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大人の階段を上るって、そんなカンタンなもんじゃない。

チャンブラにて

これは、イタリア南部のカラブリア州(マフィアの四大組織の1つ、ンドラゲタの拠点であり、イタリア国内でも最貧地区と言われている)におけるロマの少年にフォーカスした物語である。

14歳にして酒と煙草をたしなむピオは、兄のコジモからストリートで日々の糧を得る術を学び、家族やロマの仲間を支えていた。だが、コジモが失踪。大きな負担が肩にのしかかってきたピオは、危ない橋を渡ることにする。(映画祭公式サイトより)

わたしは昔からロマの人々の生活になぜかすごく関心があって、普通より、彼らを描く映画を見たり、本を読んだりしてきた方だと思う。

この作品もその他の作品と違わず、ロマの人々の描き方は、やっぱりそうだった。とにかく、「荒い」のだ。3〜4才でタバコを吸い始めるのはフツーで、私たちが生きている中で「あかんやろ」と思うことをサラリとこなす感じ。悪びれた感は一切なく。ピオもまさしく、そんな少年だった。

そんな彼が親しくしているのは、ロマが自分たちよりも「低く」見ているアフリカからの不法移民で、私はそれにある種のショックを受けた。別に清く正しくあれ、なんて思っちゃいないけど、自分らが「イタリア人」から思われてることをそのままアフリカの人たちにやっちゃってるやんと。

それに、これってロマの人たちに限らずだなと、変な既視感があって。人って、すぐに優劣を決めたがる。その底辺にある人たちが、自分たちよりももっと「低い」立場にある人たちが来るやいなや、自分たちがされてきたようなことをする。見ていてとても居心地が悪い。

まだ大人になっていないピオはそんな事情がわからず、ブルキナファソからの不法移民のアイヴァを何かと頼る。それが後々裏目に出てしまうことも知らずに、彼は必死に大人になろうとするのだ。いなくなった兄の役割を果たそうと食らいつく感じが何度も垣間見える。

親世代からは子供扱い、でも弟や妹たちのお守りなんかしたくないし、一緒に遊ぶような年齢でもない。その気持ちもわかるんだけど…。

まぁワルが悪の道まっしぐらに走っていくような感じ。どちらかと言うと、心がささくれ立ってしまう物語。前向きさや明るさ、清々しさなんて一切ない。

大人になるってそんなにカンタンなことでもないんだよと思って。大人たちの盗みに加担して、童貞喪失したら、大人の仲間入りなわけ? なんかそんな単純でいいのかよと。親たち世代がそうやって生き抜いてきた世界に何の疑問も抱かず、足を踏み入れていく。悪循環と捉えるのか、それもまた伝統、人生と捉えるのか。

でもこの少年ピオの眼差しはいいし、あの涙は彼だけのものだ。そして、ブルキナ人のアイヴァがすごくいい。

全てを網羅してるわけではないですが、ロマの人々に関する映画や本を紹介するnoteをいつか書きたいです。これはまた別の機会に。

2018年53本目。イタリア映画祭にて。

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