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自分の常識は疑ってみよう【音声と文章】

山田ゆり
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※note毎日連続投稿1414日をコミット中1378日目。
※音声・文章、どちらでも楽しめます。




おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
自分の常識は疑ってみよう
をお伝えいたします。



「のり子さん、ちょっといいかな」

社長室の引き戸が開き、のり子は呼ばれた。


のり子はやりかけていた手を止め、画面を全て奥に隠し、机の上を眺めた。
席を離れる時に振り向いてもう一度机の上を見た。

大丈夫。

のり子は仕事の内容上、皆さんの給料金額や生年月日など、他の人に知られてはいけない個人情報を扱っている。

自分が席を外す時はそれらが机の上に見える状態になっていないかを必ず確認するようにしている。


それは、のり子が席を外している時に自分宛ての電話が来た時に、伝言メモが机の上に上がっていることがあるからだ。

戻ってきたときに机の上にメモが上がっているとのり子はひやりとした。




のり子はこの会社に転職してくるまでは
不在者の机の上にメモを置くのは当たり前のことだと思っていた。


しかし、今の会社に入ってそれは間違いではないが、それが100%正しい行いでもないことを知った。


どういうことかというと、のり子のように他の人に知られたくない情報を扱っている方の場合だ。




のり子の直属の上長はのり子以上に仕事内容はシークレットな部分が多いと思う。


この会社に入社したての頃、席をちょっと外した上長宛てに電話が来た時、
のり子は伝言メモを机の上に置いていた。


上長の机の上はたくさんの書類で煩雑だった。
電卓もボールペンも使ったままの状態になっていた。
通帳が机の上にあった。

それでものり子はメモがすぐわかるように机の真ん中に置いていた。




しかし
ある時、のり子が席を外した数分後に戻ってきたら机の上にメモが上がっていた。

2つ席が離れているA子さんからのメモの内容は、B社から電話が来たので折り返しをお願いしますという簡単なものだった。


のり子は机の上に見られてはいけない書類を置きっぱなしで席を立っていたのにその時気づいた。

ひやりとした。

寒い日に凍った道を滑りそうになった時と同じくらいひやりとした。


「見られただろうか」
のり子は胸の中にモクモクと暗雲が立ち込めてくるのを感じた。

その後1時間くらい、ずっと後悔と反省の思いが強かった。




またある時、直属の上長が出かけている時に上長宛ての電話を取った。


電話の内容を書いたメモを右手に持ち
いつも通り上長の机の上に置こうとした。


机の上はお世辞にも綺麗とは言えなかった。
机の真ん中にメモを置こうとした瞬間、
「この状態が自分だったら、見られたくないものを見られたという思いになって
嫌な気持ちになるだろう。」

のり子はそう思った。

伝言のメモを今、机の上に置いても
彼女が戻ってきた時に手渡ししても
この伝言が伝わる時刻は同じだ。


ということは
彼女が戻ってきたときにメモを渡そう
そうのり子は思った。


また、のり子が作成した振替伝票や預金引き出し書は直属の上長へ提出して
彼女から押印をいただいて、それがのり子に戻ってきてから社長へ提出することになっている。


その印をいただく書類も
彼女が留守中に机の上に置くことはやめた。

いない時に机の上に置く方がのり子にとっては気楽なのだが、しかし、彼女の立場になってみると不在中に机の上に置かれるのは嫌かもしれない。


だから、彼女が戻ってきてから手渡しするようにした。


それは彼女に対する思いやりだとのり子は思っている。




入社したての頃は、のり子が席を立った時に限って、上長からの書類がのり子の机の上に上がっていた。

のり子はそのことに毎回、傷ついていた。
さっきまでここにいたのに。
どうしていなくなった時を見計らって書類をよこすのだろうか。


あの頃、二人の関係は表面上は普通だったが、のり子のガラスの心は、薄い氷の幕のようだった。




しかし、上長がいない時は机に書類を置かないで、戻ってきたら手渡しをするようにのり子が根気強くしたら、その内、彼女も同じようになった。


やがて、のり子と上長との関係は氷が解けていくようにわだかまりが無くなっていった。


自分が常識だと思っていることは
全員にとって常識だとは思わない。


相手によって自分の常識を疑ってみることも大事だと思う。






今回は
自分の常識は疑ってみよう
をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。 

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。





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