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今夜は鍋にしよう

今夜は鍋にしよう

裾の長いコートを着る8℃の空気は肌によく吸着する

警官のように車の往来を見てる 交差点 警官もいる

嗅覚を相対的だと感じたら沸騰しそうな水、さわがしい

十二時間ずれた時計で生きている 球体は球の内部も含む

(投稿を消してもしばらく表示はされるって心配してたきみ)包み焼き

進化した紙飛行機についている尾翼 莫大な微分係数を得る

命日が誕生日と同じならいい 尾を呑む蛇と犬と私と

海面には

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この世でいちばん価値がある87の誓い

この世でいちばん価値がある87の誓い

(砂浜から星を選る時の手つきで)愛はおそらくトローチ型だ

噛まないでゆっくり溶かす ほどほどで温度を保つ さすがに冗談

2回だけ 20 時からのFMをノートにおこした あいつも好きだったから

どこにも不自然さのない顔でカーネル・サンダースの手を握る

一月某日にはミルクティーを飲む 花は少なくても花曇り?

生存の意味論 昨夜のニンニクが君の指先から香ること

誓っても誓っても日々、芯のない

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浮遊

浮遊

僕の手が銀製だったら何よりも君の温度にすぐ触れられる

エスニックな香りの空気の玉ふたつもふんもふんとかきわけるあさ

「駅員が帽子を斜めにかぶるとさ、急に悪い人に見え出すの」

「宝石にも不純物は必要なのよ」 きみの瞳は少しだけ赤い

ブランコが電車のベルのように軋む 滑る座板を下から眺める

蜘蛛の巣のような地下から這い出れば青いセロハン纏う太陽

月の凹凸を”うさぎ”と理解する人が正しく夜を

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柔らかい逃避行

もし雲が綿のようではなかったとしてもあなたはたんぽぽを吹く

ホームではいつも誰かが蹲る 鈍い牛乳みたいなかおり

柔らかいモスキート音 手を繋ぐ、ここからも柔らかい逃避行

都会向け動物が欲しい 例として三人乗りのヒトコブラクダ

「サトウキビを食べた時しか感じない気持ちがあるの」  「一旦水飲も」

雲の上の国ではすべての電力を太陽光が賄っていて

ブラインドの隙間に漏れる光でどの広告か当てっ

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仮置き場、または最終処分場



酷暑には思い出されぬ故郷を厳寒の日にふと懐古する

夕方の駅は困憊した人を指嗾し喰らう怪異のようで

給湯の温度を1°C上げた朝 秋晴れの空、青は遠くて

私には見えない微かな星たちもまた、網膜を静かに照らす。

茂るビルが月を切り分け食べるから、私は月を見れないままで

火傷した舌を口蓋に押し当てる 一人で冬を感じてる夜

家にあるティッシュが全部なくなった 今日は耳の裏まで洗おう


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