ショッピングクレジットの話① クレカと違って安心です!?
クレジットカード決済がまだ発展途上であったころ、
様々な手続きや苦労が、店にとっても客にとってもあった。
決済するだけで、カード会社に連絡を取る場合があったり、インプリンターと呼ばれる手動の複写機で版を取られたりと。
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クレカ以外のキャッシュレスの雄
それでも、クレジットカードはキャッシュレス決済の主流であった。
いや、キャッシュレスという言葉も普通に使われる言葉ではなかった。
現金しか使えない店がほとんどで、クレジットカードが使えるお店においても「現金」か「カード」か、という選択であって、
クレジットカード以外の決済手段はわずかな割合しかなかった。
そんな90年代にあっても、たった1つクレジットカードと肩を並べるほどに店側に重要な決済手段があった。
「ショッピングクレジット」だ。
そもそも、こちらの方が歴史は古い。クレジットカードの普及以前はもちろん大看板の主流であった。
客にとってもメリットは大きいのだが、店側にとってはただの決済手段ではなく、販促や営業の要であった経緯もあり、売上高に占める金額の割合以上に存在感を持っていた。
クレカと違って「安心」です!?
いわゆるローン販売、分割払いと呼ばれているもので、いまでもテレビ通販などで活用されているようだが、一般小売の現場ではクレジットカードの普及とともに見かけなくなってきた。
ショッピングローンなどともいい、年配客を主要客層である業種や、地方に展開する企業では現在でも使われている。
それは「株式や投資は怖いもの」「カードは怖いもの」という心理を未だ抱いている人たちに、「クレジットカードではない、安心の分割払い」と印象付けられていたからだ。
クレジットカードは、利用限度額を設定されてその範囲内で繰り返し利用するものだが、それに対してショッピングクレジットは、購入する商品に応じて
その都度、その購入内容、金額に対して与信審査をするものだ。
客はそのショッピングクレジットを利用する都度、カウンターに通されて、身分証明書の提示や必要書類の記入などをする。
クレジット会社とFAXなどでやり取りして審査をして承認が得られると、さらに手続きの最終段階へと進む。今後のお支払方法の説明や、帰ったら銀行印を押して○日以内にこの封筒に入れて投函してくださいね、などと説明をして、それからレジ打ちとなる。
配送手続、工事手続、そのうえNGもある!?
こういったショッピングクレジットを組むほどの購入は、大型家具や冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった商品であることが多く、店側でも手続きの煩雑さから10万円以上などと最低金額を設定していた。
だからたいていの場合、配送日の打ち合わせも必要だし、エアコンの場合は部屋の状況や電気配線、配管孔、借家か持ち家か、などの聞き取りがクレジットの手続きと前後して必要だった。
基本的には金額が確定しないと与信審査はできないので、エアコンなどの工事が伴う商品の場合は、20~30分かけてお部屋状況などの聞き取りを行い、工事料金を確定してからクレジット審査へと進む。
これだけの会話をしながらお部屋状況から立地、家族の状況などいろいろ聞き取るので、購入客とは一定の親近感が生まれる。一度、ショッピングクレジットを組んだ顧客は、担当客のようになり、その後店内ですれ違うと、手を振られたり世間話をするほどに親しくなるものだった。
都度審査をすることで、ショッピングクレジットを活用する家電や家具店、その他の高額品を扱う店舗従業員は、クレジット審査の手続きサポートが当然できなけれならなかったし、金利計算などもお手の物となる。店舗の中で1人前扱いされるには必須の経験だ。
しかしながら審査という以上、申し込めば必ず通るわけではなく、審査NGも一定割合ある。NGの場合、審査結果を客に伝えるのはすこし腰が引ける仕事。
相手によっては「よくあること」のように伝えてさらりと流し、また次の購買につながるよう関係性を維持できるのだが、恥をかかされたように感じ、これをきっかけに店と疎遠になる客も多くいた。
何より大事な客の面目
ショッピングクレジットの手続きを通じてカード会社とも関係性も深くなっているので、ある程度はNGの理由も聞き出せた。
「カード会社はご主人が転職して1年未満なのを気にしてるようでした。」
ー「そうなんですか?」
「引き抜き等のいい転職でもカード会社は勤続年数で判断しますから」
ー「そんなもんなんですね」
「今年の夏は今のエアコンで何とか頑張ってもらって、秋口以降にまた申込めば通るかもしれませんね。」
ー「まあ、その頃なら冬のボーナスで買ってもいいかもね」
「今日のところはエアコン洗浄スプレーでも買って帰りますか?」
ー「そうしようかな」
などと、内容によっては、さりげなく客にうまく伝えて客の面目も立てながら店から離れないように繋ぎ留められた。
なにしろ、恥をかいた店には足が遠のく。
客の面目を保つのが何よりも大事なのだ。
それにはカード会社から引き出した情報をできるだけうまく加工して、それとなく伝えることも、顧客を失わないための技術であった。
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