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コロナ下だって腹は減る 『あんぱん ジャムパン クリームパン』

帰り道、ローソンで牛乳を買う。お釣りもらって、カウンターを見たらむきだしの1.5リットルパック。袋もらうの忘れた。あーあと思いながら、冷たい牛乳パックを左手にぶらさげて帰った。

いつからだっけ、あれだけ惜しげもなく使われてたレジ袋、言わないともらえなくなったのって。もう2ヵ月半も経つのか。その頃には、もうコンビニのレジにはビニールの幕が貼られてて、マスクしないとお店入りづらくて。

けどもう数ヶ月もしたら、レジ袋もらえないっていう違和感さえも消えていくのだろう。だからとりあえずここに書いておく。


まえもチラッと紹介した『あんぱん ジャムパン クリームパン』を読む。3人の文筆家が、2020年4月末から6月にかけてかわした「交換日記」の書籍化。最終回だけこちらで読める。

ここには、ニュースサイトにのるような事柄はぜんぜん語られていなくて、大好きな焼きそばのレシピとか、15年ぶりにパンケーキとか、家の玄関先でアウトドア飯を食べる夫婦の様子とか…そんな日常ばかり。

歴史って、事件とか法律とか総理大臣の名前とかじゃなくて、ほんとはこういう人々の生活のかたまりなんだよなあとつくづく思う。

このなかでとくに胸打たれたのは、青山ゆみこさんが愛猫を看取ったことだ。4月29日の手紙では日向ぼっこしていた猫が、6月9日の手紙では亡くなったと報告される。猫のシャーちゃんがだんだんとエサも水も受け付けなくなったころから「コロナとかまったくどうでもよくなってしまっ」たと書いてある。
この言葉が本のかたちで残って、とてもよかったと思う。

だからね、よけいに意地になってわたしはSNSで愛猫への思いを書き続けました。社会を揺るがす大きなニュースだけがわたしに重要なのではない。社会全体から見ればちっぽけなことかもしれないけれど、その小さな個人の想いが社会そのものなのだ。こんなことも呟けない社会は、ウイルスなんていなくても生きづらいよ。
(あんぱん 2020.6.8 神戸・元町 17小さきものの呟き、p.132)

映画『この世界の片隅に』を思い出した。あの映画の衝撃って、戦時中も戦争一色だったわけじゃないんだ、恋愛もある、生活の楽しみもあるし、塗り残されたカラフルな部分があったことを知った驚きだった。たぶん2020年前半も、もうすこししたらコロナ一色で塗りつぶされる。でもそこには猫と時間を過ごしたり、玄関でトルコチャイを飲んだりするっていうふつうの生活があったこと。この本読むとそれを思い出せる。

うめざわ
*私にとっての2020年春も、喪の時期だった。お見舞いに葬儀に四十九日に、後ろ指さされるんじゃないかとびくびくしながら大阪東京の往復。3列・3列の小さな飛行機で羽田へ飛んだのは4月だったか。

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