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#164 「今日の注目記事タイトル写経」に挑んだら、新しい趣味ができた話


noteで読まれるために、最初に力を入れるべきところ。それは、タイトルである。

さて、どうやってタイトルを考えようか。


そうだ!今日の注目記事のタイトルを写経してみよう。たしか、noteには四季報を写経していた人もいたはずだ。


早速、ノートを買わなければ…と思ったが、東京の夜はとても寒い。しかし、ここで躊躇するようでは、「明日から痩せよう」と言っていつまでも痩せないおっさんも同然だ。

いそいそとホテルの館内着の上にジャージを羽織り、おかしな襟が鎖骨あたりからはみ出したまま、足早に青色のコンビニへ向かう。

ここにはなぜか無印良品の棚がある。薄いビニール袋に入れられたリングノートを見つけた。失敗したときに破りやすいし、どのページも机にピッタリと寝かせることができる。きっと書きやすいだろう。

ホテルに戻った俺は、鞄からおもむろにパイロットフリクションペンを取り出し、壁際に備え付けてある狭い机に向かった。白い壁を見つめながらペンを回し続けている中年の男はつぶやく。


いきなり全部書くのは、だるいな。


わざわざ苦行のようなことはしたくない。せっかくだから、気に入ったタイトルを片っ端から書くことに決めた。「こんな夜に何やってんだ…」といきなり負けそうになったが、いざ書き始めるとスイスイ進むではないか。書くのが楽しくなってきた。さすがはnote編集部お墨付き「今日の注目記事」である。


* * *


気がつくと、10分が経過していた。

これは、イケるかもしれないぞ…‼︎

一心不乱に書いていく。

作者には申し訳ないが、タイトルしか見ておらず、中身までは読んでいない。しかし、この実験的試みに協力してくれた感謝の意を込めてハートマークを押す。リズミカルなバイブ音が、机にこだまする。


よーし、いいぞ、いいかもぞ‼︎










ここで突然、手が止まった。


あれ、なんだこれ。

てにおはがおかしい変なタイトルに出会った。
なんで、こんなタイトルで選ばれるんだ??

何度も読み返す。



むむっ!!これは…!!!!

謎のタイトルは、一番右下の記事



想像が確信に変わる境目。


アボカドのサラダ作ってあげることもうないだろうレシピ聞かれる

引用:俵万智「アボカドの種」|
角川文化振興財団(2023)
※石井しいさんの記事より引用


短歌やった!!!!


俺が驚いたのは、
"タイトルが短歌だったこと"だけではない。


短歌って、書くとこんなにもキモチイイんや‼︎‼︎


ということである。

このタイトルに差し掛かったとき、変な興奮を覚えたのだ。これは、断じて、他の記事のタイトルが良くなかった、好きじゃなかったという話ではない。

俺の中の何かが、喜んでいた。
いや違う。叫んでいたのだ‼︎


ただちに、検証することにした。

許してくれ。
これは研究者としての性なのだ…


石井しいさんは「短歌たべてる」人らしい。勢いづいた俺は、あっという間に記事を読んだ。その考察がすごかった!!短歌に対する想いというのは、それぞれ違って、新たな視点があり、自分が感じたものとの違いが新鮮だった。



その上で、書いてみたのである。

作品名を書き忘れてしまいました💦
※千葉聡さんの短歌に誤字がありました
誤:真世中
正:真夜中
申し訳ございませんでした


これはやはり、キモチイイ……‼︎‼︎

もしや、もともと知っていた短歌を書いても同じことが起きるのか?



再び、書き始める。

上坂あゆみさんのポッドキャスト
「私より先に丁寧に暮らすな」で紹介されていた
鳥手羽先の短歌の意味が怖い…


開票と同時に当確!!
これは、新たな趣味の発見である

この時点で「タイトル写経がどうのこうの…」というのは頭から消え去り、noteやネットで短歌を検索しては、ひたすら書くという謎の行為に没頭した。


* * *


ふと時計を見た。

あかん!!
12時になる!!

書き始めてから少なくとも2時間は経っているだろう。シラフでありながらも時間の感覚を失ってしまったときの心地良さを思い出した。


冷静になったおれは、何ページも書き上げたノートを最初のページから読み返す。本物の歌人たちの短歌だから、読めば読むほど深みが出てくる。これは自分だけのオリジナル短歌集だ。ここに集まった短歌から厳選したものを、もっとおしゃれな手帳に書き写そう。革の手帳がいいだろうか。まだ使ったことないけど、万年筆で書いてみようか。


あぁ…満たされる。
この感情はナンダ。
久しぶりのこの感情。
うまく言葉にできないけど、胸が熱い。
みぞおちあたりがドキドキするのだ。

疲れが吹き飛ぶという感覚もないまま、知らず知らずのうちに洗われていくような感覚。


まさか、この歳になって新しい趣味ができるとは。完全に棚ボタである。なんでもやってみるもんだ。躊躇してたらもったいない。やらなければ一生気づかなかった。ちゃんとやった俺、すごいぞ!この趣味は、自分の中で勝手に「短歌収集」と名付けることにした。




石井しいさん、はじめまして。
突然のご挨拶となりますが、お礼をお伝えしたいです。

俵万智は、これまでの私にとって国語の教科書のなかの偉人でしたが、今回このようなかたちで目の前に現れて、急に立体的になりました。

そして、あなたの書いてくれたnoteのおかげで、新しい趣味ができました。多分、結構長く楽しめると思っています。感謝です。ありがとうございます。

短歌って、いいですね!

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