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【短編連作】ことシリーズ

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短編連作集です。連載小説ではありません。
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記事一覧

ことシリーズ連作の続き、六年後設定で今書いてます。過去エピソード含めて、勿論新しいテーマ織り込んで。完結編になりますが、時間かかりそう。半年後、一年後スパンでお待ちを。待ってない? ああそれでええです。完結はしますんで。いつものように、それだけ読んでも大丈夫なように書きます。

【短編小説】花乃の中学が荒れていたこと 連作14

【短編小説】花乃の中学が荒れていたこと 連作14

 後輩たちが門出の花道の準備をしている間、式を終えた卒業生は教室で待機する。普通はここで担任から餞別(はなむけ)の言葉があるのだろうけど、洋子先生は教卓の椅子に座りこんだまま、虚ろな目をしているだけだった。噂では四月に転勤するらしい。この学校で六年勤めたのだから定期異動は当たり前だが、これで中学校を辞めるという噂もあった。どちらにしても学校を去ることは確からしい。確か二十八歳。転職なら早い方がいい

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【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

「江田さん。ちゃんとお酒抜けちょる?」
「抜けちょる抜けちょる。ええか」
はあーと津矢子に吐きかける。
「いや、やめて。ニンニク食うた? 違う意味で臭いわ」
顔を背けて、手で払う。
「な。抜けちょろう」
と、おどけ顔。
津矢子はキーと今日の集配票を渡す。
「枕崎かい」
ちらと見て呟いてから、事務所の机で受け取りのサインをする。下を向いて書きながら、言う。
「辞めるんだって?」
「あ、うん」
「勝の

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【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

 団子屋も、もちろん飲食業である。そして団子屋は、人気商売である。
 団子屋が団子屋として成り立つ為には、まず団子が旨くなくてはならない。次にお手頃価格でなくてはならない。最後に店の対応が気持ち良いものでなくてはならない。
以上三点は、団子屋に限らず、飲食業の基本である。
 が、団子平田屋の売り上げ不振の原因はそこには、ない。
 平田屋の団子は旨いのだ。団子屋の団子が旨いのは当たり前で、団子屋で団

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【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

 津矢子が就職したのは、運送会社の事務だった。長距離トラックのシフトを組むのが、その主な仕事だった。集荷場から小売りの配送所へ。部品工場から組み立て工場へ。地方から大量消費地へ。配送センターから配送センターへ。荷を積んで送り届け、そこでまた荷を積んで送り届ける。長い距離の方が儲かるのでドライバーはその方を喜んだ。殆ど休みなし、車中泊でトラックを走らせるのが当たり前の時代だった。荷下ろし荷積みは、本

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【短編小説】金曜日のこと 連作10

【短編小説】金曜日のこと 連作10

 異常な可愛がり方だと思った。
 金曜日の放課後、学校で親を呼んでの、アタシと和馬の和解の会が開かれた。教室で揉めて、アタシが怪我をしたのだ。
 その席で、アタシの両親やアタシ自身に、和馬のお母さんは度が過ぎるくらいに頭を下げて、涙を流して、でも和馬に頭は下げさせなかった。一度も和馬に反省を促す言葉もかけなかったし、まるでこっちが怪我の話題を出す前に、謝って全て終わりにしようという作戦のようにさえ

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【短編小説】そもそもの始まりのこと 連作9

【短編小説】そもそもの始まりのこと 連作9

 11月になって三者面談が始まった。高校3年になって、文系クラスに行きたいのか、理系クラスにしたいのか、卒業後の進路選択も踏まえて、決める時期が迫っていた。
「なまじ理系とか選んじゃって研究職とか目指されたら、嫁に行かんとか言い出すかもしれん。文系文系。花乃は頭がええから、英文科やらええじゃろ」
 金を出してもらう手前、平吉にも相談する。すると、私の話半分で、勝手に私の将来を決めようとする。
「で

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【短編小説】田んぼに二人ライダーが参上すること 連作8

【短編小説】田んぼに二人ライダーが参上すること 連作8

「変シィーン! とぉー!」
 気が狂ったのか広之進。驚いて、みんなが注目する中、仮面ライダーのテーマソングを歌いながら、広之進は教室を駆け巡る。
「あぶない!」
「走らんで!」
「何じゃい」
「頭、おかしいんか」
クラス中から、非難轟轟の声が上がる。その中を、
「ぶる、ぶる、ぶるーん! スピード全開、ザ・サイクロン!」
と叫び回る。案の定、賢治の前で捕まえられて、すっ転ばされる。
「いてーの。賢

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【短編小説】アパートメントがアールデコ調であること 連作7

【短編小説】アパートメントがアールデコ調であること 連作7

「どこが小料理な屋じゃ」
「どこかって、ここがじゃ」
「唐揚げ出すよな小料理屋がどこにあるんじゃ。ハムエッグとか焼きそばとか、大概にせえよ」
「立派な料理じゃないの。料理出すんじゃから料理屋じゃ」
「小は? 小はどこ行ったんじゃ」
「なんじゃ、しろうしいな。小なんぞ、どうでもええ」
「小が大事じゃぞ。小粋の小じゃ。焼きそばに小粋もクソもあるか!」
 別に喧嘩しているのではない。小料理屋とはワシも納

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【短編小説】体育でドッチボールをやったこと 連作6

【短編小説】体育でドッチボールをやったこと 連作6

「アタシは謝らんなけえの」
月曜の朝、教室に入って、教科書を机に入れていると、由里子が前の席の和馬のところに来て、喧嘩腰でそう言う。先週の金曜のことかと思う。由里子が勘違いで和馬に殴りかかって、和馬にやり返された。まあ、和馬は防御したまでで、由里子が勝手に怪我をしたまでであるが。放課後、親が呼ばれたようで、それの流れの話らしい。
「ええよ。構わん」
と和馬は由里子の顔も見ずに答えた。5秒くらい由里

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【短編小説】天ぷらの種が全部サツマイモであること 連作5

【短編小説】天ぷらの種が全部サツマイモであること 連作5

 その人が来れば、欲しいものは何でも買ってもらえた。サッカーボールでもグローブでもバットでもスパイクでも。野球版でも人生ゲームでも電子ブロックでも。本でもノートでも色鉛筆でも。書道セットでも勉強机でも図鑑でも漫画でも本立てでも。デコデコの自転車でもライダースナックダンボール一箱でも。
「そろそろ音楽に興味が出てくるじゃろ。したら、次はラジカセかの。それとも本格的にステレオか。それを越えればギターか

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【短編小説】狐かコウモリであること 連作4

【短編小説】狐かコウモリであること 連作4

 和馬がライダースナックを箱買いしていることを言いふらしたのは広之進であった。
 いくらライダーカードを持ってても、ライダーアルバムを持っていても、未使用のラッキーカードを持ってても、
「インチキじゃね」
と広之進は言った。子供のルールに反するという理由らしい。何が出るのかわからない、既に持ってるカードが出てがっかりしたり、人気のない変な怪人のカードが出てがっかりしたり、誰も知らないカードが出て喜

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【短編小説】担任だった先生のこと 連作3

【短編小説】担任だった先生のこと 連作3

 中学校の同窓会通知を見た時、これって先生のところへも行くのかな、と思った。私は欠席するけど、先生はなんだか出席に丸しそうな気がした。返信を投函して、それが気になって仕方なかった。だからその前に、先生に会っておきたかった。今年の年賀状を見て住所を確認する。先生は今年、新しい住所になっていた。できれば年賀状は出したくない。早く忘れて欲しかったから。私を、というより私たちを。なのに出してしまう。私は先

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【短編小説】ライダーカードでメンコをすること 連作2

【短編小説】ライダーカードでメンコをすること 連作2

「まかりならんの」
 賢治は憤っていた。
「ちゅうことは、和馬は俺らに嘘こきおったちゅうことか」
「まかりならんの」
 広之進も同調する。今日は手打ちの印に、団子を持参している。和馬ん家に行った時、ワシらはカルピスと焼き菓子を馳走になった。それで和馬とは手打ちになった。和馬側であった広之進も、わしらと和解するには手土産が必要と思ったのだろう。みたらし団子を十本持ってきた。広之進は団子屋の倅である。

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