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2024年の主な文学賞、受賞作品を紹介

2024年に有名な文学賞を受賞した作品、著者や著者の他の作品をまとめて紹介しようと思います!*随時更新よていです!



松本清張賞 「イッツ・ダ・ボム」井上先斗

文藝春秋 (2024/9/10)

内容紹介

森見登美彦さんが「もはやズルい」と、
米澤穂信さんが「夜の光を放つ、ささやかで切実な犯罪小説――圧倒的だった」と激賞した鮮烈なデビュー作!

◆◆◆

グラフィティ graffiti
おもにエアゾールスプレーやマーカーを用いて街に書かれた名前や絵柄。

ボム bomb
街にグラフィティを書いたり、ステッカーを貼ったりする行為。またはその痕跡。特に違法に行われるものを指す。

◆◆◆

STORY

「日本のバンクシー」と耳目を集めるグラフィティライター界の新鋭・ブラックロータス。公共物を破壊しないスマートな手法で鮮やかにメッセージを伝えるこの人物の正体、そして真の思惑とは。うだつの上がらぬウェブライターは衝撃の事実に辿り着く。(第一部 オン・ザ・ストリート)

20年近くストリートに立っているグラフィティライター・TEEL(テエル)。ある晩、HEDと名乗る青年と出会う。彼はイカしたステッカーを街中にボムっていた。馬が合った二人はともに夜の街に出るようになる。しかし、HEDは驚愕の〝宣戦布告〟をTEELに突き付ける。(第二部 イッツ・ダ・ボム)

「俺はここにいるぞ」と叫ぶ声が響く、いま一番クールでアツい小説!

著者紹介

井上先斗(いのうえ・さきと)
1994年愛知県生まれ、30歳。川崎市在住。成城大学文芸学部文化史学科卒業。2024年『イッツ・ダ・ボム』で第31回松本清張賞を受賞しデビュー。敬愛する作家は伊坂幸太郎、島田荘司、松本清張、結城昌治、ドナルド・E・ウェストレイク、ローレンス・ブロック。70年代パンク・ロックが好き。

小林秀雄賞 「夢を叶えるために脳はある」池谷裕二

講談社 (2024/3/28)

内容紹介

累計43万部突破!ベストセラー『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』に続く、高校生への脳講義シリーズの最新刊がついに刊行。

なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。

脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは――。

なぜ脳は存在するのか、僕らはなぜこんなに大きな脳を持ってしまったのか、時間はなぜ存在するのか、この世界は現実なのか、人工知能にとって人間とはなにか、私とはなにか――

数々の問いを巡らせていくと、全てがつながり、思いもよらない答えを導く。

人気脳研究学者である著者が、3日間にわたっておこなった圧倒的迫力の講義録。


「というわけで、「ああ、そうか、ならば生きなくては」と僕は感じる。能天気なヤツかもしれない。
君らはどうかな。そうは感じないかな。

僕はね、どうせ生きるんだったら、せっかくなら楽しく生きようよ、と思わずにはいられない。だって、生きているだけで役に立っているんだよ。そんなシンプルな喜びって、他に何があるんだろう。

そうした生命の本質的な原理を、脳の研究をしながら、強く感じる」(本書より)

「いま一番思い入れがあって、一番好きな本」と自らが語る、渾身の一冊。
本書でシリーズ完結となる

著者紹介

池谷 裕二(いけがや・ゆうじ)

1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探究を続ける。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。「ERATO 池谷脳AI融合プロジェクト」の研究総括も務める。本書が完結編となる高校生への脳講義シリーズは、他に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに朝日出版社/講談社ブルーバックス)がある。その他の著書に『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社/新潮文庫)、『パパは脳研究者』(クレヨンハウス/扶桑社新書)など、共著に『海馬』(朝日出版社/新潮文庫)、『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社)などがある。


著者の他の本

「進化しすぎた脳」
講談社 (2007/1/19)

あなたの人生も変わるかもしれない?

『記憶力を強くする』で鮮烈デビューした著者が大脳生理学の最先端の知識を駆使して、記憶のメカニズムから、意識の問題まで中高生を相手に縦横無尽に語り尽くす。

「私自身が高校生の頃にこんな講義を受けていたら、きっと人生が変わっていたのではないか?」と、著者自らが語る珠玉の名講義。



メディアから絶賛の声が続々と!

『何度も感嘆の声を上げた。これほど深い専門的な内容を、これほど平易に説いた本は珍しい』――(朝日新聞、書評)

『高校生のストレートな質問とサポーティブな池谷氏の対話が、読者の頭にも快い知的な興奮をもたらす』――(毎日新聞、書評)

『講義らしい親しみやすい語り口はもちろん、興味をひく話題選びのうまさが光る』――(日本経済新聞、書評)



「単純な脳、複雑な「私」」
講談社 (2013/9/5)

「心」はいかにして生み出されるのか? 最先端の脳科学を読み解くスリリングな講義。脳科学の深海へ一気にダイブ!



ベストセラー『進化しすぎた脳』の著者が、母校で行った連続講義。私たちがふだん抱く「心」のイメージが、最新の研究によって次々と覆されていく──。「一番思い入れがあって、一番好きな本」と著者自らが語る知的興奮に満ちた一冊。


新潮ドキュメント賞 「南海トラフ地震の真実」小沢慧一

東京新聞(中日新聞東京本社) (2023/8/24)


内容紹介

発生確率70~80%→実は20%!?

地震は日本のどこで起きてもおかしくない。 なのに、南海トラフ地震ばかりが確率の高さの算出で 「えこひいき」されている? 「科学ジャーナリスト賞」受賞の新聞連載を書籍化‼

私が南海トラフ地震の確率が「水増し」されていることを初めて 知ったのは2018年。それまで科学的根拠に基づき算出されている と思っていた確率が、いい加減な根拠をもとに政治的な決められ 方をしていたことに、唖然とした。 また、取材をしていくと、防災予算獲得の都合などから、南海ト ラフ地震が「えこひいき」されて確率が高く示されるあまり、全国の他の地域の確率が低くとらえられて油断が生じ、むしろ被害 を拡大させる要因になっている実態も見えてきた——。 (まえがきより)

西日本から東日本の太平洋側を中心に、大きな被害が予想される「南海ト ラフ地震」。この地震がこれから30年以内に起きる確率を、政府は70%~ 80%と予測する。この数値の出し方に疑問を持つ記者が、その数字を決定 した会議の議事録や予測の根拠となる室津港の水深を記した古文書など を探し出し、南海トラフの確率の出し方が「えこひいき」されている真実 を浮き彫りにするノンフィクション。

著者紹介

小沢 慧一(おざわ けいいち) 新聞記者

1985年名古屋市生まれ。大学卒業後、コスモ石油株式会社を経て、2011年中日新聞社(東京新聞)に入社。水戸支局、横浜支局、東海報道部(浜松)、名古屋社会部、東京本社(東京新聞)社会部。同部では東京地検特捜部・司法担当を経て、現在は科学班。中日新聞で19年に連載した(東京新聞では20年)「南海トラフ 80%の内幕」は、20年に「科学ジャーナリスト賞」を受賞。著書に「南海トラフ地震の真実」(東京新聞)がある。



谷崎潤一郎賞「続きと始まり」柴崎友香

集英社 (2023/12/5)


内容紹介

第60回谷崎潤一郎賞受賞
第74回芸術選奨文部科学大臣賞受賞

あれから何年経っただろう。あれからって、いつから? どのできごとから?

日本を襲った二つの大震災。未知の病原体の出現。誰にも同じように流れたはずの、あの月日──。別々の場所で暮らす男女三人の日常を描き、蓄積した時間を見つめる、叙事的長編小説。

始まりの前の続き、続きの後の始まりを見下ろし、あの中のどこかにわたしもいる、と思った。(一穂ミチ・作家)


著者紹介

柴崎友香(しばさき・ともか)

1973年、大阪府生まれ、東京都在住。大阪府立大学卒業。1999年「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞を受賞。2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。その他に『パノララ』『千の扉』『待ち遠しい』『百年と一日』ほか、エッセイに『よう知らんけど日記』など、著書多数。

著者の他の本

「待ち遠しい」
毎日新聞出版 (2023/1/31)

これはきっと「あなたの物語」  

住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける北川春子39歳。母屋に越してきた、夫を亡くしたばかりの63歳、青木ゆかり。裏手の家に暮らす、今どきの新婚25歳、遠藤沙希。偶然の出会いから微妙な距離感のご近所付き合いが始まった。「分かりあえなさ」を越えて得られる豊かな関係を描き出した珠玉の一作。 


●解説・倉本さおり(書評家)

「わたし以外のほかの誰かが決めることじゃないんです」 

人と比べられて気まずい思いを強いられたり、「みんな」と同じ条件や要素を手に入れられないことに疎外感を持ったりする世の中にあって、その言葉はすべての「わたし」の人生を支えてくれるお守りのようなものだろう。いうなればこの小説は、ひとりの人間が自分の内側からその言葉を紡ぎ出していく過程を丹念に言語化したものなのだ。(「解説」より)


「春の庭」
文藝春秋 (2014/7/28)

第151回芥川賞受賞作。

行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。

離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……

「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください。


中央公論文芸賞「笑う森」萩原浩

新潮社 (2024/5/30)


内容紹介

原生林で5歳のASD児が行方不明になった。1週間後無事に保護されるが「クマさんが助けてくれた」と語るのみで全容を把握できない。バッシングに遭う母のため義弟が懸命に調査し、4人の男女と一緒にいたことは判明するが空白の時間は完全に埋まらない。森での邂逅が導く未来とは。希望と再生に溢れた荻原ワールド真骨頂。

著者紹介

荻原浩
オギワラ・ヒロシ

1956(昭和31)年、埼玉県生れ。成城大学経済学部卒。広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。1997(平成9)年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞を、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞受賞を、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞。著作に『ハードボイルド・エッグ』『神様からひと言』『僕たちの戦争』『さよならバースディ』『あの日にドライブ』『押入れのちよ』『四度目の氷河期』『愛しの座敷わらし』『ちょいな人々』『オイアウエ漂流記』『砂の王国』『月の上の観覧車』『誰にも書ける一冊の本』『幸せになる百通りの方法』『家族写真』『冷蔵庫を抱きしめて』『金魚姫』『ギブ・ミー・ア・チャンス』など多数。

https://www.shinchosha.co.jp/book/468907/


著者の他の本


「噂」
新潮社 (2006/2/28)

「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。

「砂の王国(上)」
講談社 (2013/11/15)

全財産は、3円。私はささいなきっかけで大手証券会社勤務からホームレスに転落した。寒さと飢えと人々からの侮蔑。段ボールハウスの設置場所を求め、極貧の日々の中で辿りついた公園で出会った占い師と美形のホームレスが、私に「宗教創設計画」を閃かせた。はじき出された社会の隅から逆襲が始まる!



芥川龍之介賞「サンショウウオの四十九日」朝比奈秋

新潮社 (2024/7/12)


内容紹介

周りからは一人に見える。でも私のすぐ隣にいるのは別のわたし。不思議なことはなにもない。けれど姉妹は考える、隣のあなたは誰なのか? そして今これを考えているのは誰なのか――三島賞受賞作『植物少女』の衝撃再び。最も注目される作家が医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍を描く、世界が初めて出会う物語。

著者紹介

1981年京都府生まれ。医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。2023年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞。『サンショウウオの四十九日』が第171回芥川龍之介賞候補となる。他の作品に「私の盲端」「受け手のいない祈り」など。

https://www.shinchosha.co.jp/writer/7517/


 第171回の芥川賞を『サンショウウオの四十九日』で受賞した朝比奈秋さんは、「小説に選ばれてしまった」人と言えるでしょう。35歳の頃、消化器内科医として医学論文を執筆中、とつぜん物語が頭に浮かんできたそうです。そのイメージに導かれるまま小説を書き始めたところ、次々に物語が脳内に現れてくることに。ついには急患の診察や手術の最中にも物語が頭から離れなくなり、このままでは医療事故を起こしてしまうと、将来の見通しもないまま病院勤めを辞め、以来ほぼ家にこもりきりで小説を書き続けました。

https://www.shinchosha.co.jp/book/355731/


著者の他の本

「植物少女」
朝日新聞出版 (2023/1/10)

美桜が生まれた時からずっと母は植物状態でベッドに寝たきりだった。小学生の頃も大人になっても母に会いに病室へ行く。動いている母の姿は想像ができなかった。美桜の成長を通して、親子の関係性も変化していき──現役医師でもある著者が唯一無二の母と娘のあり方を描く。

「あなたの燃える左手で」
河出書房新社 (2023/6/19)

第51回泉鏡花文学賞、第45回野間文芸新人賞ダブル受賞作!



麻酔から覚めると、見知らぬ他人の手になっていた。

ハンガリーの病院で、手の移植手術を受けたアサト。しかし、麻酔から覚めると、繋がっていたのは見知らぬ白人の手で――。

自らの身体を、そして国を奪われることの意味を問う、傑作中篇!



凄い! 肉体の無意味な分断と不自然な結合が、現実の世界に重なる。

入念な構成の冒頭から最後まで、1㎜の緩みもない。凄い!

――皆川博子氏(作家)



切断され、奪われ、接ぎ合わされるのは、体なのか、国なのか、心なのか。

これは「境界」をめぐる、今まさに読まれるべき物語。

――岸本佐知子氏(翻訳家)



喪って初めて大事さが判る。身体、そして故郷。自分とは何かを問う小説だ。

――杉江松恋氏(書評家)




芥川龍之介賞「バリ山行」松永K三蔵

講談社 (2024/7/29)


内容紹介

第171回芥川賞受賞作。

古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。



「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋)



会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。

著者紹介

松永K三蔵
1980年茨城県生まれ。兵庫県西宮市在住。関西学院大学文学部卒。2021年「カメオ」が群像新人文学賞優秀作となる。

著者サイト
https://m-k-sanzo.com/


直木三十五賞「ツミデミック」一穂 ミチ

光文社 (2023/11/22)


内容紹介

大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中にはなしかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗はーー「違う羽の鳥」  調理師の職を失った恭一は家に籠もりがちで、働く妻の態度も心なしか冷たい。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人からもらったという。隼からそれを奪い、たばこを買うのに使ってしまった恭一は、翌日得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れるがーー「特別縁故者」  先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。 稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話。


「『ツミデミック』を推し(引用者中略)た。」「コロナ禍を小説のネタなどとは決して思っていない、誠実で真摯な姿勢に心打たれた。」「一穂氏の小説はうますぎるがゆえに、よさを言葉で説明するのがむずかしく、ただ感じ、味わうほかないのだが、登場人物になりきり、自分とはまったく異なるひとの日常を生きたかのような、圧倒的な没入感を私は覚えた。ずるさもまぬけさも、断罪や価値判断されることなく、ただ「ある」。」
三浦しをん

https://prizesworld.com/naoki/jugun/jugun171IM.htm


著者紹介

一穂ミチ
大阪府大阪市生まれ。関西大学卒。平成19年/2007年『小説ディアプラス』掲載の「雪よ林檎の香のごとく」で作家デビュー。

著者の他の本

「スモールワールズ」
講談社 (2021/4/22)

【2022年 本屋大賞ノミネート】
【第165回直木賞候補作】
【第9回静岡書店大賞受賞】
【キノベス!2022 第4位】

最終話に仕掛けられた一話目への伏線。
気付いた瞬間、心を揺さぶる、鳥肌モノの衝撃が襲う!!
読売新聞、日経新聞、本の雑誌……各紙書評で絶賛の声続々!
「驚きの完成度!」――瀧井朝世さん(『スモールワールズ』公式HP書評より)
「BL界の鬼才恐るべし」――北上次郎さん(日本経済新聞 5月6日書評より)

夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。



「光のとこにいてね」
文藝春秋 (2022/11/7)

――ほんの数回会った彼女が、人生の全部だった――



古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。

彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。

どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。





――二人が出会った、たった一つの運命

切なくも美しい、四半世紀の物語――




河合隼雄物語賞「休館日の彼女たち」八木 詠美

筑摩書房 (2023/3/20)


内容紹介

誰もがコミュニケーション不全を抱える世界で、
有機物と無機物の境界すら越えて、
わたしとヴィーナスは手に手を取り合い駆け出していく。
新しい関係性の扉をひらく無敵のシスターフッド小説!

算数で「平行」を習ったときから、ひとには見えない黄色いレインコートに身をつつむことになったホラウチリカ。ある日、大学の恩師から紹介された仕事は古代ローマの女神像のおしゃべり相手だった――。

デビュー作『空芯手帳』(第36回太宰治賞受賞作)がニューヨーク・タイムズやニューヨーカーなど各紙でオススメ本として取り上げられ、14カ国語で翻訳が刊行・進行中(2023年2月現在)。

世界が注目する八木詠美、待望の2作目。


著者紹介

八木 詠美(やぎ・えみ):1988年長野県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2020年『空芯手帳』で第36回太宰治賞を受賞。世界13カ国語での翻訳が進行中で、特に2022年8月に刊行された英語版(『Diary of a Void』)は、ニューヨーク・タイムズやニューヨーク公共図書館が今年の収穫として取り上げるなど話題を呼んでいる。

著者の他の本

「空芯手帳」
筑摩書房 (2023/3/13)


女性差別的な職場にキレて「妊娠してます」と口走った柴田が辿る奇妙な妊婦ライフ。英語版も話題の第36回太宰治賞受賞作が文庫化! 解説 松田青子

英語版が刊行後即重版。NYタイムズ、ニューヨーク公共図書館の2022年オススメ本にあげられ、世界20カ国語で翻訳進行中。
世界的に話題のデビュー作、待望の文庫化!

職場にキレて偽装妊娠。
理不尽な雑用、セクハラ、「女」だから演じるろくでもない役回り――
ままならない現実を破壊するのは、私だけの赤ちゃん?

「だから私は噓を持つことにしたの」──日々押し付けられる雑務にキレてつい「妊娠してます」と口走った柴田が送る奇妙な妊婦ライフ。第36回太宰治賞受賞作にして、英語版がNYタイムズやニューヨーク公共図書館の「今年の収穫」に挙げられるなど話題となり、世界14カ国語で翻訳進行中の鮮烈デビュー作が待望の文庫化!


三島由紀夫賞「みどりいせき」大田 ステファニー 歓人

集英社 (2024/2/5)


内容紹介

【第37回三島由紀夫賞受賞作】
【第47回すばる文学賞受賞作】

【選考委員激賞!】
私の中にある「小説」のイメージや定義を覆してくれた──金原ひとみさん

この青春小説の主役は、語り手でも登場人物でもなく生成されるバイブスそのもの──川上未映子さん

(選評より)



このままじゃ不登校んなるなぁと思いながら、僕は小学生の時にバッテリーを組んでた一個下の春と再会した。

そしたら一瞬にして、僕は怪しい闇バイトに巻き込まれ始めた……。

でも、見たり聞いたりした世界が全てじゃなくって、その裏には、というか普通の人が合わせるピントの外側にはまったく知らない世界がぼやけて広がってた──。

著者紹介

大田ステファニー歓人(おおた・すてふぁにー・かんと)

1995年東京都生まれ。東京都在住。現在、ゴミ収集の清掃員として働きながら小説を書いている。



山本周五郎賞「地雷グリコ」青崎 有吾

KADOKAWA (2023/11/27)


内容紹介

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!



射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。

平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

著者紹介

青崎 有吾:1991年神奈川県生まれ。明治大学卒。在学中の2012年『体育館の殺人』で第22回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。24年に『地雷グリコ』で、第24回本格ミステリ大賞(小説部門)、第77回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、第37回山本周五郎賞をトリプル受賞。著作は他に、〈裏染天馬〉シリーズの『水族館の殺人』『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』『図書館の殺人』、〈アンデッドガール・マーダーファルス〉シリーズ、〈ノッキンオン・ロックドドア〉シリーズ、『早朝始発の殺風景』『11文字の檻 青崎有吾短編集成』がある。

著者の他の本

「体育館の殺人」
東京創元社 (2015/3/12)

“平成のエラリー・クイーン”衝撃のデビュー作。第22回鮎川哲也賞受賞作。

風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部部長の少年が何者かに刺殺された。放課直後で激しい雨が降り、現場は密室状態だった!? 早めに授業が終わり現場体育館にいた唯一の人物、女子卓球部の部長の犯行だと、警察は決めてかかるが……。死体発見現場にいあわせた卓球部員・柚乃は、嫌疑をかけられた部長のために、学内随一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。内緒で校内に暮らしているという、アニメオタクの駄目人間に――。しかしなぜ彼は校内に住んでいるのだろう? “平成のエラリー・クイーン”が単行本版より大幅改稿で読者に挑戦!

解説=辻 真先

「11文字の檻 青崎有吾短編集成」

なんと、『体育館の殺人』の衝撃から10年!
平成のエラリー・クイーンは、短編もここまですごかった
本格ミステリ、SF、人気コミックのトリビュートまで、全8編
傑作「11文字の檻」(書き下ろし)収録



大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。



■目次
「加速してゆく」
「噤ヶ森(つぐみがもり)の硝子(ガラス)屋敷」
「前髪は空を向いている」
「your name」
「飽くまで」
「クレープまでは終わらせない」
「恋澤姉妹」
「11文字の檻」



江戸川乱歩賞「遊郭島心中譚」霜月 流

講談社 (2024/10/23)


内容紹介

幕末日本。幼いころから綺麗な石にしか興味のない町娘・伊佐のもとへ、父・繁蔵の訃報が伝えられた。さらに真面目一筋だった木挽き職人の父の遺骸には、横浜・港崎遊廓(通称:遊廓島)の遊女屋・岩亀楼と、そこの遊女と思しき「潮騒」という名の書かれた鑑札が添えられ、挙げ句、父には攘夷派の強盗に与した上に町娘を殺した容疑がかけられていた。伊佐は父の無実と死の真相を確かめるべく、かつての父の弟子・幸正の斡旋で、外国人の妾となって遊廓島に乗り込む。そこで出会ったのは、「遊女殺し」の異名を持つ英国海軍の将校・メイソン。初めはメイソンを恐れていた伊佐だったが、彼の宝石のように美しい目と実直な人柄に惹かれていく。伊佐はメイソンの力を借りながら、次第に事件の真相に近づいていくが・・・・・・。

著者紹介

霜月流
1993年東京都生まれ。学習院大学法学部法学科卒業。
会社員をしながら執筆活動を行う。
東座莉一名義にて、『5分で読める驚愕のラストの物語』
(集英社 JUMP j BOOKS)に掌編「表裏一体」で参加。
本作が長編デビューとなる。

著者の他の本

「5分で読める驚愕のラストの物語 (JUMP j BOOKS)」
東座莉一名義

予測不可能!たった5分であっと驚くショートストーリー13編! 学校の「朝読」の時間や、日々のすきま時間に、手軽に読める短い物語を満載。

人気漫画家のカバー絵で『5分で読める恐怖のラストの物語』『5分で読める胸キュンなラストの物語』とともに3冊同時刊行されるうちの1冊。

どの1冊からも、どの作品からも読める、全編読切小説。予測不能なあっと驚くラストの物語を多数収録の『驚愕』編!

カバー絵は、『このマンガがすごい!2021』(宝島社)オトコ編1位に輝き、TVアニメ化も決定した『チェンソーマン』の藤本タツキ先生! 収録作家は、アサウラ、伊瀬ネキセ、兎月竜之介、河鍋鹿島、北國ばらっど、砂握、東座莉一、羊山十一郎、持崎湯葉、るーすぼーい。ジャンプノベルの誇る若き書き手が集結!


江戸川乱歩賞「フェイク・マッスル」日野瑛太郎

講談社 (2024/8/21)


内容紹介

独自の世界で勝負できる書き手だと思う。--東野圭吾

頭抜けて面白かった。--綾辻行人

まんまと作者の術中にはまった。ーー有栖川有栖

エンタメとして読ませるテンポの良さも素晴らしい。ーー辻村深月

潜入取材シリーズとなれば喜んで追っていきたいと思います。――湊かなえ


あらすじ

たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。

文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?

フェイクが氾濫する時代の、「真実の物語」が始まった。

著者紹介

日野瑛太郎
1985年茨城県生まれ。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。第67回、第68回、第69回江戸川乱歩賞最終候補。2024年、第70回江戸川乱歩賞を受賞した本作でデビュー



太宰治賞「メメントラブドール」市街地ギャオ

筑摩書房 (2024/10/28)


内容紹介

第40回太宰治賞受賞作&
第46回野間文芸新人賞候補作!

新宿区在住♡20代♡裏アカ男子♂の令和五年

形のない「私」を言葉で照らし出す著者の狂いのなさに、

読む者は狂い出しそうになるだろう。

事件は起こらない。しかしこの小説の誕生は事件だ。

――金原ひとみ



===

なにもかも守れていないから

私のところに来るんじゃないの。

「私」にはいくつか顔がある。マッチングアプリでノンケの男を釣って喰っては「たいちょー」として行為シーンを裏アカに上げ、平日昼間はSIer企業の院卒若手正社員「忠岡」として労働しながら、新宿区住まいの家賃のために「うたちょ」の姿で男の娘コンカフェのキャストとして立つ元“高専の姫”ポジション――ペルソナたちがハレーションする、どうしようもない人間のどうしようもない梅雨明けまでの一ヶ月。


著者紹介

市街地 ギャオ(しがいち・ぎゃお):1993年、大阪府生まれ。大阪府在住。2024年、「メメントラブドール」で第40回太宰治賞受賞。




本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」宮島 未奈

新潮社 (2023/3/17)


内容紹介

2024年本屋大賞受賞作!
成瀬の天下取り!
【坪田譲治文学賞】
【「静岡書店大賞」小説部門 第1位】
【ダ・ヴィンチ「BOOK OF THE YEAR 2023」小説部門第1位】
【「読書メーター OF THE TEAR 2023-2024」第1位】
【「中高生におすすめする司書のイチオシ本 2023年版」第1位】
【第17回「神奈川学校図書館員大賞(KO本大賞)」受賞】
【「キノベス!2024」第1位】
など続々受賞。




2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。

コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。

M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。

今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。

2023年、最注目の新人が贈る傑作青春小説!


著者紹介

宮島未奈
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など15冠を獲得し話題となる。続編『成瀬は信じた道をいく』とあわせてシリーズ累計75万部を突破。

https://www.shinchosha.co.jp/writer/7260/

著者の他の本

「婚活マエストロ」
文藝春秋 (2024/10/25)

〈あらすじ〉
40歳の三文ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの中の小さな事務所……どう考えても怪しい。

手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、やけに姿勢のいいスーツ姿の女性・鏡原奈緒子。場違いなほどの美女だが、彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と宣言する。そして生真面目にマイクを握った――そう、彼女は婚活業界では名を知らぬ者はいない〈婚活マエストロ〉だった。


その見事な進行で、参加者は完全にマエストロ・鏡原の掌の上。彼女は何者なのか、なぜこんな会社で働いているのか、〈マエストロ〉ってなに……謎は深まるばかりだが、猪名川は同社のイベントを手伝うことに。65歳以上のシニア向け婚活パーティーから、琵琶湖に向かう婚活バスツアー(クルーズ船「ミシガン」に乗車)まで。これまで結婚に興味のなかった猪名川も、次第に「真面目に婚活するのも悪くないかもしれない」と思い始める。

ものは試しと他社が運営する婚活パーティーを訪れてみると、そこには参加者として席に座る鏡原の姿があった――。


「成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ」
新潮社 (2024/1/24)

唯一無二の主人公、再び。

……と思いきや、まさかの事件発生!?

10万部突破の前作に続き、読み応え、ますますパワーアップの第2作!



成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。

「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー(をやめたい)主婦、観光大使になるべくしてなった女子大生……。

個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!?

面白さ、ますますパワーアップの全5篇!


吉川英治文学賞「悪逆」黒川 博行

朝日新聞出版 (2023/10/6)


内容紹介

過払い金マフィア、マルチの親玉、カルトの宗務総長――
社会に巣食う悪党が次々と殺害される。

警察捜査の内情を知悉する男

vs.

大阪府警捜査一課の刑事と所轄のベテラン部屋長


凶悪な知能犯による強盗殺人を追う王道の警察小説

(内容紹介)
周到な準備と計画によって強盗殺人を遂行していく男――。大阪府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が、広告代理店の元経営者殺害事件を追うなか、さらに被害者と面識のある男が殺される。二人はそれぞれ士業詐欺とマルチ商法によって莫大な金を荒稼ぎした悪党で、情報屋の標的になっていた。警察は犯行手口の違いから同一犯による可能性はないと判断するが、いずれも初動捜査で手詰まりとなる。犯人像を?むことができないまま、さらには戦時中に麻薬密売組織に関わり、政治家とも昵懇だった新興宗教の宗務総長が殺害される。警察の動きを攪乱しながら凶行を続ける男の目的はどこにあるのか? 舘野と玉川は、凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか? 



警察捜査の内幕を活写しながら、

裏社会を跋扈する男たちを圧倒的な存在感で描き切る、

ラスト5ページまで結末が読めない、

本年度最注目のクライム・サスペンス!


著者紹介

黒川 博行 (くろかわ・ひろゆき)

1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。大阪府立高校の美術教師を経て、83年『二度のお別れ』でサントリーミステリー大賞佳作。86年『キャッツアイころがった』でサントリーミステリー大賞を受賞。96年「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。2014年『破門』で直木賞を受賞。


著者の他の本

「勁草」
徳間書店 (2017/12/1)

橋岡は「名簿屋」の高城に雇われていた。名簿屋とはオレ詐欺の標的リストを作る裏稼業だ。橋岡は被害者から金を受け取る「受け子」の手配も任されていた。騙し取った金の大半は高城に入る仕組みで、銀行口座には金がうなっているのだ。賭場で借金をつくった橋岡と矢代は高城に金の融通を迫るが…。一方で府警特殊詐欺班の刑事たちも捜査に動き出していた。最新犯罪の手口を描き尽くす問題作!


「そらそうや」
中央公論新社 (2024/10/8)


黒い川を渡って博打に行く……。

本格警察小説や、ハードボイルド作品で人気の著者が綴った、作家になるまでの日々、執筆を支える日常のこと、麻雀や将棋、競輪や競馬と運について、そして友人たちとの交流…

40年間の作家生活をぎゅっと詰め込んだエッセイ集。

巻末に、自作解説、東野圭吾との対談「僕は運が強いんです」を収録。


吉川英治文庫賞「八咫烏シリーズ」阿部智里

文藝春秋 (2014/6/10)


内容紹介

松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作は、壮大な時代設定に支えられた時代ファンタジー!


人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎである若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しくしのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一向に現れないまま、次々と事件が起こる。侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なのか? あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場!

著者紹介

阿部智里(あべ・ちさと)

1991年、群馬県前橋市生まれ。早稲田大学文化構想学部在学中の2012年、『烏に単は似合わない』で松本清張賞を史上最年少で受賞。17年、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。デビュー作から続く壮大な異世界ファンタジー「八咫烏」シリーズは現在は第2部へと突入、外伝も含めて『望月の烏』で12冊を数える。24年4月からNHK「烏は主を選ばない」放送開始予定。ほかの作品に『発現』。


著者の他の本

「烏の緑羽」


吉川英治文学新人賞「リラの花咲くけものみち」藤岡 陽子

光文社 (2023/7/20)


内容紹介

幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になった岸本聡里。愛犬だけが支えだった聡里は、祖母に引き取られペットと暮らすうちに獣医師を志す。北農大学獣医学類に入学すると、面倒見のよい先輩、志をともにする同級生らに囲まれ、学業やアルバイトに奮闘する日々。伴侶動物の専門医を目指していた聡里だが、馬や牛など経済動物の医師のあり方を目の当たりにし、「生きること」について考えさせられることに――


著者紹介

藤岡陽子
1971(昭和46)年、京都生れ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社にスポーツ記者として勤務。退社後、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に小説の執筆を始め、2006(平成18)年「結い言」で北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。ほかの著書に『トライアウト』『波風』『おしょりん』『テミスの休息』などがある。

https://www.shinchosha.co.jp/writer/4774/


著者の他の本

「ホイッスル 」
光文社 (2016/11/9)

長年連れ添った夫が突然失踪し、思い出の詰まった家も失った。理不尽な状況に、園原聡子は戸惑い絶望の淵に立つが、娘や姪、誠実な弁護士たちの支えで、新たな生活に向かって歩み出す。そして、夫を奪った不倫相手・沼田和恵と、法廷で対峙する日がやって来た。底知れぬ悪意に翻弄されながら、それでも強く生きる人びとの姿を通して、家族、夫婦の在り方を問う感動の長編!


「森にあかりが灯るとき」
PHP研究所 (2024/9/19)

介護の現場に、光の種を撒く努力をしたい。

お笑い芸人の夢に挫折し、特別養護老人ホーム「森あかり」で介護士として働くことになった星矢は、初めての夜勤の日に、利用者の鼻に酸素を投与するためのチューブが人為的に切断されているという医療事故に遭遇。さらにその原因が星矢にあるのではないかと施設長から疑われてしまう。介護士としての将来に自信を失くし、仕事へのやりがいも感じられないまま過ごしていた星矢は、ある日、施設で厄介者扱いされている医師・葉山彩子を街で見かけて、意外な場所に連れていかれる。

お笑い芸人になる夢に破れた新人介護士、自分の信念が周囲に理解されない医者、過去に利用者の遺族から訴えられた施設長――。それでも彼らがここで働く理由とは。



吉川英治文学新人賞受賞の著者が贈る、感動長編。



読売文学賞(小説賞)「黄色い家」川上 未映子

中央公論新社 (2023/2/20)


内容紹介

2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。

60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。

長らく忘却していた20年前の記憶――黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。

まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな〝シノギ〞に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい……。

善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!


著者紹介

川上未映子

大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川龍之介賞、09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、10年『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、13年、詩集『水瓶』で高見順賞、同年『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、16年『あこがれ』で渡辺淳一文学賞、19年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞。他の著書に『春のこわいもの』など。『夏物語』は40カ国以上で刊行が進み、『ヘヴン』の英訳は22年ブッカー国際賞の最終候補に選出された。23年2月、『すべて真夜中の恋人たち』が「全米批評家協会賞」最終候補にノミネート。


著者の他の本

「すべて真夜中の恋人たち」
‎ 講談社 (2014/10/15)

全米批評家協会賞 小説部門 最終候補ノミネート!

「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。

わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。誰もいない部屋で校正の仕事をする、そんな日々のなかで三束さんにであった――。



芥川賞作家が描く究極の恋愛は、心迷うすべての人にかけがえのない光を教えてくれる。渾身の長編小説。

「ヘヴン」
講談社 (2012/5/15)

2022年「ブッカー国際賞」最終候補作!
かつて見たことのない世界が待ち受ける。
芸術選奨文部科学大臣新人賞・紫式部文学賞 ダブル受賞


<わたしたちは仲間です>――十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える<僕>は、差出人不明の手紙を受け取る。苛められる者同士が育んだ密やかで無垢な関係はしかし、奇妙に変容していく。葛藤の末に選んだ世界で、僕が見たものとは。善悪や強弱といった価値観の根源を問い、圧倒的な反響を得た著者の新境地。



◆ニューヨーク・タイムズ

……この小説の不協和音は息を呑むようなラストの完璧なビジョンになり、それは意味、美しさ、そして人生を肯定する根拠になる。川上のような複雑な作家による、稀にみるこの、深遠でありながら満ち足りた物語の終わらせかた。彼女の作品を読むと、彼女が何も恐れない作家だということがわかる

◆ロンドン・レビュー・オブ・ブックス

川上は、抽象的でとても大きな問題を奇妙なほど直接的で個別の問題であるようにひとつの皿の上に提示して見せる

◆フィナンシャルタイムズ

……終盤、読者はその直感的な細部と哲学的な複雑さに眩暈がするほど夢中になり、そして到来するツイスト、それは予想不能の奇妙な力であなたを襲う

◆インディペンデント

『ヘヴン』を読むと、まるで美しくも残酷な10代の少年が自分の胸に座っているような気持ちになる

◆オプラ・デイリー

昨年、賞賛を浴びた『夏物語』の著者による思春期の呪われた洞窟を舞台にした痛烈なオデッセイ





読売文学賞(随筆・紀行賞)「くもをさがす」西加奈子

河出書房新社 (2023/4/18)


内容紹介

カナダでがんになった。

あなたに、これを読んでほしいと思った。



これは、たったひとりの「あなた」への物語ーー

祈りと決意に満ちた、西加奈子初のノンフィクション



『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から寛解までの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。

カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。

切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。



● 『くもをさがす』へ寄せられた声



思い通りにならないことと、幸せでいることは同時に成り立つと改めて教わったよう。

――ジェーン・スーさん(コラムニスト)



読みながらずっと泣きそうで、でも一滴も泣かなかった。そこにはあまりにもまっすぐな精神と肉体と視線があって、私はその神々しさにただ圧倒され続けていた。

西さんの生きる世界に生きているだけで、彼女と出会う前から、私はずっと救われていたに違いない。

――金原ひとみさん(作家)



剥き出しなのにつややかで、奪われているわけじゃなくて与えられているものを知らせてくれて、眩しかったです。関西弁のカナダ人たちも最高でした。

――ヒコロヒーさん(お笑い芸人)



読み終わり、静かに本を閉じても心がわさわさと迷う。

がんの闘病記という枠にはとてもおさまらず、目指す先はまったく別にあることに気づかされた一冊。幸せいっぱいのときに、それを失う恐怖心が同時に存在するパラドックスに気づくと、上手くいったとしてもイマイチでも、自分なりに納得できる瞬間の積み重ねが人生なのだとあらためて知る。

――高尾美穂さん(産婦人科医)



著者紹介

西加奈子

1977(昭和52)年、イランのテヘラン生れ。エジプトのカイロ、大阪で育つ。2004(平成16)年に『あおい』でデビュー。翌年、1匹の犬と5人の家族の暮らしを描いた『さくら』を発表、ベストセラーに。2007年『通天閣』で織田作之助賞、2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で直木賞、2024(令和6)年『くもをさがす』で読売文学賞を受賞。その他の作品に『窓の魚』『きいろいゾウ』『きりこについて』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『i』『夜が明ける』『わたしに会いたい』など多数。


著者の他の本

「通天閣」
筑摩書房 (2009/12/9)

「夢に向かって頑張っていないと駄目なのか、何かを作っていないと駄目なのか。自転車でバイト先に向かい、阿呆の相手をして、マメのことだけを思って眠る生活をしている私は、駄目なのか。『きらきらと輝いて』いないのか。」

冬の大阪ミナミの町が舞台を舞台に、このしょーもない世の中に、救いようのない人生に、ちょっぴり暖かい灯を点す驚きと感動の物語。織田作之助賞受賞作。解説=津村記久子

「誰も彼もが、とにかくその一日一日をやり過ごすので手一杯である。夢を見ている時間はない。その有様が、克明に描かれれば描かれるほど笑ってしまい、同時に、世界の核心に触れたような気持ちになる。それらのどちらか、ではなく、どちらも、を達成しているところに、『通天閣』の稀有さがあると思う。」

津村記久子「解説『通天閣』の魔法」より


「わたしに会いたい」
集英社 (2023/11/2)

『くもをさがす』の西加奈子が贈る、8つのラブレター。
この本を読んだあと、あなたは、きっと、自分の体を愛おしいと思う。
「わたし」の体と生きづらさを見つめる珠玉の短編小説集。

わたしを生きるための言葉。#Imissme ──わたしに会いたい。


コロナ禍以前の2019年より、自身の乳がん発覚から治療を行った22年にかけて発表された7編と書き下ろし1編を含む、全8編を収録。

・「わたしに会いたい」──ある日、ドッペルゲンガーの「わたし」がわたしに会いに来る。

・「あなたの中から」──女であることにこだわる「あなた」に、私が語りかける。

・「VIO」──年齢を重ねることを恐れる24歳の私は、陰毛脱毛を決意する。

・「あらわ」──グラビアアイドルの露(あらわ)は、乳がんのためGカップの乳房を全摘出する。

・「掌」──深夜のビル清掃のアルバイトをするアズサが手に入れた不思議な能力とは。

・「Crazy In Love」──乳がんの摘出手術を受けることになった一戸ふみえと看護師との束の間のやり取り。

・「ママと戦う」──フェミニズムに目覚めたママと一人娘のモモは、戦うことを誓う。

・「チェンジ」(書き下ろし)──デリヘルで働く私は、客から「チェンジ。」を告げられる。

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