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【創作大賞2024・小説】春、ふたりのソナタ

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創作大賞2024参加作品です。応援いただけますと嬉しいです🌸 〈あらすじ〉  星山真名の通う私立小町女子高等学校では、創立100周年記念行事として《校内文芸コンクール》を開催す…
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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #9 《完結》

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #9 《完結》

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

 最後の学校が終わった。

 扇ヶ谷の家に戻ると、玄関にスーツケースが並べられ、お手伝いさんが私を出迎えてくれた。
「お嬢様の荷物ももうこちらにまとめてございます。寂しくなりますが、また帰ってきた時はご連絡くださいね」
「ええ、今までありがとう。きっと連絡するわ」
 慌ただしく階段から降りてきた母が、私の存在に

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #8

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #8

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

『完成したら読ませてね』

 初めて会った時、有希子と約束したこと。
 有希子が転校する前に、小説を完成させて、有希子に読んでもらう。
 大丈夫、半分は書けたから、きっと急げば間に合う。

 私の好きな小説家・陽河ユイ先生は授業の時に言っていた。
 小説は誰か一人の読者を思い浮かべて書くのがいい、って。
 この

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #7

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #7

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

「これ、頬に当てて」
 私は水で冷やしてきたハンカチを有希子に手渡した。
「ありがとう……」
 お礼を言う有希子の声は微かに震えていた。

 夕暮れ時の本覚寺の境内はとても静かで、ここに住み着く野良猫が一匹、近くで寝転んでいるだけだ。私たちは本殿の前の石段に座って、有希子が落ち着くまで私は隣で背中をさすっていた

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #6

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #6

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

 日曜の朝、私は鏡の前で悩んでいた。
 無難にジーンズを着て行くか、それともこないだ買ったふんわりスカートを履いていくか。両方、体に当てて、う~んと悩みこむ。

 今日は有希子と映画に行く日だ。
 先日の電話のあと、有希子からYesの連絡が来た。お母さんへの説得が成功したようだ。うちの母なんて、聞くまでもなくど

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #5

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #5

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

 朝、春の風が吹き込む誰もいない教室で、私は新品のB5ノートを開いた。

 私は今まで最初から原稿用紙に小説を書き出そうとしてたけど、まずは物語のジャンル、テーマや登場人物、簡単なあらすじなどを考えた方が良いということを学んだ。図書館で借りてきた小説の書き方の本にそう書いてあった。他にもプロットの役割や、三幕構

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #4

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #4

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

 小春日和のうららかな朝、江ノ電の由比浜駅から紺色のセーラー服の女学生たちがわらわらと降りていく。

 私もそのセーラー服の一団に混ざって、先頭を行く先生の後に付いていく。本日は学年合同で、鎌倉文学に関するフィールドワークを行うこととなったのだ。せっかく文芸コンクールを行うのだから、これを機に地域文学に触れよう

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #3

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #3

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《1話はこちら》

《前回のお話》

 江ノ電が稲村ヶ崎駅を越える頃、車窓から江ノ島が大きく見えてくる。
 席に座って揺られる私は、春の斜光に照らされて眩しいくらいに輝く海面を見ながら、今朝のことを思い出していた。

『だから真名さんも、自分のためだけに物語を描いてみたらいいわ』

 自分のためだけに、か。
 子供の頃はそれが出来ていた気がする。た

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #2

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #2

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

《前回のお話》

「あー惜しい! もっかいやろ」
 千景がスマホを構えると、私とやまちゃんと姫子は音に合わせて自分の指を逆さピースにして机の上を踊るように歩かせた。いま流行ってるフィンガーダンスってやつだ。指だけで踊れて手軽にできて楽しいから、うちのクラスでも結構流行っている。上手く撮れたらSNSにアップする。

 新学期になってから1週間が経ち、

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連載小説 | 春、ふたりのソナタ #1

連載小説 | 春、ふたりのソナタ #1

この作品は #創作大賞2024 応募作品です。

【ソナタ】
 語源はイタリア語で「鳴り響く、演奏する」。
 ソナタ形式の一つの特徴として、互いに性格を異にする複数の楽想による主題対比の原理がある。

       ♦︎ ♦︎ ♦︎

 「自分の言いたい事を書きなさい」と先生は言った。
 2年生の春、新学期始まってすぐの国語の授業のこと。
 明確に言うと、学校の先生ではなく、小説家の先生だ。この時

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