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国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む

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戦後の生活綴方の牽引役・国分一太郎の遺言とも言える著作です。国分一太郎が治安維持法で検挙されたいきさつや特高警察の砂田周蔵とのやりとりが克明に描かれています。どんな内容なのか、内…
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#村山俊太郎

国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む13

国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む13

前回の記事の続きです。

この本と並行して、小説家・高井有ーの『真実の学校』(1980年)を読んでいます。『真実の学校』は、北方性教育運動とその弾圧を背景とした小説で、成田忠久や佐々木昂(太一郎)といった実在の人物が本名で登場するので、この時代の状況を具体的に想像するのに役立っています。

また1930年代以降の哲学や思想界の状況を知るために「フランクフルト学派」についての本も読んでいます。日本で

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国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑤

国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む⑤

前回の記事の続きです。

4 交友関係 国分の取り調べは続きます。次は、交友関係を砂田に聞かれます。友人である村山俊太郎のことだけでなく、斎藤秀一のことを聞かれます。国分は雑誌『生活学校』誌上で、斎藤の名前は知っていましたが、直接の交友関係はありませんでした。

 この斎藤を調べ上げたのも砂田でした。砂田は斎藤が寄稿していた雑誌『生活学校』を通して、国分らが関わる「北方性生活運動」を知ることになり

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国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む③

国分一太郎『小学教師たちの有罪』を読む③

前回の記事の続きです。

2 ひき咲かれる手記 

1941年10月13日の昼過ぎ、東京から山形署まで移送されてきた国分は、山形県の特高係主任・砂田周蔵警部補から以下のように告げられます。

「君を北方性生活主義綴方運動と、雑誌『生活学校』編集グループを中心とする生活主義教育運動の件で、治安維持法違反としてしらべる。昭和9年から、君が学校をやめさせられる昭和13年3月までのことだから、新治安維持法

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