鎌倉殿の13人第28回感想/権力争奪戦で策謀渦巻く鎌倉、その中心にいるのは誰だ?
名刀の主
『刀は斬り手によって名刀にもなまくらにもなる
決めるは斬り手の腕次第』
頼朝(演:大泉洋)挙兵時、梶原景時(演:中村獅童)は平家方の軍勢に加わっていた。
つまり頼朝勢からしたら紛うこと無き敵。
しかし石橋山の戦いで大敗を喫し洞窟に隠れ潜んでいた頼朝一行を梶原景時は見逃してしまう。
その理由を初めて相対した小四郎(北条義時、演:小栗旬)に問われ、梶原景時が答えたセリフの一部が冒頭の言葉だ。(第7回「敵か、あるいは」)
この時小四郎は、たしか上総介広常(演:佐藤浩市)を味方に引き入れるため上総介の館を訪れていて、その帰る途上でたまたま梶原景時と出くわしたんじゃなかったかと思う。
そして今回第28回でも冒頭の言葉が再び。
『刀は斬り手によって名刀にもなまくらにもなる
なまくらで終わりたくはなかった』
始まりは同じ。
だけど結びは違う。
しかしこれは、ここまで私欲なく一貫して鎌倉のために尽くしてきた梶原景時の信念が詰まっている言葉だろう。
そして第7回と第28回で彼の立場が大きく変わってしまったことも如実に示している言葉でもある。
と同時に、今回のタイトルがなぜ「名刀の主」なのか?という疑問の答えにもなっているセリフ。
この話の繋げ方は三谷さんすげぇな!と思わざるを得なかった。
梶原景時の強引なやり口は置いておくとしても、13人の中で最も鎌倉の未来のために尽力していたと言っても過言ではない。
そんな梶原景時が序盤の脱落者となってしまうことは、権力闘争の私利私欲丸出しっぷりを表しているような気もする。
武士として華々しく散るであろう梶原景時の最期。
三谷さんはどのように描くのだろう。
次回しっかりと見届けたい。
ちなみに梶原景時が権勢欲とは無縁であくまでも鎌倉のために人に嫌がられるようなことも進んでやってきた、という人物像になっているのは多分三谷さんの推しだからw
梶原景時失脚の原因となる連判状
「忠臣二君に仕えず」
これは結城朝光(演:高橋侃)が仁田忠常(演:高岸宏行)に漏らした二代鎌倉殿・頼家(演:金子大地)に対する不満の言葉の一部。
梶原景時は結城朝光の不満を善児(演:梶原善)経由で知ることになり、彼を謀反の嫌疑にかけて処罰しようとするんだけど、それが逆に仇となってしまう。
この処罰に悩んだ結城朝光が実衣(演:宮澤エマ)に相談したことで小四郎が動き、三浦義村(演:山本耕史)が中心となって梶原景時を糾弾するための連判状をまとめることになった。
一夜でその連判状に名を連ねたのは66人の御家人たち。
通信も今ほど発達していない当時に、一夜でそれだけの署名が集まってしまうのは梶原景時の恨まれ具合がよくわかってしまうw
ちなみに『吾妻鏡』では、梶原景時が謀反の嫌疑であなたを処罰しようとしていると教えたのが阿波局つまり実衣。
それを聞いて驚いた結城朝光が三浦義村らに相談して連判状をまとめたことになっている。
そして『鎌倉殿の13人』では北条時政(演:坂東彌十郎)もりくさま(演:宮沢りえ)にうまく乗せられて訴状の最後に名を書いていた。
最終的にはりくさまの機転で取り下げる形にはなるんだけど、ここの話ちょっと面白い。
連判状に北条の名がない不思議
そう実際に北条時政の名はこの連判状に載ってない。
それどころか北条の名は一人も載ってないらしい。
比企能員(演:佐藤二朗)はもちろんだけど三浦義澄(演:佐藤B作)と三浦義村、それから時政の娘を娶った畠山重忠(演:中川大志)や稲毛重成(演:村上誠基)もその名を連ねているのに。
『吾妻鏡』と『鎌倉殿の13人』で多少経緯に違いはあるけど、いずれにしても北条の人間が関わっている。
それなのにどうしてあの連判状には北条の名が一人も無いのか。
ちょっと違和感を抱かずにはいられない。
前述のりくさまの機転は、その違和感を解消するためのパーツとして三谷さんが考えたのかなと思っている。
小四郎は大事にしたくはなかったから最初から名を連ねるつもりがなかったのだろう。
あと阿野全成(演:新納慎也)は面倒ごとには巻き込まれたくないタイプだから話を持ちかけられても書かなかったのかも。
実衣もその辺よくわかってるから彼にはあえて相談しなかった可能性もw
この辺キャラの個性をうまく利用して話をまとめたな~と感心。
梶原景時失脚の首謀者
りくさまが時政に連判状の最後に名を書かせた理由を聞いた時、この人はどんだけ策士なんだと驚かされたけど、もっと驚かされたのは三浦義村。
あの連判状の流れを作った張本人、すなわち首謀者。
実は三浦義村だった!
結城朝光は実衣に悩みを打ち明ける前に、三浦義村に相談していた。
そこから梶原景時失脚までの流れを三浦義村が作っていたらしい。
ちょっと怖すぎて背筋がゾッとしたw
彼が一体どこまで何を考えてあの流れを作ったのかは語られていないけど、三浦が鎌倉での権力を得るために、まだまだ裏で何かを企んでいるような気がしてならない……。
そして三浦義村の
『あいつにいられると何かと話が進まない』
というセリフが気になって仕方ない。
”話”ってなんだ???
いやもしかしてなんだけど……
三浦義村はりくさまとも実はグルで、北条時政が名前を最後に外すところまでもがその計画の一部だったんじゃないか――
と思ったりするのは考えすぎだろうか。
だって一夜で66人もの署名を集めるためには、御家人トップの北条と比企の名前、絶対欲しいところ。
力ある人が書いてたらノリでみんな書いちゃう、みたいなところあるでしょ?w
特に北条が名を連ねていたら遅れをとるわけにはいかないってことで比企だって署名しちゃうはず。
もちろん梶原景時失脚は比企にとっても喜ばしいことだしね。
でもそうすると三浦の名前が載ってるのが謎になっちゃうかな。
いずれにしてもこの三浦義村の策謀を深読みするだけで、ご飯三杯ぐらい食べれちゃうw
とか言いつつ、実は一番怖いのは本当は小四郎だったりするんじゃないかと思ったりもする。
梶原景時の止めを刺しにいったのは小四郎みたいなもんだからね。
ちょっといい人風に描かれてはいるけど、内心めちゃくちゃ悪いこと考えてるのが小四郎だったり……
一時期は身を引こうとしてたけど、坂東武者の世を作る夢、どうやらまだ捨ててないみたいだし。
それこそ考え過ぎなのかなぁ。(了)