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積読奮闘記 ~読む前に書く、そして、読んだ後も書く~

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コミュニティスペース「モモの家」の会報誌「モモだより」に連載中。読む前の前編と、読んだ後の後編にて構成される書評エッセイ。
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記事一覧

第七回 前編『アメリカ』フランツ・カフカ/訳 中井正文(角川文庫)

第七回 前編『アメリカ』フランツ・カフカ/訳 中井正文(角川文庫)

 今回はフランツ・カフカの長編小説『アメリカ』を読みたいと思います。カフカといえば『変身』など不条理な短編小説がなじみ深いかと思いますが、この長編『アメリカ』は意外と読まれていないのではないでしょうか。というのも私がそうだからで、カフカの短編小説は何度も繰り返し読む事があるのですが、長編小説はなかなか手を出しにくく、それはなにより未完である事が理由として大きく上げられます。カフカは長編小説を他に『

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第六回 後編『ニッポンの書評』/豊崎由美(光文社新書)

第六回 後編『ニッポンの書評』/豊崎由美(光文社新書)

 本書は「ニッポン」の書評について、誠実に且つ分かりやすくまとめられた良書で、それはガラパゴス化した「ニッポン」での書評の現在と、その中でひたむきに書評と向き合い格闘する作者の姿を読むドキュメンタリーのようでもありました。

 本書では書評とは一体何なのか、批評との違い、書評の役割について、誰がなんのために書評を必要としてどう読まれるのかという事を明らかにして、粗筋紹介の重要さやネタバレについてな

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第五回 前編『ニッポンの書評』/豊崎由美(光文社新書)

第五回 前編『ニッポンの書評』/豊崎由美(光文社新書)

 書評とはいったい何なんでしょうか。

 既にこのページも5回目をむかえるなか、今更な書きっぷりで恐縮ですが、書評については実はぼんやりとしかわかりません。所謂批評ほど堅苦しくはないし、かといって感想や解説では物足りない。程よい考察と内容説明、といったところでしょうか。わかりません。
 連載しておいてなんですが、いまから書評について学ぼうという体たらく。そして手にしたのがこの一冊です。
 新書です

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第四回 後編『あしたから出版社』/島田潤一郎(晶文社)

第四回 後編『あしたから出版社』/島田潤一郎(晶文社)

 この書籍には作者の「本」に対する愛が炸裂していました。そしてこの中で「本」とは、単なる本のことでもありますが、亡くなった従弟や友人のことでもあり、世界や社会のことでもあり、作者自身のことでもあるように思われました。作者は本を作ることによって、作者自身の世界をとらえなおし、死者と向き合い、社会をつくり、そのことに嘘はないかと考え続けます。そしてそのすべてにおいて作者の徹底した「誠実さ」を感じました

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第三回 前編『あしたから出版社』/島田潤一郎(晶文社)

第三回 前編『あしたから出版社』/島田潤一郎(晶文社)

 思い立つことが全ての始まりではないでしょうか。
 というのはこの本がまさにそのことを書いているような気がするのです。まだ読んでいないのでそんな気がするだけです。
 ところで、「思い立ったが吉日」と言いますが、なぜ吉日なのか。大安の方が良いのではないか、など関係のないことを書いている場合ではありませんでした。この書評記事は、第一回でもお伝えしましたが、読む前に書く前編と読んだ後に書く後編とにわかれ

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第二回 後編『両方になる』アリ・スミス/訳 木原 善彦(新潮クレスト・ブックス)

第二回 後編『両方になる』アリ・スミス/訳 木原 善彦(新潮クレスト・ブックス)

 まず初めに、この本は傑作でした。大変面白かったです。それをお伝えした上で、後編の内容を記そうと思います。でないと、面白くない本と勘違いされてはいけませんので。
 そう書くのはなぜかというと、非常に説明のむつかしい本だったからです。むつかしいというと、難解で読みにくいと思われがちですが、そんな事はありません。文体は比較的平易ですし、ユーモアもありサラサラと読もうと思えばできます。ではなぜ説明がむつ

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第一回 前編『両方になる』アリ・スミス/訳 木原 善彦(新潮クレスト・ブックス)

第一回 前編『両方になる』アリ・スミス/訳 木原 善彦(新潮クレスト・ブックス)

 はじめまして。この度、あたらしく連載をすることになりました通天閣盛男といいます。
 まず初めに、この連載の趣旨ともうしますか、何を書いていきたいかなどの内容からお伝えできればと思います。
 ご存じの方はいるかもしれませんが、モモの家の一室で本屋がオープンします(わたしの妻が店主となります)。それに際しまして、なにか本にまつわる連載があれば良いのではないかという事で、書評のページを頂いた次第です。

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