裁判官のツッコミやワードセンス、人情が光る?! 『裁判官の爆笑お言葉集』読んでみた!
……これらのセリフ、なんと、実際に法廷で裁判官が言った言葉なのだ。時に厳しく、時にやさしく、人間味のあるセリフを言うこともある裁判官たち。この作品はそんな裁判官たちの判決文を読むだけではない、個性のある「お言葉」を集めた語録集である。
そんな前書きと共に始まるこちらの語録集。一度読めば裁判官や裁判所が身近に感じられる一冊となっている。
さて、裁判所では基本的に判決を言い渡すのが裁判官の仕事である。私もこの本で知ったのだが、裁判官というものは一度に五つも六つも同時並行で事案を抱えており、忙しい。〈「仕事が忙しいのは~」〉はそんな裁判官が言ったセリフだからこそ重みと趣があると言えるだろう。だからこそ、彼らの仕事は迅速に、適切な判断を下していくことだ。言っては何だが、被告人や社会に説教を垂れている暇などない。……しかし、である。実際には裁判官が被告に声をかける、という事例はそれなりにある。なければこんな本は出版されていない。その理由を作者は〈裁判官も人間だから〉としている。そうなのだろう。同情の余地のある被告に反省を促し、社会に訴えかけ、寝そうな凶悪犯罪者に注意する。それは、契約書や法律に載った、しなければいけない仕事ではないが、きっと必要なことなのだろう。
それに加えて、この本、面白いだけではない。事件の概要、判決とその決め手、などの基礎的な情報がおさえてあるため、どのような事件でどのような判決が出るのか、といったことの勉強にもなる。かなり有名な事件も取り扱っているので、その裁判の裏でこのような言葉があったのかと驚くこともしばしばだ。さらに、章のあいだにあるコラムでは、裁判の仕組みや法律用語とマスコミ用語の違いとその解説、などといったためになる情報が満載。裁判所と法律について楽しみながら学ぶこともできる一冊である。
メモ:概ね面白い本ではあったのだが面白さ的にはInterestingより。『爆笑』に釣られて買った手前、文句を言う筋合いもないが、『爆笑』か、と思ってしまわないこともない。
面白いことに違いはないが。
『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺超輝 幻冬舎平成十七年 ISBN:978-4-344-98030-3