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絵とエッセイ⑱20年分の断捨離
布団が3枚、内訳は羽毛布団1枚と布団が2枚
可熱ゴミが4袋に不燃ごみが2袋
有価物回収には毛布が3枚と段ボール10枚ほど20年以上前の辞典や単行本2冊と料理の本が3冊は今日の朝にゴミステーションに出してきた。
2年ぶりの断捨離の続き。
開けられた押入れから20年分の匂いがする。
思えば段ボールを纏めるだけの簡単な作業のはずだったのに、1日がかりの大掃除になった。
自分のゴミは段ボール、あとは空の上にいる父と母の荷物だった。
実家の掃除をしないといけない。
2年前に父が旅立って遺骨も墓に入り、意を決して箪笥から洋服などを纏めてみたのだが、あまりの多さに疲れてしまった。
筋肉痛になりそうな重量もそうだが、居なくなってしまった人の残り香はそれ以上に身体を重くする。
普段着ていた洋服に、入院中に持って行ったバスタオル。
施設へ入居する時に買い揃えた寝間着は使われず、そのまま家に戻り、敷きっぱなしになっていた布団は一番父の臭いが染みついて、在宅介護の思い出を昨日のように思い出させる。
父は認知症の診断を受けたのだが何かを忘れるというよりは、何かを恐れて、私を試そうとして嘘をついているのではないのかと思う行動が多かった。認知症の問題行動に上げられる暴言や虚言は、実際そのように感じて訴える事もあるし、自分の世話をする家族の愛情を試そうと「モノ取られ」の訴えをする事がある。
足が悪くなるまで2年半ほど認知症の方々のお世話をしていて、夜勤などこなしていくとその方の本心が垣間見れたりする。
「私の入れ歯を取ったね」
夜の12時に居室へ見回りに行くと胡乱な視線でその人は私に言った。
「取ってませんよ」
その人は下着の中に入れ歯を隠す癖があったので、少し体に触れると案の定、ハンカチに包まれた入れ歯を見つけた。
「見つかりましたよ」
その人の手をとり入れ歯を渡すと「ああ、あったね」とそのまま目を閉じる。それが、夜が明けて早番が出勤してくる時刻まで続けられる。
夜勤帯の見回りは2時間おきだったので朝の起床まで5回ほど、私は入れ歯泥棒にされ続ける。
その方は「モノを取られた」と訴える事で目の前にいる存在が信用できるか否か試しているようだった。
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