【読書メモ】『古都』(著:川端康成)
先日、写真と共に思い出した京都旅行から連想したのが、こちらの『古都』との一冊。もう10年以上も前になりますが、同じ川端さんの『雪国』を読みたくなって訪れた書店で並べて置かれていたのを、その題名に惹かれて手に取った覚えがあります。
舞台となるのは、その題名にもなっている「京都」。背景となる時代は先の大戦の傷跡が癒えはじめたかにも見える昭和30年代でしょうか、しっとりと、そんな枕詞が似合いそうな物語でした。
移ろい行く四季と時代、日々の暮らしとその中に織りこまれている年中行事の数々と、その微かな変化。そんなたゆたうような変化にくるまれながら、まっすぐにしっかりと生きている、生きてゆく、一組の双子の姉妹が描かれていきます。
同じ姿形でありながら、その生き様は正反対で、でも心根は同じくしていて。そんな一つの美しい相似形を感じることができると思います。
筆づかいは柔らかで、でもどこか芯が通っていて凛と心地よく、川端さんご自身は「異常の産物」なんて評価していますが、個人的には『雪国』よりもこちらが好みかなぁ。
それにしても、その『雪国』もそうでしたがなんとも唐突な終わり方には、ふと続編を期待したくもなる一方で、自らでその先の物語への想像の翼を広げたくもなってしまう、そんなジレンマを感じながら、、久々に”古都”を訪れたくなってきました。
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