【読書メモ】『魔性の子(十二国記:EP0)』(著:小野不由美)
8月に入り立秋を迎えても酷暑は相変わらず、むしろ7月と比べると暑さは増しているような気分にしかならないのですが、、こういう時は怪談がいいのかなぁ、、と『魔性の子』を思い出しながら。
今現在は「十二国記」のエピソード0に位置づけられている一冊ですが、最初はナンバリングされていなかった気がします。こちらは新潮文庫、本編シリーズは講談社Xシリーズでと版元が分かれていたこともあると思いますけども。
題材となるのは"神隠し"、それも還り人の物語、となります。
一度は消えた人間が還ってくる、普通であればそこでめでたしめでたしで終わるはずですが、この物語はむしろそこから始まっていきます。
どこか"ズレ"てしまった還り人・高里と、世界と斜めに向かい合っている広瀬、どことなく類似性を感じる二人を中心に物語は廻っていきますが、決定的な所ですれ違います。
そう語るヒトは”キ”として、潮と泥、土、そして血の香りに包まれて、再び還っていきます。しかしまぁ、、これでもかっていうくらいに、理不尽に生命が失われていきます。
全体の世界観を知っているので、ある程度の背景も踏まえてその先の還ってからの物語も知っている状態ではありますが、それであってもやはり、怖いのは、感性のズレを刺激されるからでしょうか。
これは『淑やかな悪夢』でも感じたのですが、女性作家の描くホラーというのはどこか、単純な怖さではなく、心の深奥をザワッとなでられるかのような感覚に浸れます。異性ということで、どこかで本質的な違和感を無意識に見ているのでしょうか、なんて風にも感じながら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?