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認知症で口座凍結?使える制度のアレコレ①
亡くなった時に口座が凍結されるというお話は聞いたことがあると思います。
生命保険募集人も口酸っぱく伝えてきました。
そのおかげか、ご存知の方が増えてきたと思います。
ところが、
「認知症でも口座凍結されるという話は聞いたことはありますか?」
と聞くと知らない方がいらっしゃいます。
認知症で口座が凍結?なぜ?ということから、
現在利用されている制度をご紹介していきたいと思います。
書いている内にかなり長くなってしまったので
2回に分けたいと思います。
認知症でも起きる口座凍結
亡くなってしまった際の口座凍結は世間的にも浸透してきましたが、
認知症でも口座凍結される可能性が高いです。
銀行が口座名義人が認知症であることを知った時、
口座名義人が詐欺や横領などの犯罪や口座の不正使用に巻き込まれ、
財産を失うのを防ぐという目的のために口座を凍結してしまうことがあります。口座が凍結されてしまうと預金の引き出し・解約は一切できなくなります。
口座名義人本人のために預金を利用することが明確であっても、
介護費用の支払いや、施設入所のための契約金だとしても引き出しができなくなります。
しかも、戸籍謄本やマイナンバーカードなどを提示して親子関係が書類上も明らかに分かるような場合でも、一切引き出しや解約は認められません。
預金は口座名義人本人の財産。その財産は、親族・子どもであっても、
本人の意思が確認できない以上、勝手に引き出し・解約することは一切認められないためです。
介護保険金を認知症になってしまった方の口座に振り込む場合、
あくまで口座名義人の資産のため、
資産を引き出すことができなくなってしまう可能性があります。
特に定期預金や株式などの金融資産は本人意思を確認できないと、
解約や売却などが一切できなくなります。
この場合、当事者の財産を管理するために
後見人を立てる方法があります。成年後見人制度です。
それでは成年後見人制度について見ていきましょう。
成年後見人制度
法務省の成年後見人制度の紹介にはこう書かれています。
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度を使うためには、家庭裁判所へ申立てが必要になります。
その後、家庭裁判所の調査官による調査、審理、成年後見人等の選任・審判、そして審判が確定すると法定後見の開始となります。
制度の利用開始までには、3~4カ月かかります。
成年後見制度はお金を好きに使えるようになるわけではありません。本人の保護を目的としているため、本人の利益を図るための財産利用しかできません。
例えば、子や孫の事業資金や教育資金を支出しようとしても、それは「本人の利益」ではありません。このように、成年後見制度を利用して家族を資金面で支援するといったことはできません。
また、親族を後見人に立てることは可能ですが、本人の財産を自由に使えると誤解する人がいたり、一般的な相続争いを前倒しするかのように本人の財産を支配しようとする人がいることも指摘されています。
親族間の揉め事が発生する可能性もありますし、家庭裁判所に対して定期的な報告を要求されます。
そのため、現在は弁護士・司法書士・社会福祉士に後見人を委託契約するケースが増えています。
書類作成に事務負担や専門的な知識が必要になるからです。
成年後見人には本人の財産から相当な報酬を支払うのが一般的です。
利用開始時の申し立ての経費と、成年後見人に対する報酬が必要になります。また、基本報酬とは別に、成年後見人が何か通常と異なる事務を行ったときは、別途その報酬額が上乗せされることがあります。
例えば、本人名義の賃貸物件を新たな賃借人に貸す契約を締結した場合などです。
現在は支援制度も充実してきており、報酬が必ずしもネックではなくなりつつあります。
自治体の約85%は費用及び報酬の助成制度を設けています。
どの程度の助成を受けられるかは自治体によって異なりますが、これらの助成を利用することで、成年後見制度の利用にかかる出費を抑えることもできます。ただし、利用については自治体ごとに条件があります。
成年後見人制度は本人が財産を管理することが難しくなってしまった際に、
助成できる制度ですが、
①制度導入に時間がかかること
②初期費用がかかること
③ランニングコストがかかり続けます。
ですので、個人的にも一般的な家庭では
導入ハードルが高いと感じています。
しかし、導入ハードルが高く、認知症のような療養期間が長くなりがちな
際に導入するものとしては一定の資産が必要になります。
そこで別の手法を検討する家庭が増えてきました。
家族信託です。
家族信託は認知症になる前に
資産を持つ方が、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。
「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」と言えます。
家族・親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。
誰にでも気軽に利用できる仕組みです。
ごく簡単に言うと「財産の所有権のうち、管理する権利だけを信頼できる家族に移す」のことをいいます。
家族信託では委託者、受託者、受益者の3者が当事者となります。
財産の所有者である委託者が遺言や信託契約によって受益者に財産の管理処分の権限を与え、最終的に受益者が財産からの収益を受け取れるようにする形が一般的です。
また、委託者自身が受益者となることもできます。
たとえば、親御さんが管理している月極駐車場の管理をお子さんに任せて、
賃料を親御さんが受け取るといったこともできます。
しかし、すべての財産の管理を一括で行えるわけではありません。
受託者は本人の代理人でなく、託された財産の管理権限のみを持つので、
財産ごとに信託契約を行う必要性があります。
たとえば、介護資金のために親御さん(委託者)がご自身のお金を
銀行口座経由でお子さん(受託者)に信託するとします。
この場合、親御さん(委託者)個人のままの預貯金口座では、
あくまで名義人が委託者個人であるため、
受託者である子が入出金や振込みなどの手続きをとることができません。
まずは、委託者が受託者が信託契約を結びます。
その上で、共同で利用できる口座を用意しないといけません。
受託者の銀行印で届け出をし、受託者名義の信託金銭管理用口座を開設する必要があります。
この信託金銭管理用口座は、受託者個人の預金口座と委託者から信託を受けた金銭を分別管理することができる口座です。
信託契約をすると、金銭に関しては通帳番号ではなく、
「金〇〇〇万円」のように信託する金銭とその額を特定します。
委託者である親の口座から親自身が引出又は振込みをした後に、
信託金銭管理用口座に信託契約で定めた金銭を入金すると、
運用が開始されます。
信託契約後の金銭や信託不動産(収益物件)からの家賃収入、
経費の支払いなどは信託口口座で行うことにより受託者が
円滑に手続きをとることができるようになります。
家族信託は家族に財産の管理を信託する際に、助成できる手法ですが、
①認知症発症後には本人の意思が確認できないため導入できないこと
②受託者になりたがらないor受託者選定によっては親族が揉めること
③複雑な内容により、専門家(弁護士や司法書士)のアドバイスが必要。
安価で抑えることもできますが、
専門家に依頼するとなると当然コストがかかってきます。
ですが、成年後見人制度よりも事前に対策が立てられる面で
ある程度コストが抑えられる可能性があります。
親御さん本人から進んで信託契約することはかなり勇気が必要なことだと思います。
受託者がお子さんだったとしても、自分の財産を他の人に管理してもらう形になるからです。
介護はされる側もする側も当事者になる
このように、介護以外でもお金がかかることが複数あります。
認知症になってしまってから調べる方が多いですが、
なる前に対策するだけで選択肢増えるので
事前に対策していくことがものすごく大切なんです。
介護する側も介護される側もの当事者になります。
家族一丸となって話す機会を作ってくださいとお伝えしています。
制度の紹介をしてきましたが、費用や事務手続きが少なからずかかってきます。
このためのお金を準備するために貯金で準備してますか?
老後生活費の必要性は感じていても、
介護生活に関しては準備していない方がほとんどだと思います。
祖母の認知症の経験から、認知症保険や介護保険などのお話をしているのですが、契約内容によっては上手く対処できません。
認知症なのにお金が受け取れないんです。
これは実際に経験してみないとわからないことだと思います。
次回は、認知症には対処できない介護保険と受け取り方の設定について触れていきたいと思います。