ひとひらの花びら
風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。
桜の花びらだった
この花びらを届けてくれたのは神さまだろうか、仏さまだろうか……。
涙が出そうになった。
桜の花が綺麗だとか、満開だとか
様々なSNSでたくさんの人が、桜の写真をアップしている。
でも重症筋無力症という難病にかかってしまった私は、玄関を出て数メートル歩くこともままならない。
家から50メートルほど行けば桜の木もあるけれど、今年はそこまで行けそうにもない。
それでも動かしにくい手で、普通の人の何倍もの時間をかけて、高いところに手を伸ばすときには、歯を食いしばって洗濯ものを干していたときのことだった。
たった1枚の花びら、たった1枚の花びらだけど、
裏山から飛んできた花びらに、私は癒された。
桜の花びらは何も言わない。
でも、
「この場所からは見えないけど、桜は咲いてるんだよ」
「寒い冬の間耐えて忍んだその後の春に、桜は咲いてるんだよ」
そんなメッセージを届けるために、やってきてくれたように思えて……。
*
それから数年後の春、病を克服した私は自分の足で好きなときに好きな桜の木を訪れることができるようになった。
多くの人が桜だ花見だと浮かれていても、
どんなにきれいに桜の花が咲きほこっていたとしても、
かつての私のように、さまざまな理由で、
桜が見られなくて寂しい思いをしている人はいる。
たった1枚の花びらでもいい、
そんな方のもとに、
この花びらを届ける風になりたいと思った。
そんな思いで満開の桜を眺めた。
🌸🌸🌸🌸🌸
この文章は、いつも癒されている 南奥河内から情報発信♫さまの この記事⬇️
を拝読して、めぐりあったyuca.さまの企画
に参加させていただくことにより生まれました。
実はこの記事の前に同じことがいいたくて、長文でダラダラと記事を書いてたのですが、この企画のおかげで、今回はものすごくスッキリと詩的に自分の言いたいことをきれいにまとめることができて、とても感謝しています。
とても素敵な企画に参加できてうれしかったです。ありがとうございました。
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