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【読書メモ】『錦繍』(著:宮本輝)

非常に強い台風18号は2日、南シナ海を北西へ進んだ。暴風域を伴って台湾付近に進んだ後、3日から5日ごろにかけて沖縄に接近する恐れがある。気象庁は高波や強風に警戒を呼びかけた。

出典:「台風18号は南シナ海を北西に進む 、沖縄に接近も あす以降接近で大雨も警戒必要」
(『産経新聞』2024年10月2日)

今年は台風の猛威はまだまだあるようです。気温的にも不安定で夏の名残もまだまだ垣間見えていますが、それでも朝夕はだいぶ涼しくなってきています。空は高く雲も細くなり、秋の気配が増していくこの時期になると思い出すのが『錦繍』との一冊。

とある理由で離婚した男女が10年ぶりに再会したところから始まる物語。再会の舞台は蔵王のドッコ沼、そのゴンドラ・リフトの中ですれ違うところから。といっても、その後のやりとりは約1年かけての往復書簡のみ、なんですけども。

男は37歳、女は35歳と、人生を季節になぞらえれば、秋の始まりを綴った物語となりましょうか。10年前はそれぞれに20代後半、青春がまさに燃え尽きようとしていた、そんな直情的な時代の“感情の行き違い”をふり返るところから書簡は語り始めます。

時間の長さが傷痕を消してくれることはないけれど、薄めてはくれるのかなとは、なんとなく。

10年、長いようで短く、、でも、人生がうつろいゆくには十分な時間で。それぞれがそれぞれの10年を穏やかに、でも結婚をしていたからこその開けっぴろげさもあわせて、まるでお互いがお互いを旅するかのように語りあっていきます。

人生の再生、、生きていくことの幸せは出会っていないだけなのか、転がっているのに気づかないだけなのか。読んで受け取る印象は手に取った年代で感想が変わりそうだな、とも感じました。

10代:うわべだけで理解できませんでした
20代:斜に構えて鼻で笑っていた覚えがあります
30代:妙にスルッと心奥に入ってきたような気がします
40代:彼らより年かさに、どこか懐かしさに包まれました

人生の酸いも甘いも、なんて言えるほどに老成しているとは思えませんが、少しづつ「大人」になっていってるのかな、とも感じてみたり。耳をすませば、、そろそろ落ちつけよ、いやまだまだだよ、、そんな言葉のせめぎ合いも聞こえてくるかのようで。

さて50代も目前、子どもは手を離れつつある一方で両親の見送りを意識し始める年代に差し掛かり、さて、受け取り方がどう変わっていくのか、なんてことを楽しみにしながら、どこかで再読を重ねていきたいと思います。

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