
一日一頁:小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』講談社、2021年。
一気に読み終えた。もう少し早く紐解くべきだった。自分の人生を変える導きの一冊である。
時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。
本書は、キャロル・ギリガンが初めて提唱し、それを受け継いで、政治学、社会学、倫理学、臨床医学の研究者たちが数十年にわたって擁護してきた「ケアの倫理」について文学研究者の立場から考察するという試みである。ケアの概念は、海外では少しずつ広まっており、フランスでは政治の現場でも議論されるまでになっている。そう考えると日本社会ではまだまだ浸透しているとは言えないだろう。ケアが政治言説として鍛え上げられるまでには、この概念が人口に膾炙することが必要なのではないかと思う。そのためには、これまで語られてきた弱者の物語を共有することが重要なプロセスなのではないだろうか。そのさまざまな”語り“を解読する鍵として「ケアの倫理」はなくてはならないものであるというのが筆者の考えである。
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