【読書】もはや奇書な『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』を超速で読む【西尾維新】
西尾維新といえば、主に物語シリーズで自分の世代を席巻した作家だ。
もちろん自分もドハマリして、アニメは全部見たし、ノベルも最近出た『短物語』以外の本編系は全て読んでいたりする。
その累計ページ数、そして文字数たるや凄まじいことになるだろう。
世界トップレベルのページ数と言われるプルーストの『失われた時を求めて』は岩波の14巻セットで”7974ページ”とのことだが、おそらく今まで読んできた物語シリーズのページ数はそれを上回る。
……ちょっと調べてみるか?
(こういうことをするから睡眠時間がなくなる)
ハァ……ハァ……! これを全部合わせると……
”9172ページ”!!!
(つまり自分は『失われた時を求めて』を読破できるってこと…!?)
まあそれはともかく、そんな自分が今回読んだのは『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』である。
「長過ぎる題名」と「最高レベルに意味不明な主人公名」が最高にどうかしているこの作品だが、ページ数は160ページと少なめで西尾維新作品の中では優しい方だ。
……そして自分はなんと、30分でこの作品を読み終えた。
いや別に文字がデカすぎるとか、絵で100ページ埋まっていたとかそういう理由ではない。(それどころかみっちりと文字で埋まりまくりな160ページだ)
ならば、さして読書が早い方でもない自分がなぜそんな事になったのか。
語っていこう……!
いや、別に結論をもったいぶる必要もない。
要するに主要箇所以外は読み飛ばしただけである。
「そんな読み方するなんてサイテー!!」とか思われてしまうかもしれないが、この小説の何がヤバいって西尾維新好きの自分ですら耐えられないレベルの冗長な文章の羅列が続くのだ。
西尾維新といえば、無駄に長い無駄な会話のイメージがある人は多いだろうが、それに慣れ親しんだ自分でも「あ、駄目だこれ…」と、早々に匙を投げるレベルだったのはさすがに驚いた。
(そもそも自分は余暇時間の無さに悩んでいる最中だというのに、一番手に取っちゃいけない本だったかもしれない)
……というわけで内容のネタバレに入ろう。
読み飛ばしまくりなので本当に正確なのかは疑問が少しだけあるが、多分大丈夫だろう。
この本の内容は以下である。↓
……いやまさかの4行で終わった。
いやもちろん細かいあれこれはあるのだが、主要な部分はこんなもんである。
そしてこの本は上記の4行で終わる内容を、圧倒的雑多な文章で分厚くコーティングすることで出来ている。
雑多な文章とは例えばこんな文章だ。↓
……自分が読み飛ばす選択をした理由もなんとなくわかってもらえるだろう。
とにかくこんな思いつきの文章としか思えないものが多すぎて、本題に全く入ろうとしないのだ。
例えば、猫の頭がないことをしっかりと明言するのは、まさかの60ページ経過した時点である。
(160ページの作品で、表紙でみんなわかってそうな事実なのに…)
とはいえ、なんかちょっとは楽しかったなと思えたりもしたのである。
謎の猫、排泄量の増加の謎、頭側もどこかで飼われているという発想……
まあ読み飛ばしてたのでろくに思考してなかったせいもあるのかもだが、本題(猫についてとか)に触れたときはしっかり驚きを感じていた自分がいた。
今にして思えば、どこかのデュラハンがこんな設定だったような気もするのだが……。
要するに人間はそこそこ驚くものがちょっとあっただけで、「まあちょっとは面白かったな」と自分を納得させるものなのかもしれない。
本を読むことにかけたコストは馬鹿にならないし、自己防衛のための反応という線もありそう。
そしてなんだか自分は、生成AIに思いを馳せたりもした。
自分はなんやかんやでAIで遊んだことがある人間だが、こんな感じの作品が許されるならいくらでも作品を生み出せそうな気がしたのだ。
現にもうKindleストアでは生成AIによる小説や絵本が溢れまくっているわけだが、この作品みたいなノリで良いとなると相当ハードルは下がるような。
まずは『あっと驚く展開』をAIとディベートしつつうまいこと用意し、その後は『あっと驚く展開』の間に挟みこむ雑多な豆知識やらギャグを大量にAIで生成して、1:99くらいの割合で混ぜ込めば作品の完成なのだ。
もちろん西尾維新というネームバリューがあってこそ許される感のある『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』なわけで、同じような構成の小説を凡人がAIと書いたところでウケないのは目に見えている。
だがそこはまあ、色々と集客の仕方はあるだろう。
自分にも考えついたくらいだから、もう賢い人は気づいていて既に実行に移しているのかもしれない。
ちょっと複雑な気持ちはあれど、芥川賞受賞者がChatGPTを使用していることを明言しているくらいだし、小説家界隈はもうAIを使っても問題ない雰囲気になってるのかもだ。
果たして小説の未来はどうなっていくのだろうか。
そんなわけで、『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』を読んだ感想でした。
まあよく見たらタイトルに「随筆」って入ってるし、この思いつくままに書き殴ったようなような内容は正しかったのかもしれない。
……とはいえ自分にはなかなかきつかった。
ここはやはり、冒頭で紹介した『短物語』でも読んでリフレッシュしたほうが良いかもしれない。
よく知るキャラの短編集なんて、まさにこの小説とは真逆で最高じゃないか。
なんだかんだで、西尾維新ワールドからは逃れられないようだ。