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それは本当に常識?【音声と文章】

山田ゆり
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「金具のついた物は着ていませんか?」
看護師さんに聞かれのり子は「大丈夫です」とお答えした。

これからMRI検査が始まる。
のり子は更衣室に促されて荷物をカゴの中に入れた。

すると
「ズボンに金具はついていませんか?」と看護師さんから聞かれた。
どうしてそんなことを聞くのだろうとのり子は思った。

のり子の一瞬の仕草に看護師さんが気づき
「金具がついていないのなら、このままの恰好で検査を受けますが、いいですか?
それとも検査着に着替えますか?」と聞かれた。



のり子はこれまでにMRI検査を2~3回受けたことがあるが、全て検査着を着て行っていたから、まさか、私服のままで検査するとは思ってもみなかった。
きっとこれから検査着を渡されるのだとばかり思っていたのだ。

のり子は検査着を要望した。
すると、看護師さんはスッとどこからか取り出しのり子に検査着を渡した。
それはたたまれていなかった。
これ、誰か着た?
そんな気がしたが、せっかくだされたので仕方なく着ることにした。

下着1枚に検査着を着て、自分の順番になるまで真ん中がくり抜かれた丸い椅子に座って待っていた。



ふと、左薬指の結婚指輪に目が行った。
あぁそうだ。これも金属だった。
30年近くずっとはめている指輪は、既に身体の一部になっていて、「身につけているもの」という感覚が無くなっている。


指輪を外さなきゃ。

指輪を回しながらゆっくりと指先の方に移動させる。
経年劣化で指輪が楕円形に変形していてうまく回らない。



関節の辺りにきた。


もう少し。



関節の辺りの肉を少しずつ移動させながら指輪を移動していく。
楕円形の指輪は骨のところで止まってしまった。
指先がうっ血してきた。


がんばれ。

早くしないと。


のり子は力を込めて楕円形の指輪を回していった。

骨に指輪が当たり痛かったが意地になって回し、やっと指輪を外した。




指輪をしていない左手は不思議だった。
既婚者の印の結婚指輪だが、考えてみるとそれをしなければいけないという法律はない。
それをしていないからと言って罰せられることはない。
でも、ほとんどの方が結婚したら結婚指輪をしている。

こういう、何となくしていることはたくさんあると思う。

それは自分の思い込みであったり、親からの刷り込みであったりする。


MRI検査の時の服装も、金具が付いていなければ私服でも構わないはずで、
このクリニックはそうしている。


自分が「常識」と思っていることは、今も「常識」なのか時々考えてみよう。




検査が終わり着替えて廊下に出た。
その時、初めて周りをきちんと見渡すことができ、部屋の端に検査着が5~6枚、
ハンガーにかけられているのを確認した。

それは一見したところ、クリーニング済みでは無いようだった。
つまり、一日に同じものを着回ししているかもしれないという感じだった。



金具がついていない服装できたのだから、
私服で検査を受けるべきだったとのり子は感じた。




自分が「常識」と思っていることは、
本当に「常識」なのか疑ってみる必要があるとのり子は思った。







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