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【読書メモ】『東の海神 西の滄海(十二国記:EP3)』(著:小野不由美)

我々が住む世界と、地球上には存在しない異世界とを舞台に繰り広げられる、壮大なファンタジー。二つの世界は、虚海という広大な海に隔てられ、「蝕」と呼ばれる現象によってのみ繋がっている。

異世界では、神々が棲む五山を戴く黄海を、慶、奏、範、柳、雁、恭、才、巧、戴、舜、芳、漣の十二の国々が、幾何学模様のような形で取り囲んでいる。

それぞれの国では、天意を受けた霊獣である「麒麟」が王を見出し、「誓約」を交わして玉座に据える。

王は、天命のある限り永遠の命を持ち、国を治め、麒麟は宰輔として側に仕える。それぞれの国を舞台に繰り広げられる深遠な人間ドラマは、私たちに「生きる意味」と「信じる強さ」を問いかける大河小説といえる。

(出典:「十二国記・新潮社公式サイト」より)

本作『東の海神 西の滄海』は十二国記(新潮文庫版)での位置付けはエピソード3、「延王尚隆」の始まりの物語。景王陽子の時代(エピソード1『月の影 影の海』)から遡ること約500年、戦国時代初期に滅びた小松氏の御曹司が主人公となります。

俺はお前に豊かな国を渡すためだけにいるのだ

出典:『東の海神 西の滄海』

延王も延麒も胎果の生まれで、何かを失くした「彷徨い人」、『風の海 迷宮の岸』(エピソード2)での泰麒との縁もこの辺に起因してそうで。

さて主人公となる尚隆、昼行灯のようでいて締めるところはしっかりしていて、「国」を担うということの責任と想いがズッシリと伝わってきます。その重みがあるからこその終盤へのカタルシスはうまいなぁ、とも。

なお麒麟と「血の穢れ」の相関性を描きたかったのとは思いますが、結構容赦なく人が逝くのも小野さんらしいといえばらしいような。

永久の治世はあるのかないのか、、この先描かれることはあるのでしょうか。500年後にも安定して豊かに栄えていることが既に描かれているだけに、さて。

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