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【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

 団子屋も、もちろん飲食業である。そして団子屋は、人気商売である。
 団子屋が団子屋として成り立つ為には、まず団子が旨くなくてはならない。次にお手頃価格でなくてはならない。最後に店の対応が気持ち良いものでなくてはならない。
以上三点は、団子屋に限らず、飲食業の基本である。
 が、団子平田屋の売り上げ不振の原因はそこには、ない。
 平田屋の団子は旨いのだ。団子屋の団子が旨いのは当たり前で、団子屋で団子が旨くなければ、いったい何が旨いと言うのか。どうしろと言うのか。だから団子屋の団子は旨いに決まっている。平田屋の、特にみたらし団子は絶品である。しかし今、平田屋は売り上げ不振なのである。
 では、価格が高いのか。あんこもきな粉もみたらしも、一本30円である。小学生の小遣いでも買える。これが高いと言ってはバチが当たる。なのに、平田屋は売り上げ不振なのである。
 では、最後に店の対応が悪いのか。世の中の蕎麦屋とかラーメン屋で、頑固店主の店、とかがあるらしい。喋るなとか、一口目は蕎麦だけで食えとか、テレビでやっていた。そんな店は真っ平である。平田屋はいつ行っても愛想よしだし、元気がいい。買って気持ちのよい店だ。であるのに、平田屋は売り上げ不振なのである。
 不振になったのは、ここ最近で、ほんのひと月前までは、大繁盛とは言わないまでも、普通に客は来ていた。この町に和菓子の専門店は他になかったし、スーパーで買う団子より、さっきも言ったが、平田屋の団子は断然旨いのにである。
     ※
 なぜ、売り上げが悪くなったのか。それが宮子には分からなかった。
 兆候は、最初子供達からはじまった。小学生が買いにこなくなった。小学生が遊びのついでに一本二本買っていくのは、売り上げにはそう貢献はしない。だが、小さい頃に、平田屋の団子の味を覚えることは重要である。やがて彼ら彼女らは大人になって、団子と言えば平田屋。やっぱり平田屋の団子でなくては。と味が刷り込まれた人間となるのだ。そうして平田屋の味は親から子へ、そのまた子供へと、受け継がれる。団子作って30年。平田屋はそうして続いてきた。
 それなのに、なぜか小学生が寄り付かなくなった。中学生は団子より肉まんを買う。高校生はうちではなくて、ラーメン屋に行く。これは仕方ない。中学生からは質より量であるからだ。お年頃の女の子は甘いものをひかえる。それもいい。問題なのは、小学生が、小学生を連れたお母さんが、もしくは孫と食べると買っていくお婆さんが来なくなったことだ。買ってくれても、本数が減っている。なぜなのか。
 夕方、今日も団子は売れ残りそうであった。遊び終わった小学生たちが店の前を通る。
「団子、やろうかい」
普段は絶対言わないことを言っていた。
「お金、持っちょらんもん」
なかの女の子が答えた。
「今日はただじゃ。サービスじゃ」
男の子らは歓声を上げて寄ってきたが、女の子は、
「いらんもん」
と言って駆けて行った。
宮子は、団子を一人一本サービスしながら訊いてみた。
「旨いか」
「うまいうまい」
男の子らは、団子にかぶりつく。
うん。間違いない。味は落ちちょらん。
「おまんら、最近、あんまり団子買うてくれんの。なんか、あったか」
「知らん」
男の子どもはそっけない。はあ、とため息をつくと、知った奥さんが通りかかった。
「奥さん。団子いらんかね」
「ああ、また今度な。有難う」
奥さんもそっけなく過ぎていく。
宮子は、食べ終わった男の子らから串を回収しつつ、またため息をついた。
「おばちゃん。ごっそ」
「さいなら。ごっそ」
「ごっそさんした」
 男の子らは走って帰っていく。
 数日経って、宮子は売り上げ不振の原因に近づいた。その日は、馴染みの婆さんがみたらし団子を買いに来た。
「五本、ちょうだい」
「あれ、いつもは十本じゃのに。味が落ちたかいね」
「なんの。美味しいよ。団子は平田屋じゃ」
嬉しいことを言ってくれる。
「いつもようけ買うてもろうて有難う」
「すまんの、今日は半分で。孫が食わんいうもんじゃから」
「まあ、今は旨い菓子がたんとあるからの。団子屋はあがったりじゃ」
自嘲して笑うと、婆さんは意外なことを言うた。
「お前んとこの息子な、なんちゅうたか」
「ああ、広之進。広之進がどうかしたか」
「うちの孫と同級じゃ」
「ああ、そうじゃった。なんかあったかね」
「機嫌悪うせんといてよ」
「ああ、なんじゃ?」
「孫が、気ィ悪いちて言いよるぞ」
「気ィ、悪い?」
「人の嫌がること、わざとしよるちて言いよるぞ。ちと、訊いてみいよ」
 そう言えば、最近、広之進は誰と遊んでいるんだろう。前は店の団子を時々盗んで友達によう食わせていた。みたらしを一度に十本くすねたときは、流石に頭に来て、お父ちゃんにどやしてもらった。でも、最近は話してても友達の名前がでることはない。前はええと、和馬くん。賢治くん。祐樹くん。それから、ええと、あ、圭介くん。最近は名前が出ない。
「なんか最近、ひとりで谷地の方へ行くんをよう見るが、危なかろう。気をつけや」
婆さんはつけ加えた。
「谷地?」
「ん。じゃ、お金」
 お代を払って帰って行く。
 谷地は町外れにある荒れ地だった。宅地になる予定であると聞く。が、今は、赤土剥き出しで、大きな岩がゴロゴロしている。なんでまた、あんなとこへ。宮子は不思議に思った。
     ※
 俺には、和馬も賢治も必要ない。ヒーローは孤独なのだ。ということで、俺は孤独の旅に出た。ガキどものいない所いない所をさまよい歩き、遂にここへたどり着いた。ここはライダーが怪人と戦う場所によく似ている。怪人がたとえ町中で騒動を起こしたり、暴れたりしても、最後の決闘は、必ずこんな感じの、見渡しても家のない採石場みたいなとこでやる。爆発があったりするんで、きっと町中では危ないのだろう。ライダーも怪人もよく考えている。
 俺はこの地を見渡した。うん。ライダーと怪人がもしこの町に現れたら、最後の決闘は、絶対ここで行われる。そう思って、ライダーになったつもりで飛んだり跳ねたりしていたら、鉄の土管を見つけた。地面には赤錆びた丸い背だけ出ていたが、きっとこれはショッカーの秘密基地への地下通路の外側だ。この間の大雨で土が流れ、図らずも露出してしまったのだ。
 俺はそう考えて、赤錆びて緩くカーブした鉄を、撫でてみた。触ってみて考えがかわった。いやこれは、怪人がここに隠した、なにか地球征服に関わる秘密の何かが隠されている入れ物ではなかろうか。入れ物はきっと宝箱のような形をしている。だって宝箱てのは下は四角い段ボールのような形であって、上の蓋は丸く盛り上がり、円柱を半分にしたような形をしているではないか。きっと地球征服に必要なあるものが、この箱に入っているのだ。
その箱の一部分が今、赤土からのぞいている。
俺は震えた。その日から箱を掘り出すことに夢中になった。うちから持ち出したスコップで、来る日も来る日も丸みを帯びた鉄板の周りをほじくった。掘るうち、これは箱ではないことがわかってきた。しかしガッカリなどはしなかった。俺は、世界征服を企むには、もってこいのものを手に入れたからだ。
俺は、爆弾を掘っていた。
全く馬鹿でかい代物であった。長さ幅ともで、畳一畳分の大きさはある。爆発すれば、多分俺は死ぬ。死を予感しながら、俺は掘り進めた。一週間で、全体の半分を掘り出した。なんとも禍々しい形であった。なんと言うか、太った浮きのようなというか、長いスイカのようなというか、そんな形であった。が、それは紛れもなく爆弾だった。
俺は満足した。
次は決闘である。ライダーはここで決闘せねばならない。なにしろここには爆弾まであるのだ。え? 俺はライダーなのか。ショッカーなのか。まあどうでもいい。いや、よくはない。俺はライダーなのだ。ショッカーの隠した最終兵器を見つけ、それを取り戻そうと襲ってくる怪人と戦うのだ。
場所はいい。
爆弾もある。
後は、後は怪人、決闘相手である。
 誰にしようと考えたとき、まず思い浮かんだのは、和馬であった。あいつのせいで、今、俺は孤立している。やるか。いや、あいつは妙に冷静なところがあって、誘いに乗ってこないかも知れない。それなら奴だ。この前、俺をすっ転ばした単純な男。歩く少年ジャンプ。
賢治だ。
明日、賢治に「果たし状」を届ける。明日の火曜は文化の日で祝日である。明日9時、決着をつける。
     ※
 あ、あれは関根ちゃんではないか。確か学級委員をやってる。あの子なら、なにか知っているやも知れん。
 平田屋の宮子は、今度は道ゆく由里子を見つけて、呼び止めた。
「関根ちゃん、じゃったかな」
「はい。ええ。何か御用ですか」
 顔がちょっと暗い。何かあったかな。
「団子、いらんか」
「有難うございます。でも、いりません」
「それは何か。広之進に関係あるのか」
立ち止まる。やはり、何かあるのだ。
「何があったのか、教えてくれるか」
由里子は、考えている。胸騒ぎがした。その顔で、宮子は団子の売り上げのことはどうでもよくなって、息子の広之進のことがどんどん心配になっていった。
「なにかあったんか」
宮子は益々不安になっていった。宮子の顔を見て、由里子はようやく初めて広之進のことを考えはじめていた。ああ、もしかしたら、私は広之進のことを追い詰めたのかも知れない。今そう思いあたって、由里子は口を開いた。とにかく全部、広之進のお母さんに言ってしまおうと思って。
「広之進くんが、メンコでズルして、それで広之進くんが、それを人のせいにして、それがわかって、そのことでクラスの雰囲気が悪くなって、それで、それで、私、みんなに謝れって、広之進くんに」
「広之進が悪いことしたんじゃな」
「でも、私、みんなに謝れっていって。関係ない人もいっぱいいたのに」
「謝ったのか」
「はい。先生も怒って、広之進くんにじゃなくて、メンコの取り合いとか、賭け事するなってみんな叱られて、多分他のクラスとか、他の学年でも、注意されて、誰のせいだって話が広まって」
ああ、それで子供たちは平田屋に来ないのか。団子を食わなくなったのか。
「広之進くん、それから変で、わざとふざけたり、わざと人の嫌なこと言ったり、教室、走り回ったり。それでみんな、ますます広之進くんが嫌いになっていって」
 喋りながら由里子は、自分と和馬のことばかり考えてて、広之進のことを少しも考えてなかったことに気がついた。本当に自分のことばっかりだった。広之進をあんなに責めて、逃げ場を、無くしといて、それで困った奴だって決めつけていた。メンコで賭けるの禁止とかゴム飛びで賭けるの禁止とか。学校中でたぶん言われた。広之進はたぶん、だんだん居場所を無くしていったんだ。それを今まで気づいてなかった。いい気味だくらいに思っていたのかもしれない。だから広之進はあんな風になったんだ。私に、私のことを心配するお父さんとお母さんがいるように、広之進だってお父さんとお母さんがいる。そのことに気がつけなかった。学級委員失格だ。私のやったことは、いじめと一緒だった。
「おばさん。ごめんなさい」
     ※
 宮子は広之進にどう言おうか考えた。広之進はメンコでインチキをした。そのことでクラスの雰囲気が悪くなり、関根さんは広之進を、謝らせた。関根さんが悪いとは思えなかった。悪いのは広之進だ。
 先生はそれを知って、広之進だけでなく、みんなに遊びで賭け事になるようなことはするな、と叱った。先生が悪いようには思えなかった。悪いのは広之進であった。
 広之進は皆んなから避けられ始めたので、わざとふざけたり嫌なことをして、皆んなの気を引こうとしてた。広之進に関わらないようにする皆んなが悪いようには思えなかった。悪いのは広之進である。
 それで平田屋から子供達の足が遠のいた。子供達が悪いとは思えなかった。悪いのは広之進である。
 どう考えても自分の子が悪いのであるが、このまま叱りつけても、益々広之進を追い詰めるようで、泥だらけで帰ってきた広之進に、宮子は何も言えなかった。幸い明日は祝日である。今晩ゆっくり考えて、どうするか決めようと思った。旦那にはまだ言わないでおくことにした。頭に血が登って、広之進に何をするかわからない。
 翌日は朝起きたら、広之進は遊びにいくと言う。どうせ谷地だろう。広之進のいない間に、旦那に話せると思って、宮子は遊びにいくのを許した。広之進は何やら紙を握りしめて、思い詰めたような顔で飛び出して行った。
     ※
果たし状
賢治へ。この前は、よくも教室で転ばして、くれたな。
決とうするから、谷地へこい。9時にこい。ぶきは持ってくるな。
        広之進

広之進は賢治の家に行って、出てきた母親に賢治を呼んでもらった。
「なんじゃい、朝っぱらから。まだ7時じゃぞ。なんの用じゃ」
 寝てたのか、パジャマ姿で出てきた賢治に果たし状を押し付けて、広之進は谷地へ走った。
     ※
 9時になった。朝、谷地に吹く風は冷たい。俺は腕を組み、まっすぐに前を向いて賢治を待った。
 来た。が、三人だ。話が違う。
「卑怯もん。三人で来おって」
「果たし状には、ひとりで来いとは書いちょらんかったぞ」
 汚い。だが負けはせん。正義はこちらにある。
 加勢に来たのは、祐樹と圭介か。その圭介がたける。
「安堵せえ。ワシらは見届け人じゃ。勝負あったら、そこで止める」
 祐樹も頷いている。しゃらくさい。どうせ負けそうになったら入ってくるに違いない。よかろう。ヒーローは言い訳は、せん!
「こい」
 俺は両手を上げて威嚇した。横から祐樹が口を挟む。
「その前にの、教室で賢治がお前をすっ転ばしたのは、お前が教室で走り回っちょったからじゃぞ。人がようけおって、危なかろうが。広之進。お前が悪いぞ」
「うるさい!」
 俺はまっすぐに賢治に向かって突っ走った。身構える賢治。やつは俺より一回り体が大きい。ここは、先制攻撃あるのみじゃ。走りながら、ポケットに手を突っ込む。距離がどんどん詰まる。あと一メートルで、手をポケットから引き抜き、賢治の顔目掛けて投げつける。白煙が上がった。くらえ!平田屋特製の小麦粉じゃ!
 賢治の顔が白くなる。目をつぶる賢治。その腹目掛けて、俺はライダーキックの飛び蹴りをお見舞いした。
 崩れ落ちる怪人賢治。勝った。すかさず見届け人の圭介を見た。
「お前、そりゃいくらなんでも卑怯じゃろ」
 呆れた声だ。呆れてろ。それはいい。判定は? どっちが勝ちだ? 普通、ライダーキックが決まれば終いだろ!
 しかし圭介も祐樹も判定はせず、怒りに震えた賢治がゆっくりと立ち上がる。まずい、怪人復活。俺は作戦その2を実行に移した。
 賢治から背を向けて、走る。走る。
「逃げるか。広之進、許さんど」
 鬼の形相でたぶん追いかけてくる。足音からすると、祐樹と圭介も一緒だ。まとめてやっつけちゃる。
 俺は立ち止まり、怪人どもに向き直った。隠しておいた鉄棒を拾う。追手の三人も足を止める。
「お前、どこまで卑怯なんじゃ」圭介が言う。
「武器禁止はお前が言うたんじゃないんか」祐樹が言う。
「ばかもん! お前らに使うか。見ちょれ」
 俺は鉄棒で足元を思い切り引っ叩いた。ゴゥンと鈍い音がして、鉄棒が手から落ちる。いかん。一撃で痺れた。すぐに拾い直して、今度は、手加減して叩く。
ゴゥン。
「お前、何しよるん」
 呑気声の祐樹の声がする。
「驚くか、そんなもん」
 賢治が近づいてくる。
「待て!」圭介が賢治を止めた。
「止めてもむだじゃ。一発お見舞いせねば、腹がおさまらん」賢治が言うが、
「待て待て、賢治、近づくな!」
「なんじゃ?」
「あれ、爆弾と違うか? 不発弾じゃ!」
 ええっ!、と賢治の足が止まる。しげしげと広之進の足元を見て、祐樹が後ずさる。
「やめ、やめいよ。賢治、行くな! 不発弾じゃ」
 賢治も見て確認できたか、目を丸くする。
 広之進はまた鉄棒を振り上げる。
ゴゥン。
「止めい、止めいよ、広之進!」
 三人で声を張り上げた。
 去年の正月、油島興産の緩衝緑地で不発弾が見つかった。自衛隊が来て、工場も止まって、道路も止められて、住民も避難した。運んで処理する予定であったが、動かすと危ない状況とかで、爆破処理になった。
12時ちょうどに爆音が響いた。現場はもちろん見てはいないが、空に上がった煙を見た。恐ろしいもんじゃ、と皆んなが呟いていた。
 その動かしても危ない不発弾を、広之進はぶっ叩いておった。
ゴゥン。
「やめい」
「離れい離れい」
「広之進、止めれ!」
ゴゥン。
「おのれはアホか!」
ゴゥン。
転げまどいながら、三人は逃げていく。俺は腹を抱えて笑った。
「勝ちじゃ勝ちじゃ」
と、笑っておったら、三人と入れ違いに、母ちゃんが走ってきた。遅い。遅いがスゴイ迫力である。逃げようと思ったが、足がすくんだ。
「広之進!」母ちゃんが叫ぶ。
「おばちゃん。危ない危ない」
「広之進!」
「不発弾不発弾」
「広之進!」
あわあわしてるうちに首根っこ引っ捕まえられて、抱きしめられた。
「広之進! お前がいちばん悪いぞ。お前は本当に馬鹿もんじゃ。信じられんほどのクソ馬鹿たれじゃ。じゃけんどの、命を粗末にすな! 母ちゃん泣かすな」
母ちゃんは、ぼろぼろ泣いていた。俺もなんだか泣けてきた。なにかよく分からんが、泣けてきた。
爆弾の上で、俺らは泣いた。
     ※
 500キロ不発弾であった。爆発していたら、大変なことになっていた。まして谷地は宅地開発予定地で近々重機が入る予定でもあった。
 爆弾を発見した広之進は、お手柄で表彰された。市役所と警察署と学校で表彰された。
「勘違いせんとええがの」
 圭介が言うと、
「いや、勘違いはするじゃろ」
と祐樹が答える。
「俺は蹴られ損じゃ」
賢治はずっと面白くない。
「まあ、ええじゃないの。広之進も変な意地悪はせんようになるじゃろう」圭介が言う。校長の声色で祐樹も、
「皆さんも、平田広之進くんのように、人のためになることをするように」
と言った。
「何が人のためじゃ、あいつ爆弾ぶっ叩いて、俺ら殺そうとしたんじゃぞ」
不満な賢治をまあまあと宥める。
 あれから三人と広之進は広之進の母ちゃんに連れられて、平田屋に戻った。団子を山ほどご馳走になってるうち、お巡りさんがやってきた。母ちゃんが連絡したのであった。広之進と母ちゃんは爆弾の場所へ案内することとなり、三人はそこで解散した。
 広之進のお陰で、平田屋の人気は回復した。旦那さんは、爆弾団子を新発売してよく売れた。
           了














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