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乃木坂46は、「アートワーク」に愛されている

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【1/11(木)〜5/31(金) 「乃木坂46 Artworksだいたいぜんぶ展」】

なぜ、乃木坂46は、この時代における国民的アイドルになり得たのか。

それぞれのメンバーの魅力や才能、J-POPの最高打点を更新し続ける楽曲の素晴らしさなど、きっと、様々な観点から考察することができるだろう。

しかしあえて、他のアイドルグループとの決定的な優位性を一つに絞るのならば、僕は、圧巻のクオリティを誇る「アートワーク」の力を挙げたい。

楽曲に内包されたメッセージや、リリースタイミング毎に変わりゆく表現姿勢を、ビジュアル作品として表現する「CDジャケット」。

新進気鋭のクリエイターたちとのコラボレーションを通して、流麗な文学性を追い求める「ミュージックビデオ」。

メンバーの凛とした佇まいを最大限に活かしながら、更なる品性と知性を感じさせる「衣装」。

そう、乃木坂46を彩る「アートワーク」こそが、彼女たちの表現者としての可能性を切り開き続けてきたのだ。音楽ジャンルの壁を超えて、このグループが数多くの人を惹きつけている理由は、まさにここにあると思う。

今回は、2019年1月11日(金)~5月31日(金)にわたって開催されている「乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展」について振り返っていきたい。


【CDジャケット】


『ジコチューで行こう!』

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夏シングルらしく、「アイスキャンデー」をモチーフとしたビジュアルイメージ。美術プランの資料から、撮影時に「2700mm × 2700mm」の巨大セットが組まれていたことが読み取れた。


『逃げ水』

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今回の展覧会では、世に出ることのなかった無数のアザーカットが展示されていた。どれが選ばれても決して不思議ではないほど魅力的なカットばかりであったが、やはり最終的に採用された1枚からは、クリエイターたちが抱いた強い「必然性」が伝わってくる。


『裸足でSummer』

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2016年当時、世界的に流行していたセルフィーを、なんとジャケット写真の撮影に大胆に導入。画角からシャッタータイミングまで、全てをメンバー自身に託すという実験的な撮影となった。しかしその結果として、徹底的に構築された環境では写し出せない「ありのまま」の表情が光っている。


『生まれてから初めて見た夢』

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美術セットのコンセプトは、「乃木坂駅から新たな場所に向かう」。電車の車両はパーツごとに分かれていて、2期生、3期生の撮影時にはフレキシブルにレイアウトを変更したという。


『インフルエンサー』

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テーマは「乃木坂46のファッション雑誌があったら」。デザイン検討案の資料から、モノトーン写真や別のフォントなど、様々な試行錯誤の過程が伝わってきた。


『何度目の青空か?』

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「同一の瞬間を4つの視点から切り取るイメージ」のもとに、「Type A」~「Type D」のジャケット写真が撮影された。だからこそ、それぞれの写真が補完し合いながら、一つの「物語」が美しく紡がれている。ここに、複数形態リリースの必然がある。


『ハルジオンが咲く頃』

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今作をもって卒業となった深川麻衣。このジャケット写真の撮影は、彼女の地元である静岡県で行われたという。


『気づいたら片想い』

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大切なのは「写真」だけではない。CDジャケットに配置される「文字」、つまり、タイトルデザインにこそ、その楽曲の世界観が表れる。「泣き笑い」をテーマに撮影された写真に、優しく寄り添う今作のタイトルデザイン。決して主張し過ぎることはないが、確かな「憂い」のイメージを決定付けている。


【ミュージックビデオ】


『シンクロニシティ』

今回の展覧会では、池田一真氏による演出プランの資料が公開されていた。その内容は、もはや言葉だけで完成型の映像を想起させてしまう、とても読み応えのあるものだった。

「意味のある偶然の一致。シンクロニシティをストーリー性のあるダンスと身体表現で見せていく。」
「少しレトロな装飾のあるガランとした空間。ほの暗い室内に天窓から日差しが差し込み人物に複雑な陰影を作っている。」
「彼女たちに具体的な設定は設けない。舞台となる空間が世界の縮図になっていて、普段の時間、距離、立場の中で起こるシンクロニシティを表現するようなイメージ。」

改めてミュージックビデオを観ると、事前に意図されていたことが見事に反映されていて、その再現度に思わず息を飲んだ。


『サヨナラの意味』

ミュージックビデオの「5:43」に映し出される文庫本の挿絵。わずか一瞬のシーンのために、キャラクターデザイナー・貞本義行(代表作:『新世紀エヴァンゲリオン』『サマーウォーズ』など)が描き下ろしたこの挿絵が本当に素晴らしい。

人間と「棘人」。異なる2つの種族の衝突と交流を描くこの物語において、彼の挿絵は、和解の可能性を示す重要なアイテムとして登場する。

そう、映像作品の魂は、一つ一つの小道具にこそ宿るのだ。


【衣装】


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アイドルとして活動する乃木坂46のメンバーにとって、衣装とは、まさにビジュアルイメージを決定付ける要だ。

テレビ番組などで着用する「制服衣装」と、楽曲パフォーマンスにおいて着用する「歌衣装」。新しい作品がリリースされる度に、それぞれの新しい衣装が制作されるが、その一つ一つに、彼女たちの物語や時代の必然性が宿っている。


『帰り道は遠回りしたくなる』 歌衣装

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ミュージックビデオ終盤のライブシーンで着用された歌衣装。一人ひとりの衣装の柄やカラーリングは少しずつ異なるが、全体のトーンは、シックで落ち着いたものに統一されている。


「第69回NHK紅白歌合戦」 歌衣装

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よく見ると、花や蝶などの刺繍が繊細に施されているのが分かる。胸元のブローチは「N46」を象っている。


「7th YEAR BIRTHDAY LIVE Day 4 ~西野七瀬 卒業コンサート~」 歌衣装

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卒業コンサートのアンコールで西野七瀬が着用した衣装。本人の意向を反映して、「鳩」のモチーフが取り入れられているという。


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「CDジャケット」「ミュージックビデオ」「衣装」、その総体としての「アートワーク」が、乃木坂46の表現において、いかに重要な役割を果たしているか。そのことを、改めて確認することができた展覧会だった。

僕は、彼女たちの「アートワーク」にまつわる全てのクリエイター/スタッフに、最大限の敬意を払う。

そしてこれからも、国民的アイドルとして、いや、国民的アーティストとして、乃木坂46には、新しい表現の可能性を切り開き続けていって欲しい。

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松本 侃士
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