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【ポンポコ製菓顛末記】 #13 社員に厳しくも優しい
昭和のサラリーマンというと、何といっても営業だろう。そのノリは所謂、体育会系だ。昨今は日大事件などで体育会系風土は悪の根源のようなイメージだが、本来は「厳しくも優しい」父親の愛だ。当社にも生粋の営業トップ、営業パターンがあった。
アッ、お前、今、嫌がったな!
ポンポコ製菓のW営業本部長は売上必達が信条。当社の営業組織は各地に支店があり、ブロックで束ねる統括支店という上位組織がある。毎夕、全国の統括支店長にW営業本部長はガラケー(スマホでない)で電話し、「今日の売上どうだ?」と確認していた。
とある統括支店長がある日予算未達だったので一瞬口ごもった。すかさず理由を聞く営業本部長。そこで返事が曖昧だったので、本部長はすかさず、「なんだ、よくわからないな。よし、明日確認に行く」とカマをかけた。
まずい!と思った統括支店長は「そんな、わざわざいらしていただかなくても」とやんわり断った。
すると本部長は「アッ、お前、今、嫌がったな!!絶対明日朝いちばんで行く!!」といって、本当に翌朝一番で、激を飛ばしに旅立った。
W営業本部長の部下指導は厳しい。ある統括支店の営業会議に私も同席した。
まず W営業本部長が各支店長の成績を評価する。予算未達の支店長はこっぴどく叱られる。すると真冬の会議室の窓を全開にして「出来ないやつは飛び降りろ!!人件費が減って会社に貢献するわ!!」と怒鳴る。支店長の頭がガクッと下がる。
次に本社の営業部長が足を開いてホワイトボードをたたきながら、販促費の使い過ぎをビシバシ説明する。そこで、皆、またガクッと頭が下がる。
最後に統括支店長が傘下の支店長に檄を飛ばす。とどめのガクッである。
まさしく叱咤の3段論法。会議場にシーンッと重苦しい空気がよどむ。
しかし会議後は必ず慰労会を行う。そこでW営業本部長は支店長一人一人肩を組んで、「がんばれや!」と激励する。
私は全国の支店長からW営業本部長の悪口を聞いたことがなかった。まさしく昭和の営業の親分で、皆から慕われていた。
今、こんなことをしたら完全にアウトである。実際、先日某財閥系企業で同様なことが起こり、パワハラと受けとめた社員が自殺して訴訟問題となった。
相談役がかつて長く社長を務めていたころ、毎年期末に年間売上トップ、ワースト・ファイブ支店長を本社に呼んで、表彰と激励の食事会を行っていた。
トップ5は豪華な中華コース、ワーストは隣のテーブルでラーメンだけ。その悲哀をまざまざと見せつけられた。
これも今、やったら差別、パワハラかもしれない。しかし、必ず社長はワースト支店長を励まし、「来年はこちらのコースを食べましょう」と励ました。当事者たちもゲーム感覚でけっこう楽しんでいた。
部下から慕われる上司
昭和の営業はどこの企業も厳しいものだった。それでも名経営者、名営業トップは部下から慕われる上司という話をよくきく。
昨今のパワハラとどこが違うのだろう。
それは部下を思いやる気持ちを持っているか、否かだと思う。言うべき時には勇気を持って言い、叱るべき時には叱る、但し人間的な優しさを失わず、フォローを欠かさないことだろう。それが相手(部下)に通じるか否かは、相手の受け止め方にもより、なかなか難しいものだが、上司は常にそう心得て行動することが大切だ。
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ただ、部下を思いやる心が自分や会社のためという邪念が入るとおかしなことになる。
やりすぎの部下思いの例をご紹介する。
昭和の営業と言えば広告会社の営業が代表格だが、その営業部長の話だ。
ポンポコ製菓は昔から大手広告会社のコンコン広告社と取引があった。私は広告部の経験もあったのでコンコン広告社の営業とも親しくしていた。
広告部から経営戦略部に異動して、久しぶりに広告部に戻った時に担当営業部長と挨拶をかねて雑談した。昔なじみのM部長の現況を尋ねると担当部長の顔色が悪い。私は冗談で「痴漢でもして捕まったんですか?ハハハ」と笑いながらきいた。
すると当の部長は「そうなんです。ご存じでしたか?」と答えた。私は「え~っ!!」とビックリして、ことの顛末をきいた。
真相はこうだった。
M部長はダンディーだったので、社内外で女性にはもてていた。にもかかわらず、自宅近くの朝の通勤電車内でなんと!痴漢行為に及んでしまい、所轄警察に連行された。会社には当然ながら出社できない。無断欠勤を不信に思った会社は奥方に問い合わせた。奥方もいつまでたっても連絡がないため心配となり所轄署に行方不明届を出した。
すると警察官は「あ~、ウチにいますよ」と奥方に答えた。
奥方は安心するも、問い合わせた警察署につかまっているとはさぞや面食らったであろう。
しかも痴漢で・・・ 事件はマスコミに報道されてしまった。当の広告会社はトップ企業であったため社名も実名報道されてしまった。
これには続きがある。
酔っぱらってこの類で捕まる事件はよくあるのだが、たいがい諭旨解雇か自主退社となる。ところがこの会社は部下に優しいというか、何というか、たいしたお咎めもなく、M部長もそのまま働いていた。
私は後日、当の広告会社を訪問した時に、M部長にバッタリ会った。私は全て顛末を聞いていたが、おくびにも出さず、普通に「ご無沙汰しています」と挨拶した(学校の先輩でもあったので)。
するとM部長は「おうっ、元気か!!今、お得意を待たせていて、忙しいんだ、またな!」と全く悪びれるさまもなく去っていった。社内でもなんとなく噂になっているらしいのだが、当人が反省や申し訳ないというそぶりを全く見せないものだから、誰も気付かないらしい。
肝っ玉がすわっていると言えば、そうなのだが、これはさすがにやりすぎだろう。
会社も当人も。
ただ冷静に考えると、さもありなんと私は思う。世間では某トップ広告会社のオリンピックやデジタル化での贈収賄や癒着で騒いでいるが、昔の実情を知っている私から見ると当たり前に思える。
何故ならばどの広告会社も上場して今でこそそれなりに振る舞っているが、上場前は・・・・・・である。彼らにとってはそんなのは普通の感覚、意識だと思う。
要するに合法的に一流企業となっても血筋は争えない。
上場前から長年付き合ってきた私は肌で感じてきた。昭和感覚の権化のような彼らの話をこれからおいおいご紹介していこうと思う。
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