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足を止めた人が別な人の足を止める

ゴルフの教習書の話をします

『たった4つのコツを意識するだけで
 あなたのゴルフスイングは劇的に良くなる』

こんなタイトルの本があったらあなたは買いますか?

「たった4つ」と言い切っているのは
もちろん本を売るためのキャッチーなタイトルですが
著者には実際に
「4つだけで誰のスイングも改善できる」という
自信があるはずです
そうでなければわざわざ本の出版までできません

でも考えてみればそんなことは不可能です
レベルを考えても
超初心者初心者中級者上級者プロトッププロといるわけで
それぞれスイングで心がけるべきポイントは違います
男か女か若者か老人か身長・体形・筋肉量
打つ球はフェード系かドロー系か
クラブの重さシャフトの柔らかさ・・・・
正解となる正しいスイングは何百何千通りもあります

おそらく著者は自分のゴルフプレーのある段階で
「4つのコツ」を思いついた
本当なら次週にはさらにステージが上がり
新しい3つのコツとか新しい5つのヒントを思いつけたはず
そうやってさらに高いレベルに上がれたはずです
でも著者は「4つのコツ」に満足して進むのを止めたのです
「私はすごいコツを発見した!」
「これはみんなに教えないと、本も書くべきだ!!」

この「4つのコツ」があてはまるのは
その時点の著者と同じレベルの人だけです
ほんとうに狭い狭い有効範囲です

あなたのスイングの最高の先生はあなたの中にいます
インパクトの感触・球筋・筋肉の動き・打球音
自分のスイングと真正面から向き合うことが
あなたに正しいスイングを教えてくれます
正解は本の中にはありません

ではこの本は売れないのでしょうか?
いえこの本はそこそこ売れます
大ヒットはしませんが小ヒットはします
ロングセラーにはなりませんがショートセラーにはなります

読者からは感謝の声が届きます
「ありがとう僕のスイングが見違えるほど良くなった」
「はじめて100を切れました」
「これは最高のゴルフの教習本です」

こんな本が“残念なことに”それなりに売れて
こんな本が“不幸なことに”それなりの人々を助けます

これがトラップなんです
落とし穴なんです
みんなここで勘違いします
なんでこんなことが起きるのでしょうか?

本を書くのは「足を止めた人」です
そしてその本が読んだ人の足を止めるのです
有効範囲の狭い狭い本が
読者をその有効範囲に押しとどめてしまう
結果として
読者にとってとても役に立つ本になってしまうのです

そして読者の中から新しい6つのコツや
7つのヒントを思いつく人が現れ
新しい本を出版し
その本を読んだ人がまたそこで足を止めます

「人生を豊かにするヒント」という記事が
ネットであれほど読まれていても
みんな不満に満ちています
「不安や怒りを持たずに生きる秘訣」という動画が
ネットであれほど視聴されていても
みんな不安と怒りに埋まっています

すべてはここに原因があります
「本」ではなにも解決しません
「誰かの発信」では何の役にもたちません
正解は誰からも教えてもらえません
それらの助言はみんなの足を止めるだけです

でもそんな助言を
そんなアドバイスを
拒絶や否定をしないでください
拒絶も否定もそこで足を止めることです
それでは何の意味もありません

思い出してください
あなたは超高速で前進中です
誰かがあなたに投げたボールは
あなたの100メートル後ろに落ちています
実際のところ誰もあなたに何かを教えたりできないのです

「たった4つのコツ」のような
貧弱で薄っぺらい「正解」に
足を止めないでください

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