ぱだみな

ちょっとネタバレを挟みながら本の紹介をしています。

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最近の記事

おいでよ変な森!な優しい気持ちになれるフワフワファンタジーを読んだ話(『今日も絵に描いた餅が美味い』読んだ!)

絵に描いたものが実体化する能力。夢がある能力である。私が持ってもクリーチャーを生成するだけのような気もするが、それはそれとして一度使ってみたい能力だ。さて、この小説はそんな能力を持った少年の話である。  絵を描くことが好きなトウゴは、両親から許されていなくても、画材を捨てられても、こっそり絵を描き続けていた。そんなある日、彼は異世界へと来てしまう。ご飯もない。水もない。帰り方もわからない。それでも彼は絵を描いた。すると、絵が実体化! その能力を使って彼は変わった森の中で暮ら

    • 熱い演劇オーディションの話が面白かった!(『チョコレートコスモス』読んだ!)

       オーディションというものはなぜこんなにワクワクするのだろう。NiziUしかり、ソーイングビーしかり、アニーのオーディションしかり。困難な課題を超え、競い合い、誰が選ばれるのかを固唾をのんで見守る。その楽しさと言ったら! この作品もまた、その楽しみに溢れている。  伝説の映画プロデューサーが鳴り物入りで始めた企画。女性二人の舞台だというその作品のオーディションは異例尽くしだった。声をかけられたものだけが参加できるそれに呼ばれたのは天才少女や、アイドル、実力派女優と個性的な面

      • 裁判官のツッコミやワードセンス、人情が光る?! 『裁判官の爆笑お言葉集』読んでみた!

        ……これらのセリフ、なんと、実際に法廷で裁判官が言った言葉なのだ。時に厳しく、時にやさしく、人間味のあるセリフを言うこともある裁判官たち。この作品はそんな裁判官たちの判決文を読むだけではない、個性のある「お言葉」を集めた語録集である。 そんな前書きと共に始まるこちらの語録集。一度読めば裁判官や裁判所が身近に感じられる一冊となっている。 さて、裁判所では基本的に判決を言い渡すのが裁判官の仕事である。私もこの本で知ったのだが、裁判官というものは一度に五つも六つも同時並行で事案

        • まんまとタイトルに釣られて『殺した夫が帰ってきました』を読んでみた話

           『殺した夫が帰ってきました』。タイトルのキャッチーさと不穏さで言えば今季私が読んだ中でベストで賞、堂々の大賞を受賞するタイトルである。もちろん、タイトルばかりが強いタイトル負け作品ではなく、謎とスリルがたっぷり詰まった一作だ。  アパレルメーカーで働く茉奈。ある日強引な取引先の相手に迫られているところを、別の男性に助けられる。しかし、その男は助ける際に夫を名乗ったのだ。茉奈の夫は五年前に茉奈自身の手によって崖の下に落とされたはずなのに……。記憶喪失になっているという夫は殺

        • おいでよ変な森!な優しい気持ちになれるフワフワファンタジーを読んだ話(『今日も絵に描いた餅が美味い』読んだ!)

        • 熱い演劇オーディションの話が面白かった!(『チョコレートコスモス』読んだ!)

        • 裁判官のツッコミやワードセンス、人情が光る?! 『裁判官の爆笑お言葉集』読んでみた!

        • まんまとタイトルに釣られて『殺した夫が帰ってきました』を読んでみた話

          乙女ゲーム転生もので最も笑える(私調べ)小説見つけちゃったかもしれない……(『転生先がパン屋の娘。努力で魔王は倒せますか?』読んだ!)

          注:こちらの小説は小説家になろう上でアップされていたものですが、未完のまま更新が止まっております。それでも勧めたい、読んで欲しい作品です! バッドエンド多めの乙女ゲームで、モブに生まれた主人公。攻略対象などとワイワイしながら魔王討伐を目指す……と聞くとごくごくありふれた設定のように思える。がしかし。 これでもごくごく一部に過ぎない。この主人公、お茶目、などという言葉ではくくれないほど、斜めに爆走し続けるのである。 トゥルーエンドを除くすべてのエンディングで世界が滅びてし

          乙女ゲーム転生もので最も笑える(私調べ)小説見つけちゃったかもしれない……(『転生先がパン屋の娘。努力で魔王は倒せますか?』読んだ!)

          最高に歪で美しい親子のホラーサスペンスな小説を読んだ話(『母と死体を埋めに行く』読んだ!)

           「毒親」。随分と一般的になってしまった言葉だ。テーマにした作品も多くある。これもその一つ……と言ってしまうのは容易いが、しかし、この作品は他のものと一線を画す狂気性と美しさを持っている。なんといってもタイトルが『母と死体を埋めに行く』だ。  美しい母の血を受け継いだ少女、リラは美しさに偏執する母、れい子の洗脳にも近い支配をうけながら育つ。母に対する反抗心、美しい母を自慢に思う気持ち、母への疑念、自分の美しさへの屈折した感情などを抱きながら過ごしていたリラ。ある日、彼女は母

          最高に歪で美しい親子のホラーサスペンスな小説を読んだ話(『母と死体を埋めに行く』読んだ!)

          星新一の頭の中が垣間見れるエッセイを読んだ話(『できそこない博物館』読んだ!)

           ショートショート1001編を達成。星新一の著作は教科書にもある名作揃い。そんな言わずと知れた天才はどのように小説を作っているのか、興味はないだろうか。 ーー頭の中を覗いてみたいと思ったことはないだろうか。  そんな読者の望みをかなえるのが、『できそこない博物館』である。なんとこの本、著者が書いたものの実際には作品にはしなかったアイデアメモを公開し、それは何故作品化できなかったのか、どうすれば作品にできたのか、などを考察していくエッセイだ。この本で公開されているメモの数は

          星新一の頭の中が垣間見れるエッセイを読んだ話(『できそこない博物館』読んだ!)

          読む順番で読後感が変わる⁈と噂の本を読んでみた(『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』読んだ!)

           パラレルワールドの存在が実証された時代。そこに生きる、違う世界の同じ人を主人公にした二つの恋愛小説。それが『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』だ。帯の文句は〈読む順番で読後感が変わる物語〉。『君を~』から読めば幸せに、『僕が~』から読めば切なく、その読後感が変化する。実験的で、感動的な、物語たちである。  『僕が愛したすべての君へ』では遠い平行世界からやってきたというクラスメイトの瀧川和音が主人公の暦に、平行世界では恋人同士なのだと声をかけられるところか

          読む順番で読後感が変わる⁈と噂の本を読んでみた(『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』読んだ!)

          「一人電通」の仕事術。(『「ない仕事」の作り方』読んだ!)

           マイブーム、という言葉はかなり一般的だ。ゆるキャラも大きく流行してからは広く普通の言葉のように使われている。しかし、覚えているだろうか。これらの言葉はみうらじゅんが言い出さなければ、そもそも存在しなかった言葉であり、概念なのであることを。  今までなかったはずのジャンルに名前を付けては、それを広めるため、企画、営業、接待を一人でこなし、一ジャンルとして実現させては成長させてきた人間。みうらじゅん。そのアイデアの出し方や、パッケージ化しての売り出し方、広めるため、認知させる

          「一人電通」の仕事術。(『「ない仕事」の作り方』読んだ!)

          赤の他人が家族のふりをして一年過ごす話が面白かったよという話(『鈴木ごっこ』読んだ!)

          謎の多い「家族ごっこ」と驚きの結末  多額の借金を抱えた主婦にその埋め合わせとして命じられたのは四人の他人同士で一年間「鈴木」という家族のふりをして過ごすことだった。  そんな突飛な出だしから視点の人物を変え四季が描かれる。借金を抱えた事情も年齢も性別も違う四人が始めた家族ごっこ。慣れてきたころに「隣の奥さんと不倫しろ」と突然指示が追加された! 衝撃的なスタートや展開の中で、気になるのはこの行為の意図だ。借金と『鈴木』のふり。この関係は何なのか。途中で追加された課題の意図

          赤の他人が家族のふりをして一年過ごす話が面白かったよという話(『鈴木ごっこ』読んだ!)

          とにかくすごいミステリーが読みたい人に!(『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読んだ!)

          騙される快感 「すべてが伏線」これは、この作品の帯にかかれた煽り文句である。随分と大きく出たものだ、と読む前は思ったものだが、読んでみて私は自信をもってこう言える。この作品は細部に至るまで「すべてが伏線」である、と。  城塚翡翠は死者を視る能力を用いて、推理作家の香月と共に殺人事件を解決していく。そんな中、巷を騒がせる一切証拠を残さない連続殺人鬼の捜査に乗り出した二人。ついに殺人鬼の狙いは城塚翡翠に向かう。犯人が霊媒でわかっている状態で論理で詰めていき、断片的に「視えた」

          とにかくすごいミステリーが読みたい人に!(『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読んだ!)

          『ブンとフン』読んだ!

          奇妙奇天烈腹筋崩壊  あるページにはのりしろ。とあるページにはキリトリ線。挿絵は作中人物によって盗まれている……。何もかもが規格外な井上ひさしの処女作。それが『ブンとフン』である。  もちろんその内容も規格外である。売れない作家のフン先生が書いた『ブン』という作品。その作中人物であるはずのブンが本の中から出て来てしまった! 四次元の大泥棒ブンによる変で笑えるそれでいてスケールの大きな事件が次々と巻き起こる。マスコミは大騒ぎ、警視総監はブンを捕まえようと躍起になり、世界中で

          『ブンとフン』読んだ!

          リングフィットアドベンチャーを100日やって腹筋を割った話

          リングフィットアドベンチャーを始めて100日。けっこう変化があったので、オススメする意味も含めて、書いていきます。 リングフィットアドベンチャーとは、冒険しながらフィットネスができる任天堂のゲームです。 メリットとしては楽しくフィットネスができること。難点としてはゲーム要素があるが故に特定部位だけ鍛えるのは効率が悪いことや、難しいことがあるところでしょうか。恐らく、ゲームをやるつもりの人には思ったより筋トレだと思いますし、筋トレをやるひとには思ったよりゲームだと思います。

          リングフィットアドベンチャーを100日やって腹筋を割った話

          『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか』を推していく!

          東川篤哉さんのユーモアミステリーシリーズの第1作であるこの作品。Mっけのある小山田刑事が、魔法使いマリィのちょっぴりポンコツな魔法の助けを借りつつ、事件を解決していくたのしい小説です。掛け合いなどが本当に面白いので映像で見てみたいな、と思います。 推したいところその1 魔法とミステリーの同居!魔法の助けを借りたらすぐに事件解決してしまいそうな気がしますよね!実際、犯人がすぐわかるなど、魔法はすごく有能です。しかし、効果は一時的。魔法による自供だけで犯人が捕まえられるほど、法

          『魔法使いは完全犯罪の夢を見るか』を推していく!