恋の終わり。10万円握りしめ、1日で使い切った日のはなし
あの日の私は若かった
20代後半にさしかかり、
女性として”結婚”を考えつつあったあの日。
大学時代から付き合い続けていた彼氏とは、
かれこれ6年の時を共に過ごしてきた。
1つ上の学年だった彼は地元に残り、
その1年後、私は上京。
社会人のスタートと共に遠距離恋愛がはじまった。
社会人×遠距離恋愛 の日々は、
それなりに充実していた。
当時はウィルコムの無料通話で毎晩電話をし、
月に2回は通いあい、お互いに空気のような存在で
いて当たり前。
言わずとも相手の何かを感じられる
そういう関係性だった。
相手の何かを感じられる
あたかも家族のような関係性だった。
が、
社会人経験を積み続ける中で、あるときから
”何かの感覚”
に、ズレを感じるようになっていった。
分かりあえない瞬間が来た
お互いがお互いを思いやるあまり、言葉をオブラートに包む。
お互いがお互いを牽制するあまり、自分を卑下しはじめる。
そのときは静かにやってきた。
うまく行っていたと思っていたのに。
別にこれといって彼の嫌いなところなど見当たらないのに。
とたんに、気持ちがかみ合わなくなり、
1度掛け違えたボタンを元に戻すことは困難になる。
「そうだね、距離を置こう。」
自分でもよく分からない状態になってしまった。
きっと相手もよく分からなかったはずだ。
むしゃくしゃした気持ち
誰にぶつけられるわけでもなく
分かってもらえないことも
相手のことが分からないことも
全てにムシャクシャした。
文字通り、ムシャクシャした気持ち、だった。
この気持ちをどうしたらいいのか分からない。
どうやって打ち消せばいいのか分からない。
若かった私は、普段派手なお金遣いもしないクセに
「そうだ、買い物でストレスを発散しよう」
と真剣に考えた。
現金10万円を引き落とす
「カード決済じゃだめだ。現金を使って、お金を使った感を高めよう。」
そんな単純な思考だったと思う。
10万円を握りしめ(現実には財布にいれ)銀座に繰り出した。
今ならもっと色んな使い方を考えられるが、
当時はなぜか買い物だった。
洋服を買い
ブーツを買い
本を買い
高級なケーキを買った。
これまで欲しいと思っていたものを
軒並み揃えていってみた。
あの店、この店で買うたびにショップの袋が増えていき
店員さんの接客にも熱が入る。
そうやって、たくさんのお店を巡りつづけた。
10万円で得たもの
だがしかし…、
である。
10万円て、使い切ろうとすると意外と難しい。
そもそもブランド物など必要性を感じない自分は
服をかってもせいぜい4,5万。
ブーツ買っても2万。
本買っても1万。
…あとは何が必要?
うーん、分からないけど、ipad買ってみよう。
とipadを契約して、やっとこ10万を使い切った。
「お金を使うって疲れる・・」
結局残ったものは、疲労感だった。
たしかに、家に帰って【今日買ったものたち!】を並べたときの
(おおー!やったぜ!)という歓喜はある。
でもやっぱりどこか、空しい。
10万円を使い切って欲しいものを得たのに、
むしゃくしゃした気持ちは解消されず
虚無感と、満たされない心だけが残るなんて。
お金で自分は満たせない
「お金や物で、心を満たすことはできないんだ。」
これが結論。
当時の彼、そして10万円の買い物で得た学びだった。
結局、自分の心は自分の力で
メンテナンスをしてあげなければならない。
誰かがメンテナンスしてくれたり、
自分に都合よく手っ取り早くメンテナンスできる方法が
あるわけではない。
あの日から、
【ストレス解消の買い物など必要ない】
というのが、私の人生ポリシー。