火葬場ではヒトのかたちは出てこない
この年(22の代)では絶対に話せないテーマ尚且つ自分の中で時々思い出しては謎に満ちているあの場面について
父が亡くなってから次で6年、今でも時々あの火葬場での待合室にいる私に会いに行くことがある
といっても覚えていることの方が少なくて記憶が途切れ途切れである
覚えていることは、棺に父のよく来ていたスウェットを入れたことと何枚も綴った手紙を入れたことと、いつも掛けていたサングラスはプラスチック製なので一緒には入れられませんと言われたことだ
よくお金はあの世には持っていけないと聞くものだが、それ以外にも多いじゃないかとなんかショックを受けた記憶がある
次の記憶にうつると火葬されにいく父に対して、思ったよりも情けない姿で「待って!!!お父さんを燃やさないで!!!」と言えなかった自分が出てくる
ドラマにあるようなそういう御涙頂戴演技でよく見るやつは実際になるとすごく恥ずかしくてなんか出来なかった、そして近くに別のこれから灰になっていく方とその家族もいて余計に出来ない状況だった
あれはフィクションの世界だけが出来得ることなのかもしれない
また次の記憶は火葬され終えた父と対面する場面である、これがとにかく謎に満ちていてなぜかヒトのかたちをして出てこなかったのだ
正直ホラーマンみたいなのが出てくると思っていた、無知とは恐ろしいがそんなの事前に調べておくものでもないそして今になってもそれがなぜだか調べる気には到底ならない
結局ヒトのかたちで出てくると怖いからちょっと崩して分からなくしてくれている火葬場のスタッフの粋な計らいだと勝手に結論付けている
またまた次の記憶はそのホラーマンのかけらたちをあつめてこれはどこどこの骨ですよ、、と職員さんが説明してくれたあの場面に移動する
こんなの適当言ってもこっちは分からないですよ、とか思いつつこれが正真正銘の父であると確信したのはペースメーカーの1部(コイルみたいなもの)が出てきたからだった
もちろんスタッフはそんなこと梅雨知らずで一通りの骨を説明したあとかけらたちと一緒にその1部をちりとりのようなやつで掃こうとしたことが鮮明に思い出される
私と母はそれを止めて、骨たちと一緒に持ち帰らさせてもらうことにした
多分あの場面が1番感情を露わにしたかもしれない
と、ここで火葬した日の記憶はストップしている
ね、こんなの誰にも言えないでしょう
だからここに書きたかったあの日の出来事が本当にあったことさえも記憶から消去される前に
父は母と出逢ってからまもなくいつか死ぬ時灰ではなく愛を残すと言っていたようだ
だから私は自分の体験をここに残す