイバー
を読みました。
Yahoo!ノンフィクション大賞ノミネート。
しかしそれで知らなかったら恐らく手に取らなかったであろう本。
装丁、文字数共に、芥川賞作品にそっくりでサラっと読める。
しかし、ここ数年読んだどの芥川賞作品よりも凄かった。

まあとにかく凄まじい。

著者は朝日新聞の記者である。
著者の妻は、
摂食障害→アルコール中毒→認知症
という障害を変遷していくが、
その他、肉体的な病気やけがは枚挙にいとまがない。

本書は全体的にスゴイが、
第5章が一番興味深かった。
物理障害者に対する社会の壁。
バリアフリーと言われながら、まだまだ車椅子の人には暮らしにくい社会だ。
これは私の身の回りの環境を見ても感じる。
ちょっとした階段は、全然なくならない。
また精神障害者に対する差別感情の項目と、
精神医療の歴史の項目は、
ページ数は少ないが、改めて非常に考えさせられた。
「私宅監置」(つまり座敷牢に閉じ込める)は、
戦前を舞台にした作品にはたまに出てくるのでそれを思い出したし、
「措置入院」(つまり強制的に入院させて治療よりも隔離を目的とする)は、子供の頃、「悪いことをすると精神病院に入れるよ(「入れられるよ」ではなく「入れるよ」)」と近所の大人から脅かされたのを思い出した。あの恐怖は今でもトラウマである。

著者の奥さんの過酷な過去(トラウマ)が、鍵だと思うのだが、
その部分は、「虐待」「性被害」とだけ書かれており、
それ以上突っ込んだ記述はなかったので気になった。
読者はその辺りを知りたいのである。
その部分(つまりここまでの問題となった原因)こそ、
ガッツリ書いて欲しかったけど、まあでも、
夫である当事者として、さすがにそこまでは書けなかったんだろうなあ。
と思いながら、著者自身もマスコミの一員なら、頑張って欲しかったというのは酷だろうか。
それを思わされるくらいの悲惨さ、過酷さ、凄まじさが本書にはあった。

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