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【読書メモ】『ICHIRO:メジャーを震撼させた男』(著:ボブ・シャーウィン / 訳:清水由貴子,寺尾まち子)

マリナーズに在籍していたイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)は2019年3月21日、東京ドームでのアスレチックス戦を最後に現役引退。試合後の会見で大谷について次のように語っていた。

「投げることも、打つこともやるのであれば、僕は1シーズンごとに、1シーズンはピッチャー、次のシーズンは打者として、それでサイ・ヤング(賞)とホームラン王を取ったら……だってそんなこと考えることすらできないですよ。翔平はその想像をさせるじゃないですか、人に。この時点でもう明らかに人とは違う選手であると思うんですけど。ピッチャーとして20勝するシーズンがあって、その翌年には50本打ってMVP獲ったら、これ化け物ですよね。でも、それが想像できなくないですからね。そんな風に思っています」

出典:「イチロー氏の“予言”が再脚光 打者専念で打ちまくる大谷翔平「天才は天才を知る」」
(「Full-Count」2024年5月9日)

大谷選手、今シーズンは「54本塁打-59盗塁」でフィニッシュ。MVP受賞には至らなかったようですが(と思ったら野球専門誌での話したスイマセン)、打者に専念した時の凄みというものをあらためて実感させてくれました、、凄い。そして、2019年の時点でそれを見越していたイチローさんもやはり凄いなぁ、、と『ICHIRO:メジャーを震撼させた男』を思い出しながら。

21世紀最初の年、2001年に海を渡りMLBへの挑戦を始めた2人の日本人、新庄剛志さんとイチローさん。新庄さんは北海道で華やかに選手生活を終え、今はその北海道で監督3年目。今年はリーグ2位と躍進の年だったようで、おめでとうございます!

そしてイチローさんはシアトル・マリナーズでMLB挑戦を始められて、今はそのマリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターをこなしながら、いろいろと楽しそうな活動を続けられています、、少し前の松井さん、松坂さんとのコラボは熱かったなぁ。

さてこちら、そんなイチローさんのMLB一年目を追いかけた一冊となります。著者は当時シアトル・マリナーズの番記者であったボブ・シャーウィン氏。その語り口は、ある時は冷静に突き放し、またある時には情熱で包まれたものとなっています。

そこには、純粋な熱意とジャーナリストとしての誇りを感じることが出来ます。公平であることそして信念を突き通すこと、簡単なようでいて非常に難しいことなのかな、とも思ってみたり。

こちらが書かれた20年くらい前には、日本ではなかなかお目にかかれないレベルの記事で圧倒された覚えがありますが、ここ最近では、特にSNS上などでは、読み応えのある記事を出される日本人記者の方とも出会う機会が増えてきていて、嬉しい限りです。

読んでいて面白いのが、数字として残されている記録が非常に多い点でしょうか。なにはともあれ「データ」から入っているのは非常にアメリカ人らしい、のかな。

日本での打者を示す数値は、打率・得点圏打率・本塁打数・出塁数辺りがメジャーだと思いますが、アメリカでは上記のほかにも打席数・単安打数・複数安打数・複数年での安打数等々、多岐にわたります。

さて、メジャー一年目から、新人王・MVP・首位打者・盗塁王・シルバースラッガー賞・ゴールドグラブ賞に輝き、その前年の大魔神・佐々木主浩選手同様「新人扱いでいいのか」なんて話もでていたそうですが、そこはMLBの誇りでしょうか。

「これはまさに外国人に対する嫌悪だ」と言い切っています。

日本では「laser-beam!」で一躍有名になったライトからサードへの送球ですが、本場では「The Throw」とも呼ばれるようです、定冠詞が付いているのがさすが、といったところ。

また後書きでは、王選手や張本選手、長嶋選手達と並べて、特例での殿堂入りも考えるべきだとまで仰っています。そして来年2025年はその資格を得る年になりますが、、さて。

ちなみに2004年の軌跡を追った続編も出ています、ジョージ・シスラーの年間最多安打記録の更新をした歴史的な一年間。こちらは文庫化はされておらず単行本のみとなっていますが、、さすがにもう文庫化は難しいかな。

どちらもイチロー選手の「野球」に対してひたすら一途な真摯さ、想い、そして熱意を感じられる、そんな内容になっていて非常に読み応えがあります、こういった記事を出せる記者さんは、他の記事も追いかけたくなるよなぁ、、なんて思いながら。

そして、大谷選手にとっての初めてのプレーオフが始まります。何とかチャンピオンリングを獲ってほしいところですが、、ダルビッシュ選手との対戦というのもまた熱いですが、どちらを応援したものか悩ましいですねぇ、とも思いながら。

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